「海が見たいな。」
気まぐれな君の
気まぐれな一言で
高速を走らせて
夜の海を見に行った。
「気持ちいいね。」
ザザーンという波音をBGMにして
君の澄んだ声が響く。
「俺、潮の匂い、好き。」
なぜかもの悲しく聞こえて
君の温もりが消えないように
強くぎゅっと抱き締めた。
「ふふっ。なぁに?」
「離れないで。」
「離れないよ。ずっと側にいるもん。」
「うん。」
「どうしたの?」
「急に不安になった。お前が闇に吸い込まれてしまいそうで…。」
「しょおくんは心配性だね。」
「るせー。心配はしすぎるくらいが丁度いいんだよ。」
「はいはい。ありがと。」
ちゅっ。
「しょおくん、大好き。」
「愛してる…。」
誰もいない
夜の海で交わすキス。
それが俺たちの
最後のキスだった。