02☆(`・З・´)転生したら松本潤だった件。








俺の名前は櫻井翔。



天下無双のスーパーアイドル
泣く子も黙る嵐の次男坊。


趣味は仕事。
生きがいは嵐。


スケジュールがぎっしりキツキツに詰まっていることにこの上ない悦びを感じるワーカホリックのアラフォー男子である。


毎日が楽しくて楽しくて仕方ない。




だけど、その日は

突然やってきた。









なぜだ?
何が起こったんだ?



鏡の中には松本潤。

どこからどう見ても松本潤。


寝起きの松本潤が驚いたように目を丸くしてこちらを見ている。


しかし、まつ毛なっげーな。
まばたきする度にバサバサと音がする。


つーか黒目でかくね?

こんなに目がでかくても
視力はあんまり良くないから不思議だ。


松本潤の偏差値高い顔面を
この至近距離でじっくり眺めるのはなかなかの迫力。


おいおい、
寝起きでこのクオリティかよ。

と、わけのわからないとこに感心したりして。



だって俺なんて寝起きすげー浮腫んでるっつーの!!



まぁそれはいいとして

なんで俺、松潤になってんだ?



仕事のし過ぎで疲れてるんかな。


こんなこと、現実世界であるか?

ため息まじりに洗面所を出る。



あ、そうだ。
喉が渇いたんだった。

とりあえず水を飲んで落ち着こう。



水、水…。



「松潤、開けるよー」



一応断ってから冷蔵庫を開ける。


だけど中には水はない。

見るからに高級そうなお酒のビンが並んでいる。



そっか、水は常温だっけ。

部屋のど真ん中のウォーターサーバーが異様な存在感を示している。

松潤自慢のウォーターサーバー。


味が全然違うんだよ~、とか言ってたやつだ。


大袈裟なんだよな。
思い込み激しいっていうか。


たかが水なのに、そんなに違うわけ…



「う、うまい…」



思わず二度見する。


え?なんで??
なんか入ってんの?

ただの水だよな??


もう一口飲む。


やっぱりうまい。


水の角がとれてて口当たりまろやか。
ミネラルの旨みすら感じられる。


渇いた体にすっとしみこむような。
今まで飲んだどの水よりも美味い。


いや、でも、この前飲ませてもらった時は何とも感じなかったはず。


なぜ今回は…



そこまで考えてハッと気づく。



そっか!
今、俺が松本潤だからか!!


松本潤の体だから、味覚まで松本潤なんだ。

松本潤の舌で松本潤の感覚で味わっているから、水の味がこんなにハッキリ分かるんだ!


恐るべし松本潤クオリティ!!



あぁ~松潤!!

水なのにそんなに味が違うわけないだろって心の中で思っててごめん!!


これじゃ中濃ソースが欲しいのにステーキソースを二度も渡されたら普通にキレるわ!!



マジですげーな、松潤クオリティ。


違う世界が見える。
松潤の目に映る世界。


人の感覚によって、見えてる世界が違うんだ。

アンテナの張り方によってキャッチできる情報が違うんだ。



すごい。
面白い。


じゃあ俺のアンテナは、どこを向いているんだろう。


俺が松潤になっているということは、
きっと松潤が俺になっているんだ。

いわば「君の名は」システム。



松潤にも聞いてみたいな。

そろそろ俺に電話してみるかな。



松潤は起きたかな?
起きてびっくりして、途方に暮れて泣いてるかもしれないな。

あの人、見た目の100倍くらい打たれ弱いから。



スマホの指紋認証でロックを解除して
「Siri、翔くんに電話」
松潤の声真似でオーダーする。


賢いスマホはすぐに期待に応える。



画面には「Sho Sakurai」の文字が点灯して
Jr.の時に撮った俺たちのプリクラのツーショット写真が映し出された。


おぉ、懐かしい!!

いやでもこれ、ちょっと恥ずいんだけど。



しばらくコールして、それから通話になった。




「もしもーし、潤ちゃん?」




!?!?


誰だ!?


声は俺の声なのに、
めっちゃテンション高いじゃん。


これぜってー松潤じゃねーな。

もしも今、俺の体に入ってるのが松潤だったら、「松本潤」から電話かかってきた電話にこんな軽い感じで出るわけがない。



一体誰だ?



「もしもし?もしもーし?」

「……誰?」

「俺?えっとねー、しょーちゃんだよ!」


ぜってー違うだろ!
俺そんなこと言わねーだろ!


そんなテンションで俺を名乗るんじゃねー!



って、ちょっと待てよ。

この100ワット的なテンションと、特徴的な「しょーちゃん」呼びにすげー覚えがあるんだけど。



俺の脳内スパコンの導き出した答えは…



「相葉くん…?」

「えぇーー!!潤ちゃんすごい!!なんで分かったの!?」

「……」



やっぱりか。




俺になっていたのは

まさかの相葉くんだった。