「ごめん、お待たせ相葉くん」
「全然。時間ぴったりじゃん。ポップコーン食べる?」
「食べたい!えっとその前にチケット…」
「もう買ってあるよ」
ドヤ顔でチケットを2枚見せる。
「早っ。え待って、1800円だっけ」
「いいよいいよ。デートだし」
うわー。
言ってみたかったんだよな、こういうセリフ。
俺らめちゃくちゃ恋人っぽい!!
やばい。
顔がにやける。
「えぇー、じゃあポップコーンと飲み物は俺に奢らせてよ」
「まじで?いいの?」
「もちろん!何にする?」
しょーちゃんは眉毛を下げて笑った。
ううっ。
今日のしょーちゃんもとびきり可愛い。
どんな表情もどんな仕草も可愛くて可愛くて仕方ない。
昨日の教室での出来事は帰ってからも何度も何度も思い出している。
膝枕されながらイチャイチャしてたらぽろっと告ってしまった。
そしたらしょーちゃんも同じ気持ちで、あれほど悩んでいたのが嘘のように、俺たちは実にあっさりと恋人になったのだった。
つまり今日はしょーちゃんと恋人になってから初めてのデート。
放課後デートじゃなくて、休日の、ちゃんと待ち合わせから始まるやつ。
昨日帰り道にしょーちゃんが面白そうって言ってた映画「5番出口」を観にきたところ。
「相葉くんって私服もオシャレなんだね」
「ほんと?ありがとう。しょーちゃんも可愛い」
「えー、そうかな。服とかよく分かんなくて」
「じゃあ映画のあと服も見ようよ」
「えっ?う、うん」
「午後なんか予定ある?」
「俺、家族以外とこうやって待ち合わせして映画とか服見たりとかも初めてで……なんかドキドキする」
くぅっ……!!可愛いっ……!!
俺だって、恋人とのデートなんて初めてだからドキドキしてるよ。
って言おうとしたら列が進んで俺たちの番になった。
ポップコーンとドリンクを買って中に入ると話題作の公開初期とあってかなり賑わっていた。
真ん中のいい席とはいかなかったけど、まずまずのシートに並んで腰を下ろす。
少しお喋りしていたらそのうち予告が始まって、それから本編がスタートして、すぐにミスを犯したことに気づいた。
手を伸ばそうにも俺たちの間を隔てるように大きなバケツ状のポップコーンが鎮座していたのだ。
は?
嘘だろ?
初デートの映画で手を繋げないとかある!?
すぐ左隣の手の届く距離にしょーちゃんが座っているというのに、ポップコーンがそれを阻む。
いや、正確には手を繋ぐスペースはあるものの、繋いでしまったらポップコーンを食べられなくて不自然になってしまう。
うーん。どうしよう。
スクリーンでは主人公が迷路のような駅の中に迷い込んでしまったシーンのようだけど、俺は内容が入ってこない。
しょーちゃんは時々ポップコーンを口に運びながら真剣な表情でそれを見守っている。
ふふ、可愛いなぁ。
そんな真剣に観ちゃって。
きらきらした瞳に光が映る。
薄暗い部屋の中で見るしょーちゃんの横顔はふんわりとスクリーンの明かりに照らされている。
綺麗な横顔を見つめていたら、ふいにこっちを向いたしょーちゃんと目が合ってしまった。
一瞬驚いて、それからふわっと笑う。
あぁ
やっぱり好きだな。
磁石で引かれるみたいに君に近づきたくなるのはもうしょうがない。
見つめ合った瞬間に音が消える。
2人だけの世界。
微笑む君に近づきたくて
そっとキスをした。