雨が私の身体に染み込む。
悲しみ、絶望、悲哀…などそういう哀れな気持ちと共に水が私の身体を打ち付ける。
ここに居続けてどれくらい経ったのだろうか。
元々人気がない。
通り過ぎてゆく人達はみんな、「可哀想」そんな同情するかのような目で私を見る。
────別に拾われなくたって。
このまま雨に打たれて消えちゃいたい。
誰かを支えることなんてできない。
愛されない。愛さない。そんな私は生きてる価値がない。
はやくいなくなっちゃいたい。
所詮、私は野良猫だから…。
女子中学生だろうか。
4人組と目が合ってしまい、私の元へと近寄ってきた。
(うわっ汚い〜〜!!)
(ビョーキ持ちだよこの猫!)
(汚すぎて飼えないわ〜)
汚れていることは、私も分かっている。
だからってビョーキ持ちだなんて言うなよ。
それなら私になんか構わなくていいのに。
生きたくて“ここ”に生きてる理由ではない。
別に誰も拾ってくれなんか言ってないし…。
「かわいい〜〜」
フワッと体が浮き、目の前には綺麗な顔をした人がいた。
綺麗、そう思ったけれど他には何も思わなかった。
どうせ捨てられるだけ。
それなら、感情を抱いてしまった分無駄。
はいはい、ありがとうございます。
(汚いけど理佐この猫を飼うの?)
(飼うとかやめといたら?)
ガチャ
気づいたら、理佐っていう人に抱えられたまま家の中に入っていた。
電気はついていなくて、何かの音も何一つしない。
そこは静閑な空間だった。
「親は仕事で家にいないことが多いんだよね…」
理佐っていう人は、寂しく呟いたが質素な部屋に吸い込まれるだけだった。
机の上には、おにぎりと置き手紙が置いてあった。
『理佐へ
食べてね
ママより』
たったそれだけの文字。
なぜか、理佐っていう人の顔が悲しそうに見えた。
「ひとり?」
初めて、声を出してみる。
上手く伝わっただろうか。
フルフルと首を振った姿は、まるで犬みたい。
「…二人」
そう、理佐っていう人は優しく私に囁いた。
私と理佐っていう人は、似てる。
似てないけど、似てる。
人間と猫。
全く違う生き物なのに、似てると感じた。
一体何故だろうか?
きっとお互いが…
────独り だからだ。
続