2018.12.15嵐にしやがれ。
タッキーが来た回のことです。
「しょーちゃーん」
俺の腕の中で無邪気にじゃれてくる可愛い恋人。
子犬よりも無垢な瞳で
子猫よりも気まぐれな小悪魔は
今日もたくさんのファンをお茶の間で悶えさせたに違いない。
そう。
相葉雅紀ミュージックビデオなる
タッキーの独占欲と愛欲にまみれた雅紀のエロ動画が、あろうことか全国ネットで公開されたのである。
MVは今カレである俺に対する元カレタッキーの現役最後のあてつけであることは誰の目にも明白で、俺や事情を知る二ノなんかはVTRを見ながら顔がひきつっていたことは想像に堅くない。
しかし、当の本人は全くの無自覚な様子で
「タッキーとデート楽しかったぁ」
「懐かしい。昔を思い出すなぁ」
「タッキーってカッコいいよね」
などとぬかし、さっきから俺の地雷を踏みまくっているのだ。
「雅紀」
「ん~?なぁに?」
「ずいぶんとご機嫌だね」
「えへへ、だってしょーちゃんがいるんだもん」
語尾にハートマークをつけて満面の笑みで言うから、思わず頬が緩む。
はっ!
いかんいかん。
思わず小悪魔のペースに乗りそうになった。
おそるべし、天然小悪魔。
「雅紀、今日のA.RA.SHI.最高だったね」
「ほんとー?」
「うん。撮ったのが俺だったら、もっと最高だったのに」
両腕を押さえてベッドに倒し
雅紀の唇をキスで塞ぐ。
「しょ……んっ…」
恋人は俺であるということを刻み付けるように
深く強くキスをする。
力んでいた手から力が抜けて、指と指が悩ましく絡む。
キラキラと輝いていたつぶらな瞳がとろんととろけて陶酔してくる。
息遣いが熱を帯びる。
キスをしながら、サイドチェストのゴムとジェルの引き出しの下の段に片手を突っ込んで、小さく金属音のするそれを取り出した。
まさか、昔冗談で買ったアイテムをこんな形で活用するとは。
雅紀の細い手首にカチャッと嵌めて、ベッドのフレームをくぐらせて反対の手にも同様に嵌めて繋げる。
「手錠…?」
異変に気づいた雅紀が戸惑ったように
自分の手首と俺を交互に見た。
俺は、バンザイした状態で手錠でベッドフレームに繋がれている雅紀をちらりと一瞥して、静かに声をかける。
「さてと。雅紀、そろそろお仕置きの時間だよ」
「お仕置き?なに?どうしたの、しょーちゃん」
「気づいてないの?俺が何に怒っているか」
「しょーちゃん、怒ってるの?」
「当たり前」
「えっ?なんで?」
「なんでじゃねーわ。何だよ、今日の収録」
「収録……?」
雅紀の目が宙を泳ぐ。
今日のことを思い出そうとしている。
「あっ!!あー、ごめん!!」
さすがに鈍感な雅紀も気づいたらしい。
「俺が答え、取っちゃったから!ごめんね、まさか正解するとは思わなくて…しょーちゃん、牡蠣食べたかったよね…」
「…って、ちげーーわ!!」
「えっ、違うの?」
「食いもんくらいで怒んねーっつーの!」
「え?そう?でもしょーちゃん、けっこう食いしん坊…」
「うっせーわ!!タッキーだよ!タッキーに決まってんだろ!」
「え、タッキー?」
「あのミュージックビデオだよ!なんだあれ!よくもあんなもん、俺の前に出せたな!」
「それで怒ってんの?だって番組の企画だもん。しょーがないでしょ」
「前回の風間のやつもムカついたけどさ」
「風間ぽんのは面白かったって言ってくれたじゃん」
「額面通りに受け取ってんじゃねーよ。風間はギリセーフだけど、タッキーのは完全アウトだかんな!」
「えぇ!?そうなの?」
「ったく、俺の前でイチャイチャしやがって。俺はどんな気持ちであのV見ればいいんだよ」
「そっか…ごめん。全然気づかなくて…」
しゅんとしてるのが可愛い。
まぁ、無邪気なところが雅紀の良いところなんだけどさ。でも俺にも我慢の限度ってもんがあるんだよ。
現役最後っていうなら、デスマッチに参戦して、嵐5人と絡めばいい。
それなのに、あえて雅紀のコーナーで、しかも持ち込み企画で、テレビの力を使ってあんなベッドのエロい画像まで撮りやがって!
それに何の疑問も持たずにただ楽しく参加した恋人にも腹が立つ。どうやって懲らしめてやろうかと考えて、帰りの車の中で去年もらった手錠の存在を思い出した。
「ねぇしょーちゃん、これ外してよ」
「だーめ。これから雅紀には、たっぷりお灸を据えてあげるからね」
「えぇー、なんか変態っぽいよ」
「変態、好きでしょ」
「まぁ、好きだけど…」
雅紀のシャツのボタンを
ゆっくりと外していった。