ちらりと見えたスマホの表示は9:38だった。


それを確認してから、しょおくんの胸に顔を埋めて目を閉じる。

抱きしめられて全身の力を抜くと身体がふわっと浮いたような感覚になる。
甘くて贅沢な時間。




この前、俺史上で最も大きな仕事が終わった。

とはいえ、まだそのためのキャンペーンなどがあるので完全に終わったわけではないのだけど、こんな風に気持ちまで解放してゆっくりできる日は久しぶり。1年半ぶり?



「おはよ。起きた?」

「おはよ。なに?LINE?」

「マネージャー。映画のオファーで坊主になれるかだって。無理って答えた」

「しょおくんが坊主」

「なれなくもないけど、坊主でZEROとかパンチありすぎでしょ」

「ちょっと見たいかも」

「あはは」



しょおくんはマネージャーと出演依頼の調整をしているようだ。

俺と会話を交えながら、手は高速でスマホ画面をしている。
元ギャル男のしょおくんはポケベルで鍛えた連打を武器にフリックよりも早く入力できるという特技を持つ。



ぼんやりとベッドで過ごすオフの日の遅い朝。

しょおくんのLINEのやり取りが終わるのをただ待っているのもつまらない。


というか打ち合わせ長いな。
俺が目覚めた時にはもうスマホをいじっていたのに。


意識がクリアになるに従って、イタズラしたくなるのは人情というものだ。

だってせっかく俺がいるのにずっと仕事の連絡なんて。



「ねぇしょおくん」

「ん?」
  
「潤、好きだよって言って」

「潤、好きだよ」

「音声入力で」

「やだよ!」

「なんでーマネージャーに送っちゃえよー」

「だめだって」

「愛が足りなーい」

「愛は足りてるだろ」

「足りない足りない」

「もうちょいで終わるから、いい子で待ってて」

「しょおくん構ってー」

「あーもう、ちょっと待てってば。ね?」



しょおくんは俺の頭をぽんぽんと撫でてからまたスマホに文字を打ち込んでいく。


ちぇっ。
つまんないの。

スマホでもいじって待ってよ。


ベッドサイドに置いてある自分のスマホを手に取ると、

ふといい事を思いついた。






「えっ、なにこれ!すごっ!」




しょおくんにスタンプを送りつけると、目を輝かせて俺を見た。




「こんなのあるの?」


「絶賛発売中だよ」


「いいじゃん!ウケるー!」




それから何やら楽しそうに操作して




『もうちょっとで終わるから』





メッセージとスタンプを送ってきた。




「ふふ、買ったの?」


「買ったよ!めちゃくちゃいいじゃん、これ」


「あざまーす」




俺もメッセージとスタンプを返す。




『まだ終わんないの?』







「ぷっ。駄々っ子ー」

「嫌じゃ嫌じゃー」

「潤は泣き虫弱虫鼻水たれだもんな」

「鼻水はたれてないし」

「あはは。お待たせ、終わったよ。マネージャーに最後に『否ー!』って送っといた」

「義元パパ?」



しょおくんは俺の手からスマホをひょいっと取り上げて、自分のと重ねてサイドテーブルに置いた。



「マネージャーから、否ってなんですか?って送られてくるんじゃない?」

「いいよ、少し困らせれば」



覆いかぶさってくるしょおくんの首に腕を回す。



「潤、お待たせ。寂しかった?」

「否~」

「ふふ、素直じゃないなー」



やっとやっと。

おはようのキス。


だってせっかくのオフの朝なのにずっとお仕事のLINEで放ったらかしなんて。

ありえないでしょ。



「殿。これからいかが致しましょうか?」



唇が離れて

この体勢でそんなこと聞く?



「良きにはからえ」

「御意」



手を繋いで指を絡める。

しょおくんの唇が耳元にキスをするように這っていって



「愛してるよ、潤…」

「ん……」



目を閉じて

しょおくんの声だけを聴いて



身体の中も心の中も
すみずみまで全部しょおくんで満たしたい。



熱を帯びた吐息と
くちゅっといういやらしい粘液の音が耳の中で響いて



「はぁっ……じゅん…」

「あっ…」



本当に終わったんだ。



やっとここに帰ってきたんだね。

世界で一番安心できるところ。



ゆっくりと服を脱がされていくように

しょおくんの腕の中で

俺は松本潤に戻っていく。




しょおくん。

ただいま。



たくさんたくさん

愛してね。














スタンブ送りあった時、実は二人一緒にいた説。

クランクアップお疲れ様でした!
茶髪短髪の潤ちゃん麗しかった~♡

武蔵の嘘だろ!?スタンプも作ってほしいです。