偏屈な民俗学の准教授とその弟子の大学院生の娘の命の(?)話。
師弟関係ではあるが、どこか世話の焼ける爺さんと孫のような印象になる風景を浮かべてしまいます。
あちこちに旅に出る二人が、そこで感じ取った物事と、師の教えのようなものがちらっと書かれてる、そしてどこか命について考えさせられるような感じを受けました。
准教授は足が不自由で杖を突く初老の男。
なぜ足が悪くなったのか、旅を共にすることで徐々に明かされる実は既婚者であったことや、妻も同じ民俗学者であったこと、事故により妻は亡くなり足が悪くなったこと、なぜ飛行機に乗らないのか、なぜエスカレーターを嫌うのかなど・・・そして妻に似てる印象を持つ弟子。
これは・・・?!恋愛ものに結び付けがちな感じもありつつ、でも一切互いに気がある不利がなく本当に師弟関係だけであり、旅先で感じる不思議体験と神についての受け入れが自然でよかった。
ある意味ファンタジーにも感じそうな部分という感じもあるのに、どこか自然と受け入れられる・・・仏や神を感じる印象。
巨木などを失えばその神をも消滅させることになる、航路を切り開く船人に光をともす灯台を失わせるようなもの・・・現在の傲慢な自然破壊に警笛を鳴らすかのような印象で「神は心を照らす灯台だ」・・・・が私の中でよかった文のひとつです。
いまだに新年になるとご来光を浴びに行く人など、自然にどこか神を思い崇めているんじゃないのかなぁ。
お遍路の話が本にはありましたが、宗派があるとか仏を神を信じる信じないというよりも、日本人としての芯みたいなもの、歓声に響くような印象の本でした。
自然破壊などだけでなく、教授の病変や坊さんの死など、命の灯みたいなものを感じる本でした。
いつか命に終わりはあるけれど、残されたものはどうすべきか、命あるうちに何が残せるのか、何かを感じろ!と、生きることについてどこか考えさせられるような感じで読了。
神様を探す二人の旅が始まる。 「少しばかり不思議な話を書きました。 木と森と、空と大地と、ヒトの心の物語です」 --夏川草介
第一話 寄り道【主な舞台 青森県弘前市、嶽温泉、岩木山】
第二話 七色【主な舞台 京都府京都市(岩倉、鞍馬)、叡山電車】
第三話 始まりの木【主な舞台 長野県松本市、伊那谷】
第四話 同行二人【主な舞台 高知県宿毛市】
第五話 灯火【主な舞台 東京都文京区】
藤崎千佳は、東京にある国立東々大学の学生である。所属は文学部で、専攻は民俗学。指導教官である古屋神寺郎は、足が悪いことをものともせず日本国中にフィールドワークへ出かける、偏屈で優秀な民俗学者だ。古屋は北から南へ練り歩くフィールドワークを通して、“現代日本人の失ったもの”を藤崎に問いかけてゆく。学問と旅をめぐる、不思議な冒険が、始まる。 “藤崎、旅の準備をしたまえ”