遅くなりましたが、ジャン・マルク・ルイサダのコンサートの最後のレポです。


15分の休憩の後、後半。


まずはショパンのノクターン13番ハ短調。ショパンがジョルジュ・サンドとうまくいっていた頃に書かれた円熟期の作品。中間部に同主調のハ長調のコラールが歌われる。


ショパンの作品というと「女性的」と見られることが多いが、実は「男性的」な作品の方が多いのではないだろうか。ノクターンでも、有名な2番や20番(戦場のピアニスト)などは女性的とも言えなくはないが、この13番はなかなか劇的な曲である。初めこそ静かだが徐々に盛り上がり、爆発しそうなところで寸止め、中間部のコラールへ。また沸々と主題が現れ、3連符のユニゾンで徐々に高みに昇っていき、3連符の伴奏に乗せて冒頭の主題が倍のテンポで情熱的に示される。疾風の如き再現部は瞬く間に終わり、最後は弱音で静かに締めくくられる。


こういう、短くてドラマチックな曲はルイサダの得意とするところだろう。前回も書いた「あざとさ」が生きてくるのだ。中間部との対比、3連符の迫力、どれをとっても申し分なかった。マズルカ・ワルツ集では定評のある彼だが、次は是非ノクターン集を出してほしいものだ。


そして、いよいよ今回のコンサートの目玉である、リストのロ短調ソナタだ。あの多作のリストが生涯1曲しか書かなかったソナタ。しかも単一楽章、演奏時間30分にも及ぶ大曲である。初演でも賛否両論を巻き起こし、好き嫌いがハッキリ分かれる曲であり、演奏者によっても全く違う曲になる、そして聞く人の生涯の時期によっても印象が変わっていく不思議な、悪魔的な曲をルイサダがどう聴かせてくれるのか・・・。


今年はリストイヤーということもあり、一番期待している曲である。ルイサダはこの曲のCDも出しているが、この難曲をライブで弾ききることができるのか少し不安だった。しかし実際、生で聴いてみてその不安は払拭されていた。『今日の彼ならいける!』


低音の序奏から厳かに曲は始まった。下降音形からメインの主題が提示される。この曲は大曲でありながら、主題の数はそう多くない。それらが様々な変奏をされつつ展開する。曲は徐々に盛り上がり自分が一番好きな平行調であるニ長調の副次主題へ。ホロヴィッツほど悪魔的ではないが、劇的な表現だ。


しかし、曲の中間あたりだったろうか。いきなり演奏が乱れた。ピアノを弾いたことがある人なら一度は経験があるであろう『今、どこを弾いてるかわからなくなっちゃった』って状態って奴である。違うフレーズに飛ぶ、弾き飛ばす、『うあぁ、やばい、これは止まる?!』と思った瞬間、何とか立て直した。こっちも安堵の息。何事もなかったように曲は進行していく。


演奏が乱れた瞬間、譜めくりの女性が『マエストロ、頑張って!』という念のようなものを出していたのが印象的だった(笑)。


曲は終盤に向かって盛り上がり、その昂奮を抑えるように静かに幕を閉じた。少し乱れがあったとはいえ、満足いく演奏だった。生で聴いたのも初めてだったので少し甘いかもしれないが、なかなか演奏されない曲なので大満足だった。


アンコールはバッハの主よ望みの喜びよ、ショパンのノクターン17番Op.62-1、日本に敬意を表してか赤とんぼ、モーツァルトのソナタ11番K331の4曲。もう終わりかと思ったらまた出てきてモーツァルト(これは別プログラムの曲)をちょっとアレンジして弾いてくれた。大サービス!


アンコールの最初にものすごい花束(ルイサダはそれをピアノに置いてアンコールを弾き始めた)を渡したド派手な女性がいたので誰かと思ったら、今、朝ドラで話題?の、コシノジュンコさんだった(笑)。


後で調べたら彼女とルイサダは親交があるらしい。ルイサダの呼びかけでパリで震災支援のコンサートをやった時の、バレエの衣装を担当したのが彼女だったり。彼女もインパクトあるけど、花束も緑のでかい葉っぱのようなインパクトがあるものでした(笑)。


というわけで大満足のコンサートだったのだが、ひとつだけ残念なことが・・・。隣りに座ったオバハンが香水が臭くて嫌な予感がしていたのだが、ショパンやリストの時に「弾き真似」をし始めて鬱陶しいこと限りなしだったのだ。しかも微妙にズレるので気になって仕方がない。10秒くらいガン見したのだが一向に止めない。もう途中から目をつぶって聴いてましたわ。公共心のない大人っていやぁね。


紀尾井ホールを出ると、ニューオータニのクリスマスツリーがとてもきれいに輝いていた。オバハン以外は充実した一夜でした。奥さんも出張帰りで大変だったけど満足したご様子。


この後、軽井沢でやるコンサートをライブ録音した小品集のCDが発売予定だそうですよ。


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