キャンバスに恋をして。(佐藤詩織誕生記念小説) | mimimimi◢͟│⁴⁶ 小説

mimimimi◢͟│⁴⁶ 小説

主に欅坂46の小説読んでます☺︎書いてます☺︎
読んでいただけたら嬉しいです。!

コメントどんどん待ってます!

アメンバー申請は読者登録を知らせてからお願いします。
読者の方に承認しています!


私には好きな人がいる。
最初から分かってた…

叶わない恋だということ

私の好きな人には婚約者がいること。

分かっていたのに好きになったのはきっと…彼女のせいだ。









キーンコーンカーンコーン


4時間目のチャイムが鳴りクラスメイトは「飯だー!」「食堂行こう」なんて話をし昼食に胸を踊らせている。

そんなクラスメイトを横目に私はある場所へ向かう。


あるドアの前で止まる。


それはーー美術室。





ドアについている窓から見える景色は私が一番好きな景色であり、私が彼女に惚れた景色。

初めて見たとき「綺麗…」と思い言葉を失って心を奪われた。

そこから何分ぐらい立ちすくんでいたのだろうか…中にいた彼女と目が合い不思議そうに私を見つめていた。

ドアが開き彼女が出てきて私に問いかける。


「どうしたの?」


そこで私は現実に戻り、変な人扱いされているんじゃないかと不安になり焦ってしまい誤魔化すしかなかった。

焦っていたせいで言葉と表情がおかしかったんだろう。

彼女は私に微笑みかけて「中でゆっくりする?」と声をかけた。

わけもわからず美術室に入り、近くにあった椅子に腰をかけて彼女を目で追い続けた。

彼女はキャンバスに向かってひたすら絵を描いていた。

その姿に見とれるしかなかった。


惚れてしまった。


彼女の真剣な眼差し、横顔、背中、腕、笑顔、声…なにもかも好きになった。








その日から私は毎日昼休みに美術室に通っている。

最初は入ることに抵抗があったこの部屋のドアも今では簡単に開けれるようになった。


ガラガラガラ


「失礼しまーす」


そう一声かけ美術室に入り近くにある椅子に座る。

毎日通ううちに彼女に覚えられるようになった。


「渡邉さんこんにちは」


私に微笑みかける彼女ーーー佐藤詩織先生。
詩織先生はもちろん美術の先生。

11月16日、今日は詩織先生の誕生日。
この後どこか一緒に行きたい、そう私は思っているけどそんなこと出来ない。

勇気がないとかそんなことなら、勇気出せよ!と自分に喝を入れて誘うことが出来る。



そんな簡単な理由だったらいいのに。




「どうしたの?」

「え?」

「暗い顔になってたけど…」

「別に何も無いですよ?」


私は偽りの笑顔を作った。
何も無いことなんてない。


「それより、詩織先生お誕生日おめでとうございます」

「あっありがとう。覚えてくれてたんだね。」

「当たり前じゃないですか」


美術室に通うようになって色んなお話をした。

詩織先生の好きな食べ物、好きな芸能人、美術の先生になった経緯、バレエをしてたこと…もっともっとたくさんお話をした。

だから詩織先生のことは学校では一番知ってる自信あるし、仲良い自信だってある。


でもあの人には勝てないんだ。

詩織先生の婚約者には勝てないんだ。


きっと今日だって、婚約者と高級レストランでディナーでもするんだろうな…。


そんな暗い私とは裏腹に明るい詩織先生。いつも明るいけど今日はいつもに増して明るい。


「詩織先生今日明るくないですか?」

「そう?いつもじゃない?」

「もしかして婚約者さんと…」


ガタッゴトッ


筆の整理をしていた詩織先生は筆を落とし、床に落ちた筆の音が美術室に響いた。


「動揺してる…」

「渡邉さんは勘が鋭いね」

「そんなことないですよ」


勘が鋭いっていうより詩織先生が分かりやすいんですよ。

そんなことが言えるはずもなく私は筆を拾って詩織先生に渡して椅子に座り直した。


「実はね…」


“テレビで紹介していた高級レストランでディナー予約してるんだ”と幸せそうな顔をして詩織先生は教えてくれた。


やっぱり。


なんか嫌だな、予想当たっちゃうの。
逆に言うと…婚約者さんと思考回路一緒ってこと…?それはポジティブに捉えすぎ?

思考回路一緒なだけで振り向いてくれることなどないから浮かれた気持ちを抑えたい。


「楽しんでくださいね」

「うん、ありがとう」


キーンコーンカーンコーン


幸せな昼休みの時間の終わりを告げる音が学校中に鳴り響いた。

教室に戻らないと…。


「お誕生日おめでとうございます、素敵な一年にしてください。では、失礼します」

「ありがとう。授業頑張ってね」


ガラガラガラ


ドアを閉めて幸せな時間から授業に向けて気持ちを切り替える。


詩織先生のことを諦めないといけないんだけど、会えば会うほど好きが増していく。

じゃあ会いに行くのやめたら?ーーそういうことじゃない。

自分のものに出来ないしならないんだから、せめて“昼休み”という短い時間だけでも二人きりにならせて。



詩織先生お誕生日おめでとうございます。
いい一年にしてください。


婚約者さんと末永くお幸せに……。