「しょーちゃん、おっそーい!」
「ごめんごめん。委員会が長引いた」
「もう、すーっっごい待ったんだからね!」
「まじでごめん」
「2分くらいだけど」
「はぁ?いやいや、遅刻は遅刻だからやっぱりごめんだね」
「ふふ、しょーちゃん真面目ー」
「んだよ」
まさきはからかうように笑った。
「アイス食べたい!」
「コンビニ寄るか。今日もガリガリ君?」
「うん。洋梨味美味しいんだもん」
「飽きないの?」
「飽きないよ!何回連続だろう。昨日、一昨日、水曜日…」
指折り数えている。
「しょーちゃん大変!指が足りない!」
「はいはい。俺の指も使ってください」
並んで手のひらを広げると、端っこからぶつぶつ言いながら指さしていった。
「分かった!」
「何回連続だった?」
「分かんない」
「おいっ」
「だって忘れちゃったもん。分かんないってことが分かったの」
「なんだよそれ」
「でも記録更新には変わりないでしょ」
まさきと俺はクラスメイト。
中1の時に初めて同じクラスになって、なんとなく馬が合って、それから気づくといつも隣にいる。
「しょーちゃん、ひとくち食べる?」
「サンキュー」
ベトベトになった食べかけのアイスにドキドキしているなんて、まさきは微塵も思っていないだろう。
「ね?美味しいでしょ?」
「うん、確かにうまい」
「だよねーっ。しょーちゃんのソフトクリームもちょーだい」
無邪気に笑って顔を近づける。
少し顔を傾けて
その先端を口に含む。
白い液が唇から溢れる。
俺は気づかれないように唾を飲んだ。
まさきはぺろりと舌をだして自分の唇を舐めた。
新緑の季節。
見上げれば青空。
学校帰りに少し遠回りして寄るコンビニの裏の、日陰になってるいつもの場所。
爽やかに風が吹き抜けていく。
首筋を流れる君の汗が
眩しいほど綺麗だった。