相葉くんは距離感がおかしい。

そして俺を犬のキャバリアだと思っているらしい。




「しょーちゃん、おっはよ!今日も可愛いね」



だからなのか、俺を見つけるとハグをしてぐりぐりしてくる。



「おはよう」

「はぁー癒されるぅー♡」

「ちょ、歩きにくいよ」

「ねぇねぇ、今日の3時間目、体育でバスケなんだ。俺すっごい活躍するから見に来てよ」

「3時間目は英語だから無理」

「冷たっ!俺泣いちゃう!」

「いや普通に授業中だから」






2週間ほど前、相葉くんに命を助けてもらってから俺の高校生活は一変した。

相葉くんはことあるごとに俺に絡んでくるけど、それも楽しい。


無機質な学校と家との往復が、今はカラフルに色づいて見える。



「なんか最近やけに色んな人から話しかけられるんだよね」

「そうなの?」

「うん。多分俺を介して相葉くんと仲良くなりたいんだと思う」

「……」

「相葉くん話しやすいし、直接言えばいいのにね」



今日も一緒の帰り道。
2人並んでお喋りしながら歩く。

相葉くんは意味ありげにじっと俺を見た。



「しょーちゃん、もしかして本気でそう思ってんの?」

「え?だってそうでしょ?」

「はぁー。しょーちゃんって、全っ然自分のこと分かってないよなぁ」

「なにが?」

「みんなしょーちゃんと仲良くなりたくて話しかけてるのに決まってるでしょ」



相葉くんが呆れたように言った。




「は?ないない。今までそんなのなかったもん」

「それはしょーちゃんが話しかけるなオーラ出してたから!最近まで人付き合いめんどくさいと思ってたでしょ」

「うっ」



バレてる。
わざと人と距離を置いていた部分は否定できない。

だって自分だけで行動した方がスムーズだし楽だし。そっちの方が効率がいい。



「なんで分かったの」

「そんなの、見てれば分かる。でも最近よく笑うようになったから話しかけやすくなったんだよ」



確かに最近相葉くんと一緒にいることが増えたので学校で笑うようになったかもしれないけど。

それだけでこんなに話しかけられる?



「みんなしょーちゃんのこと気になってたんだよ」

「えーほんとー?」

「ほんと!俺だって…」

「ん?」



相葉くんは何かを言いかけてやめた。



「と、とにかくっ!しょーちゃんと仲良くなりたいと思ってる人多いからね?」

「そうなのかなぁ」

「うーん、でもなぁ…」



相葉くんがふと何かに気づいてため息をついた。



「しょーちゃんがあんまり人気者になっちゃうと複雑だな。俺のしょーちゃんなのに」

「ふふ、なにそれ」

「だって俺たちクラスも違うしさ。ずっとしょーちゃんのこと見張ってられないし」

「見張るってなに」

「浮気しないでよ?」

「浮気って」

「しょーちゃんしっかりしてそうなのに意外と危なっかしいからなぁ。俺の知らないうちに仲良い人作っちゃったりしてさー」



人気者なのは相葉くんの方なのに。

不貞腐れてるの可愛い。



「俺以外に親友作るの禁止ね!」

「ふふ、それなら大丈夫だよ」



相葉くんの服の裾をちょんと摘む。



「俺が1番好きなのは相葉くんだもん」

「……くうっ!」



相葉くんは急に胸を押さえてうずくまった。



「えっ、どうしたの?」

「胸が…苦しい…!」

「えっ、大丈夫?救急車呼ぼう!」

「…大丈夫。お医者さまでも治せないから」

「???」










無自覚デレ発動中のしょーちゃんと
キュン死寸前の相葉くん。