翔くんは俺を連れてベッドに横になると
腕枕してくれた。



さっきから翔くんの顔が近いよ!!
腕枕なんて!!
ドキドキして眠れないじゃん!!



それに、さっきの。

聞き間違えじゃないよね…?


「くぅーん…」


「お前、オシッコすんなよな!
って、何か大丈夫そうだな。ははは」


うん、トイレの場所知ってるよ。



「俺、動物とか苦手なんだけどさ、ジュンは大丈夫だ。お前、潤っぽいからかな。」


優しく笑って撫でてくれる。



しょおくん…

「くぅーん」



しょおくん…俺もしょおくんの事…

「くぅーん…」



俺は翔くんのほっぺをペロッと舐めた。



「ふふ、何、応援してくれんの?
じゃあ明日メシでも誘ってみるかな。」



うん!誘って誘って!!

シッポをパタパタと振って、翔くんを舐める。



「ははは、分かったよ!やめろって。
ほら、ジュンも疲れただろ?早く寝よう。」


「クゥーン」


「おやすみ。」


「クゥーン」





翔くんはすぐに寝息をたて始めた。






しょおくん…




近くで見る翔くんの綺麗な寝顔。



可愛い鼻
長い睫毛

それに、柔らかそうな唇




俺は、そっと唇にキスをした。


「大好き」って気持ちを込めて。





これは夢?魔法?

人間に戻れたら翔くんに伝えたい。


俺も、大好きだよって。
ずっとずっと大好きだったんだよって。






もっと翔くんの寝顔を見ていたかったけど、翔くんの温もりにウトウトしてきて…

いつの間にか眠ってしまった。


















朝がきた。


「しょおくん…?」

ここ、俺の家。ソファの上。


「夢…?」


…って、そりゃそうだ。

がっかりしてる、俺。



夢にまで見るなんて、そんなにあの子犬が羨ましかったのかよ。
笑っちゃうな。


「やっばい!」


もうこんな時間。
俺は急いで支度を済ませて家を出た。












今日は新曲の打合せ。


翔くんはいつもの席で新聞を読んでる。



「はぁ。」

翔くんが本日3回目のため息をついた。


「ちょっと翔ちゃん。
そのため息、鬱陶しいんだけど。」

「ひっでーなぁ。」

「どうしたのよ?」

「実はさ、信じてもらえないかもだけど、昨日、子犬拾ってさ。」




俺は読んでる雑誌を落とした。
慌てて拾ってみんなの会話に耳を傾ける。

心臓がバクバクしてる。




「ウソでしょ!?翔ちゃんが犬拾うなんて!どしたの?」

「俺も自分でびっくりだよ。
でもなんか放っとけなくてさー。」

「へぇー。」

「んで、朝起きたらいなくなってた。」

「それでため息ついてんの?」

「まさかの翔ちゃんがペットロス!?」

「信じられない!」

「どっかに隠れてるんじゃない?」

「すげー探したんだけどさ。いくら呼んでも出てこないんだよ。」

「名前つけたの?」

「へっ!?あ、いや…」



翔くんが動揺してる。

うわー、心臓爆発しそう…



「なに?いぬーって呼んだわけじゃないでしょ?」

「何焦ってんの?」

「まさか好きな人の名前とかつけてないよね?」

「なっ、んなわけないじゃん!」






「まちゅづん」

「わぁっ!!」

いつの間にか後ろに智が立ってた。

びっくりした~!!
勢いでワンって言いそうになったし!!


「なっ、な、何?」

「雑誌、逆」

「……。」

「あははは、潤ちゃん、天然~」

「潤くん器用だね~」



みんなに笑われた。
あぁ~翔くんもこっち見てる!!

俺今、絶対赤くなってるよ。



「準備できましたー。」

絶妙なタイミングでスタッフが呼びにきた。

助かった~。


「はーい」「行こうぜー」

みんな返事をして出て行く。




「翔くんと同じ匂い」

通りすぎる智が小さな声で耳打ちして
ふにゃっと笑って楽屋を出て行った。



えっうそ!?マジで!??
気付かなかった!

昨日しょおくんに洗ってもらったから??
やっぱり夢じゃなかったの!?


俺は匂いをくんくん嗅いでみたけど自分じゃよく分からない。




まだ頭が混乱してる。






昨日のことが本当だったとしたら

翔くんの気持ちも…本当…??



って、やばっ、みんな出て行っちゃった。

慌てて楽屋を出る。



「潤」



部屋を出ると翔くんに呼び止められた。
待っててくれたんだ。



「しょおくん…」



どうしよう!二人になっちゃった!
今日の俺ドキドキしっぱなしだよ!!



「あのさ、打合せ終わったらメシ行かね?」

「え…」

「あ、いや、もう予定あるならいいんだけど。」

「ううん、行く!行きたい!」

「ふふっ、そっか。じゃあ終わったらまた連絡する。」

「うん。」




あぁ!

神さま仏さま子犬さま!!!

翔くんが誘ってくれた!
嬉しい!



「行こう。」




俺達は顔を見合わせて笑うと

みんなの待つ方へ歩きだした。











おわり