X年後の恋人になったふたりです。
本編ずっと止まってる…ごめん。





「じゅーん。じゅーーんちゃーん。おーい」

「はいはい」

「はいは1回」

「はーい」

「ふはは。じゅーん」

「あーもう面倒臭いなぁ、酔っ払い」



今日は映画の打ち上げがあるけど明日は2人ともオフなので、しょおくんの家で待機していた。

日付が変わる前には帰りたいって言ってたけど、チャイムが鳴ったのは時計の針が僅かに右に傾いた頃だった。
時間きっかりに動きたいしょおくんにしては珍しい。



「じゅんちゃんじゅんちゃん。じゅんちゃんは今日も可愛いねぇ」

「ちょ、やめろって」

「大人しく愛でさせろぉ。よーしよしよし」

「俺は犬じゃないっつーの!」



頭をわしゃわしゃと撫でまわす。

玄関を入った瞬間からやたら絡んでくる恋人は基本的にいつもメンタル安定タイプだけど、今日はいつにも増してテンションが高い。



「じゅんー」

「あーもう、愛でるならちゃんと愛でろよなっ」

「あはは、確かにー!!」



なぜかツボに入ったらしく、今度は腹を抱えて爆笑している。

やれやれ。この人のこと「世界で最も美しいキャスター」とか言った人、だれだよ。
今は無駄にイケメンなだけの、ただの酔っ払いだ。



「なに、どうしたの?やけに機嫌がいいじゃん」

「んー?ふふふ」

「こら寝るなっ。せめてベッドまで歩いて」

「えぇーベッド行くの?じゅん君ったらえっちぃ」

「ウザっ」

「なんらとー」

「ほら歩ける?玄関て寝たら風邪ひくよ」

「んー」

「もー、こんな姿ファンに見せられないね」

「うん、反動」

「反動なんだ」

「カメラの前じゃ普通にしてなきゃだから」

「まぁ、そうだね」



優等生が服きて歩いてるようなこの人ですら、色々あるんだろうな。


そういえばしょおくんって、他にも「嵐の入口」とか「初恋泥棒」とか色々な異名を持つ。

歌って踊れて美形で高学歴、いわゆる才色兼備とか文武両道を地で行くこの人はとにかく存在が稀有で目を引くのだ。

まぁそういう自分もまんまと初恋を奪われたうちの1人なのだけど。

大好きなお兄ちゃんで大好きな先輩。
初恋でずっと片思いしていたしょおくんと晴れて付き合いだしたのはもう何年か前だけど。

なんやかんやで世話を焼いてしまうのは仕方ない。


ようやく寝室までたどり着いた。
ジャケットを脱がせてベッドにごろんと仰向けに寝かせる。



「シャワーは明日にした方がいいね」

「だっこー」

「もう大人しく寝なさい。水は?飲む?」

「だっこー!だっこぉー!ぎゅーさせろぉー!」



仰向けに寝転んだまま手を広げて足をバタバタしている。



「あーはいはい、分かったから。じゃあ水飲んだらね。ちょっと待ってて」

「うん」



ったく。どんなギャップだよ。
動画撮っといてやろうかな。

呆れながら冷蔵庫から水のペットボトルを取り出してキャップを開けながら枕元に戻った。



「しょおくん、お水だよ」

「んー、起こして」

「駄々っ子だなぁ」

「いーじゃん。お前にだけだし」



うっ……!

こんな一言でキュンとなる俺はまだこの人にベタ惚れなのだと思い知る。

当の本人はそんなことを知ってか知らずか水を一気に喉に流し込んだ。



「ぷはぁ」

「大丈夫?随分酔ってるね、珍しい」

「ん。」



半分ほどになったペットボトルを受け取って蓋を閉めて、広げて待っている恋人の腕の中に約束通りぽすんと納まった。



「今日はもう大人しく寝るんだよ?」

「はぁーい」

「いいお返事ですね」

「ふふっ」



そのまま俺をぎゅっと抱きしめて、喋らなくなった。

やっぱり眠い?
黙ってたらこのまま寝るかな?



「なんか今日、めちゃめちゃ褒められた」

「へぇ。良かったね」



寝落ちたのかと思っていたら、ぽつりと話し始めた。



「すげー嬉しかったんだ」

「演技いい感じだったの?」

「違う。嵐っていいグループですねって」

「褒められたって嵐のこと?」

「うん。ディレクターのお子さんたちが真夜中の嵐にハマってるらしくてさ、ビデオとって家族で夕飯の時に見てるんだって。そしたら家族全員嵐ファンになっちゃったって。
みんなそれぞれ個性があるのに仲良くてチームワークが良くて見ててハッピーになるって言われた」

「へぇ、嬉しいね」

「でしょ?」



それからメンバー一人一人についてどんな所を褒められたのかを具体的に語っていく。


そういえば以前、自分のことを褒められるよりもメンバーを褒められた方が嬉しいって言っていたっけ。

いつもより舌っ足らずになった国民的キャスターは時々くすくすと笑いながら喋り続けて、俺はそれを聞きながら相槌を打ったり静かに驚いたり笑ったりする。



「すごい、よく観てくれてるんだね」

「ねー。お茶の間までみんなの人柄がちゃんと伝わってるっていうのが嬉しくてさ」

「ほんとだね」

「俺、ほんとこの5人で嵐になれて幸せだなって思ったんだよ」

「それでこんなに機嫌がいいんだ」

「嵐で良かった。嵐って最高だよね」

「ふふ、相葉くんみたいなこと言ってる」

「いやマジで。いつも思ってたけど、あらためて思ったっていうか。こんな最高のメンバーでグループを組めたことが奇跡っていうか」

「うん、分かるよ」

「マジでこの奇跡に感謝してる。俺ってすげー幸せ者なんだよ」

「それは俺だってそうだよ」

「一生大事にしたいよな、嵐」

「そうだね」

「はぁ…幸せだぁ…」



しょおくんは幸せを噛み締めるように呟いた。



「それでさ、始まりがあれば必ず終わりがあるじゃん」

「…うん?」

「数年後なのか、10年後なのか、おじいちゃんになってからなのか分からないけどさ、いつかは嵐が終わる時が来るわけじゃん」

「まぁ…、いつかはね」

「その時もさ、今みたいに手を繋いだまま、5人で笑って幕を引けたらいいなって、思ったんだよね」



それは、いつか必ず来る未来。
今はまだ想像もつかないけど。

でもその時も、4人が変わらず笑顔で隣にいてくれたら。
なんて心強い未来だろう。



「それは理想だね」



芸能界の荒波が易しいものではないことは理解している。一瞬の匙加減で簡単に溺れてしまうことも。

だからこそ、そんな美しい幕引きこそ奇跡だ。



「5人で嵐を守っていこうね」



ぎゅっとしょおくんの腕に力が入った。


それは恐らく

大切な大切な宝物を綺麗なまま永遠に残せる、たった一つの方法。



「そうだね」



俺の返事を聞き届けると、安心したのか身体から力が抜けてそのまますスースーと寝息を立て始めた。



「よいしょ」



俺を抱きしめ…というよりはしがみついているようなしょおくんを、そっと横にして布団を掛ける。

寝顔は年よりもあどけなくて幼く見える。
世話のやけるお兄ちゃんだ。



「ふふっ」



幸せだね。

こんな奇跡、当たり前じゃないんだよね。きっと。


大好きなあと3人の顔を思い浮かべて、それだけで胸がほかほかする。


「嵐」は俺たち5人が大切に育てて守っていく、大好きな船。

今はまだ大海原を進んでいるところ。


これからどんな旅をして
どんな景色を見て
何を感じるのか。

どんな島にたどり着くのか。


そんな「いつか」は全く想像できないけど、
未来でもきっと隣を見れば4人が笑ってくれていることだけは想像できるよ。


しょおくんは寝言でむにゃむにゃ言いながら笑っている。
きっと5人でわちゃわちゃしている夢でも見ているのだろう。


しょおくんのほっぺにキスをして、その隣に寝転んだ。



俺もその夢の中に合流できる気がして

静かに目を閉じた。