「しょーおーちゃんっ♡」

「…ほんとに来たんだ」

「来るよー。約束だもん」



約束?というか、相葉くんが勝手に宣言していっただけのような。

前の席を勝手にガタガタ移動させて俺の机と相向かいに並べて当然のようにそこに座った。



「見てみて!じゃーん!購買でパン初めて買ったんだよ。すげー混んでるね。こっちのチョコのと、コーンのと、焼きそばパンとメロンパンとクリームパン。どれが美味しいか分からないから全部買ってきちゃった」



購買で買い物をしたのがよほど楽しかったのか、興奮気味に教えてくれる。



「5つも買ったの?そんなに食べられる?」

「5つくらいなら余裕じゃない?」

「余裕なんだ。そんな細いのに」



菓子パン5つに加え、500mlのパックジュースも一緒に並んでいる。

相葉くんは身長はあるけどかなり細い。
どこにそんなカロリーを保管するんだろう。



「しょーちゃんのお弁当美味しそうだね。いいなー愛されてる感じ」

「毎日ほぼ同じメニューだけどね」

「手作りってとこがいいんだよ」

「そうかな」

「あ、これ美味しい!購買のパンってけっこう美味しいかも!」

「良かったね」

「しょーちゃんも食べてみてよ!」

「俺はいいよ」

「いいから食べて!ほらほらっ!」



チョコのパンをちぎって俺の目の前に出す。

左手に弁当箱、右手にお箸を持っているのに口の前に出してくるから、仕方なくそのまま食べた。


相葉くんのこの距離感にはまだ慣れない。



「どう?美味しくない?」

「確かにうまい」

「でっしょ?」

「うまいけど、唐揚げと混ざる」

「あはは」



楽しそうな笑い声が教室に響く。



意外なことに、相葉くんは話しやすい。

勝手に苦手意識を持って敬遠していた。

人を見た目で判断しちゃダメだな。
反省。



「しょーちゃん、今日一緒に帰ろうよ」

「え、なんで?」 

「だーかーらー親友だから!ってば!毎回毎回なんで?って聞かないでよ。傷つくじゃん」

「ごめん」



いや、相葉くんと一緒にいるのは別にいいんだけど。普通に楽しいし。



「ホームルーム終わったらここに来ればいい?早く終わっても待っててね」

「いいけど、放課後はいつも教室に残って勉強してくんだけど」

「はっ!?マジで!?」

「うん、放課後の教室って快適だよ。静かだし、教材全部揃ってるし、質問あったらすぐ先生に聞きにいけるし。1番集中できる」

「マ、マジで…?」



宇宙人でも見るような顔で俺を見ている。


予想通りの反応。
だいたい引かれるんだよね、こう言うと。



「だから先帰っていいよ」

「俺も!俺も一緒していい?」

「え、いいけど…何すんの?」

「うーん。勉強?」

「ほんとに?」

「ほんとほんと」

「休み時間の時はいいって言ってたじゃん」

「あ、うん、そうなんだけど」

「なに?」

「本当は放課後、しょーちゃんとゲーセンとかカラオケとか行きたかったからさ。でも勉強するって言うから…」

「ゲーセンもカラオケも行ったことない」

「うそっ!?」



相葉くんがまた宇宙人を見るように俺を見て



「じゃあさ、初めてのゲーセンとカラオケは俺と行こうよ!」

「えっ」



ドキッ。



「ね?いいでしょ?」

「いいけど…」

「やったぁ!!」

「初めて誘われた…」

「あはは」



相葉くんは楽しそうに笑う。

人懐っこくて可愛らしくて一緒にいると元気になれる気がする。

人気者なの、分かるなぁ。



「いつにする?あ、今日行っちゃう?ゲーセンとカラオケどっちがいい?」

「もうすぐ定期テストだから勉強した方がいいんじゃない?」

「テストっていつだっけ」

「3週間後」

「まだ全然先じゃん。今日行こうよ」

「まずは赤点とらないほうが先決だと思うけど」

「うっ…」



痛いところをついてしまったらしく、しゅんとなった。

ちょっとしょげてる相葉くんはなんか可愛い。



「大丈夫。分からない所、教えてあげるから」



1人で静かに勉強するのが好きだった。
誰かいたら邪魔だと思っていた。


でもなんか
こういうのが友達っていうのかな。



ちょっといいかも。