03☆ノノ`∀´ル転生したら相葉雅紀だった件。
俺の名前は松本潤。
通称松潤。
またはMJ。
嵐のセクシーアイコン。
すぐに脱線して遊びはじめる兄4人に手を焼く嵐の末っ子である。
嵐という大事な宝物を、コンサートという神聖な場所で、ファンのみんなにより喜んでもらえるような形でお届けするのが俺の使命。
そんなわけで、
毎日が勉強。
毎日が挑戦。
素晴らしい仲間やファンに恵まれ
俺は今、とても充実している。
ふわりと、いい匂いがして目を開けた。
あれ?
まだ夜?
辺りはまだ薄暗い。
いや、明け方かな。
カーテンから薄らと朝日が漏れ入っている。
見慣れない景色だ。
低血圧ぎみの俺は、朝にめっぽう弱くこんな時間にスッキリと目が覚めることなんてない。
「何時…?」
って、あれ??
無意識に出た独り言に、思わず動きが止まる。
今の声めっちゃ相葉くんに似てなかった?
本人そっくり。
ははっ、と笑ってみたけど笑えなかった。
その笑い声までそっくりだ。
「あれっ?えっ?えっ?」
それに、辺りの様子に見慣れないのは時間が早いせいだけじゃない。部屋の様子も違う。
枕元には、相葉くんがリーダーに誕生日でもらったというマッチョな人形が変なポーズを決めて佇立していた。
洗面所に一人、
鏡を覗きこんだまま立ち尽くしている。
なんで?
なんで??
なんで俺、相葉くんになってるの?
いつから相葉くんになったの?
だって昨日の夜は…斗真たちと飲んで、遅くに帰ってから風呂入って、ちゃんと「俺」が俺のベッドに入ったような??
…だめだ。
頭が追いつかない。
俺の常識のキャパを超えている。
でも、前にもこんなことあったな…。
そうだ。
TikTokのマジックだ。
紙コップの中のレモンが消えたり現れたりして、それを自由自在に操る相葉くんを魔法使いかと思った。
ストローが瞬間移動した時だって驚いた。
相葉くんがパチンと手を叩いたら、手の中にあったはずのストローが消えてなぜか俺のコーヒーの中に移動していた。
目を凝らしていればいるほど、まんまと引っかかってしまうんだよな。
後からTikTokの動画を見るとそれが案外単純なトリックだったりして、いつもちょっと悔しい思いをする。
つーか、すげー沢山いいねついてたけど、みんなだって絶対引っかかるからな!!
と、声を大にして言いたいよ俺は!
…ってことは。
ははぁ。
読めたぞ。
さてはまた俺をひっかけて面白がってるな。
しかし残念だったな。
俺だって密かに謎解きの特訓をしている。
松丸亮吾から太鼓判をもらい、謎解きキング佐藤健と互角に渡り合えた男。
マジックにそう何度も引っかかると思うなよ。
きっと何か仕掛けがあるはず。
相葉くんはどこかに隠れていて、驚いている俺を見て笑っているに違いない。
「相葉くん、いるんでしょ?」
キョロキョロとカメラを探す。
「相葉くーん!もうバレてるよ!出てきてよ」
部屋中の電気をつけまくって、全ての部屋を隅々までチェックする。
だけど、しばらく探しても相葉くんどころかカメラ一つも見つけられない。
「あれ?まさか…?嘘だろオイ…」
何が嘘で何が本当なのか分からなくなってくる。
自分から発せられる声も、鏡の中の俺の姿も、鍛え上げられたジャニーズNO.1のボディも、やっぱり相葉くんで。
「俺って…本当は相葉くんだったの?」
俺は次第に現実を受け入れ始めていた。
とりあえず、相葉くんである俺は朝ごはんを食べることにした。
家中を捜索した時、HITACHIの炊飯ジャーがご飯が炊けたと教えてくれたからだ。
昨夜相葉くんが…いや、俺が予約しておいたらしい。そういえば、そんな気もする。
目覚めた時にいい匂いだと思ったのは、ご飯の炊けた匂いだった。
待ちきれないと言うように、お腹がグゥーーと鳴った。
冷蔵庫の中にはマナブで農家さんから頂いたと思われる新鮮な野菜や常備菜、実家から届いたお惣菜が几帳面にタッパに入れて並んでいる。
それを菜箸で少しずつお皿に乗せる。
ジャーを開けると、ふわっといい匂いがした。
茶碗によそると白い粒が真珠のように美しく輝いた。
「いただきまーす」
食事は、どれもこれも美味しかった。
高級料亭の高級懐石料理はもちろん美味しいけど、出来たて新鮮な手作りの味が劣るわけでもない。
「うっま…」
早朝から目を覚まし家の中を動き回って、お腹を空かせて炊きたてのご飯と旬のおかずを食べる。
あぁ、なんて幸せ。
日本人にとってこれ以上の幸せなんてある?
松本潤はいわば最新式の健康ストイック。
相葉くんは自然派の健康ストイック。
様式は違えど、目指す所は美と健康。
相葉くん、いいな。
すげー体にいいことしてるじゃん。
相葉くんって抜けてるところがあるから嵐のお笑い担当みたいなイメージだけど、実はすごくちゃんとした人。
ちゃんとした生活を送る、ちゃんとした大人。
そういう所がカッコイイと実は密かに前から憧れていた。
やっぱ相葉くんってカッコイイんだな。
このお米1粒1粒に農家さんの汗と涙が宿り
太陽の光を浴びた旬の野菜たちと
それを愛情こめて料理してくれた人達の優しさが滲む。
「あーうまい。最高…」
一口運ぶごとに、それを逃さないように噛み締めた。