ジャン・マルク・ルイサダは決してテクニシャンではない。1985年のショパンコンクールで第5位に入賞しているが(因みに優勝はブーニン、第4位に小山実稚恵)、コンサートでも結構ミスタッチが目立つピアニストである。




しかし彼の演奏には妙に味があるのだ。ご多分にもれず、彼が担当した「スーパーピアノレッスン
」(ショパン編)で彼の虜になり、CDを買い集めるようになった。彼の演奏もさることながら、生徒へのユーモアたっぷりの物言いに魅かれたというのもある。




彼はあまり練習好きではないようで、練習は一日4~5時間、それ以外は演劇・文学・映画で教養を高めた方がいいと言っている。




また、ホロヴィッツの名言(迷言?)「ピアニストには3種類しかいない。ゲイかユダヤ人か下手糞だ」(ホロヴィッツ自身がゲイでユダヤ人だったから)を引用し、「私はゲイでユダヤ人で下手糞なピアニストだ」と言ったとか言わないとか。




また、彼の演奏はかなり意図的に「作った」演奏をする。例えばルバートがとても強力だったり。それがハマるととてもいい。例えば彼の得意とするショパンの「マズルカ」。これはポーランドの民謡なので、独特の「ノリ」が必要なのだが、彼のマズルカはとても心地いい。日本人が弾くと、楽譜通りでは面白くない演奏が多いのである。




他にもショパンのワルツ・ソナタ3番やシューマンの蝶々・謝肉祭など、ハマる音楽は下手すると他のピアニストの演奏を受け付けなくなるほどいい。




それに対して、最新作のショパンのバラード集はイマイチだった。構成美が要求される曲だが、細部のアクが強すぎて全体のバランスがとれていない感じ。




そして、2011年11月25日金曜日、ルイサダを初めて聴きに、紀尾井ホールに行ってきた。


当初一緒に行くはずの友人の都合が悪くなり、急遽奥さんと行くことに。


ただ、奥さんは上海出張で成田着が17時。コンサートの19時にはギリギリ間に合いそうもない。


が、せっかくの機会なので聴くことに(バガテルの後に到着)。




プログラムは


ベートーヴェン:6つのバガテル Op.126

シューベルト:即興曲集 Op.142 D.935より第1番、ピアノソナタ 第15番 ハ長調 D.840「レリーク」

ショパン:ノクターン 第13番 ハ短調 Op.48-1

リスト:ピアノソナタ ロ短調 S.178


当日、シューベルトの即興曲は演奏者の芸術的意向により(笑)削除。昨年もバラード全曲演奏なのに4番をカットしたらしい。頼むよ、ルイサダ先生!




紀尾井ホールも初めてだったのだが、とても音のいいホールだった。特にピアノは鳴っている空間も含めての音だと思っているので、音響以外にも適度な大きさ等もポイントになる。あまり広すぎないホールはピアノの演奏にとても向いていると思った(他にはみなとみらいホールや所沢のミューズもいい)。




ルイサダが譜めくりの女性と登場。相変わらず黒ずくめの服。意外に背が高い。譜めくりの女性をフランス語で紹介して笑いを誘う。いきなり観客に話しかけるピアニストはあまりいないぞ。いきなりエスプリだっ(笑)。




譜めくりは一部だけかと思ったら全曲(アンコール含む)でした(汗)。




そしていよいよ演奏が始まった!




長くなったのでつづく




【おまけ】youtubeで見つけたインタビュー


ヤマハを称賛しつつ、電子ピアノ(おそらくF01)でショパンやモーツァルトの小曲を披露。


彼はYAMAHAと提携しているようで、コンサートのピアノもヤマハだった。