それからしょおくんがうまトマ食べたいって言うからアパートの近くの定食屋っぽい牛丼屋に行って、コンビニでアイス買って帰ってきた。
「夜のアイスってなんでこんなうまいんだろう」
「この背徳感がスパイスだよね」
「それな」
「来週提出のレポートやった?」
「あー、経済基礎のやつ?あと少し」
「俺も。明日みんな誘って図書館とかで仕上げちゃうか」
「午前中で終わるからファミレスとかでもいいかも」
「そうだね。WiFiあるし」
いつも通りの会話。
いつも通りの空気感。
恋人になったとはいえ関係性はあまり変化ない。
良かった。
いつも通りだ。
なにを緊張してたんだろう、俺。
「今日、泊まってく?」
ドキッ。
油断してたらそんなことを言うからアイスの棒を落としそうになった。
「へっ?」
「泊まってく?」
って、待て待て。
恋人になってからあらたまって聞かれると意味深なんだけど!
こんなん友達だった時からしてた会話のはずなのに。
「か、帰るよ」
「そうなん?うちに向かって歩いてるけど」
「これはつい癖で……道を間違えただけ」
「ふーん。でも今からだと終電間に合わないんじゃない?」
「ほんとだ。え、じゃあ、タクシーとか…」
「金欠って言ってなかった?」
「言ってたけど」
「普通に泊まっていった方がいいんじゃない?」
「……」
ニヤニヤしながら俺を見る。
これって絶対確信犯じゃん。
「そういうの電車あるうちに言ってよ」
「そしたら帰るっていいそうだったから」
「もうっ、帰れないって分かってるなら聞かないでよね」
ぷいっとふくれて横を向く。
「潤に泊まりたいって言ってほしくて」
しょおくんがそっと手を繋いでにっこりと微笑んだ。
そんな急な恋人ムーブ、気待ちが追いつかないから勘弁して欲しい。
「泊まっていくでしょ?」
「歩いて帰る」
「はいはい、帰ろうね」
可愛げのない返事にもしょおくんはなぜか嬉しそうに笑った。
結局、手を引かれて当たり前のようにしょおくんちに到着してしまった。
したはいいけど、いつもどうやって泊まってたんだっけ?
意識すると分からなくなる。
「お、俺っ、こっちのソファで寝るね」
「なんでだよ。恋人になったんだからそんな所で寝かせられるわけないでしょ」
「えっ、でもほら、ベッド狭いし、いいよ」
「今までだって一緒に寝たことあったじゃん」
「そうだけど」
「そんなの気にしてなくていいのに」
「気にするよ…」
しょおくんはベッドに腰掛けて隣をぽんぽんと叩く。
「ねぇ、普通にしてよ」
「ん?普通じゃん」
「なんか恋人っぽい」
「だって恋人じゃん」
「そうだけど…」
「どうしたの?」
「だってなんか、ドキドキして…」
「ふはっ、可愛い」
「可愛くない」
「じゅーん?」
「……何もしない?」
「約束はできないかな」
「……」
「潤?ほら、隣においで」
うぅぅぅ……。
ドッキンドッキン心臓が鳴る。
しょおくんといたら心臓おかしくなって死んじゃうかも。
ソファで動けなくて俯いていたら、しょおくんが目の前にきてしゃがみこんだ。
優しく手を握る。上目遣いになったしょおくんは本当に王子様みたい。
「じゃあ、今日はキスしかしないから。こっちで寝よ?ね?」
優しいなぁ。
やっぱり好きなんだよなぁ。
キスだけでも十分ドキドキするんだけど、あまりワガママ言うのも悪いよね。
せっかく恋人同士になったんだし。
俺だってしょおくんのこと好きだし。
小さく深呼吸して頷くと、しょおくんはふふっと微笑んだ。