結構好き、いい本だと思いました。

手に取ったきっかけはパッと見たとき大阪ミナミがでてきたこと。

知ってるところがたくさん出てきそうだと借りてきましたが、漢詩が出てきたり、思ってたような軽いストーリーではなかったです。

 

大阪でカレーや経営する老人 三宅紘二郎には兄がいた。

その兄から絵葉書が来たことでカレー屋を閉店して、兄を殺しに行こうと決心する。

そう、兄弟仲がいいというわけではなく今まで眠っていた憎悪がこのはがきによってぽっと灯がともってしまったわけです。

 

あのときコンテッサで迎えに行くと約束したが今や扱いのない車。

それを何とか探し出してのったらば、売りつけた会社の若造がその車は危険だと事情を話すが、わかってもらえないことでその若造もともに旅をするという・・・・そこがかなりぶっ飛びストーリーではあるが、この二人が大阪から大分まで旅する道中で過去に振り回されなく今を、これからを考えてほしいという気持ちや本当の過去の真相がみえて思ってた終わり方でもなく、なかなかよかったです。

 

 

その根源は年頃の兄弟に婚姻話がやってきたことから。

後に病院を継ぐ兄、そして兄を立てるべく(親から見て勉強もできないダメ男)に育った弟。

貧しい家元の娘。

今後も金を優遇してもらうために娘を受け入れるような構図ではありますが、実はこの兄弟この娘が好きになっていく。

そしてこの娘は・・・兄の許嫁なのに弟のほうに心底ほれ込んで駆け落ちまでしたわけです。

それなのに、兄のもとに連れ帰られてしまう。

この二人の愛は本物でいつか迎えに行くというのを信じ待っていた・・・・

 

一方若造のリュウは・・・施設育ちの男。

愛するジュジュの話、幼少期の愛玩子としての母子関係の暴露などいろいろかわいそうな部分もありますが、誰しもが割と演じて生きてるわけなんで、彼だけが特別とも思いきれなかった^^;

もちろん憎悪に燃えた男のほうにもあまり感情移入できず、さらに言えば貧乏人の娘の愛の重さも私にはよくわからなかった^^;

自分が長子気質だからかもしれないが、この許嫁を受け入れる器量は兄しかいなかったのでは?とおもってしまう。

ジュジュの金持ち気質の娘の気持ちは、特別自分が金持ちではいけれどなんとなくわかる、しょせんその程度の愛なんだよ。親に従順を演じてる、殻を破れない子供・・・。

でも最後はカレー屋の男に言いくるめられた感というか、いろいろ押し付けられた感?あれは本当にあの子の意思での動きなのか?まぁそれが愛というならぱっと花開いて散ってくれって感じで私は冷めてしまいました^^;

リュウの不器用な生きざまは結構好き?!

いろいろありましたけど、結構泣ける・・・かな。

 

タイトルは広瀬旭壮の漢詩の一節だそうです。

「花開萬人集 花盡一人無 但見雙黄鳥 緑陰深處呼」

花開けば万人集まり 花尽くれば一人なし ただ見る双黄鳥 緑陰深き処に呼ぶ

 

現代解釈がいろいろ書かれていて、どれもしっくりはきます。

自分に合う解釈がはまればいい漢詩に思って心に残るのかなぁ。

 

 

 

 

業を背負う男たち、奇蹟のロードノベル

 

 兄さん、今からあんたを殺しに行くよ――。 大阪ミナミでカレー屋を営む三宅紘二郎のもとに、ある日一通の絵葉書が届いた。葉書に書かれた漢詩に、紘二郎の記憶の蓋が開く。50年前、紘二郎の住む廃病院で起きた心中事件。愛した女、その娘、彼女たちを斬殺した兄……人生の終盤を迎えた紘二郎は、決意を固めた。兄を殺す、と。 思い出の旧車を手に入れ、兄の住む大分日田へ向かおうとする紘二郎の前に現れたのは、中古車店の元店長を名乗る金髪の若者・リュウだった。紘二郎の買ったコンテッサはニコイチの不良車で危険だと言う。必死に止めようとする様子にほだされ、紘二郎は大分への交代運転手としてリュウを雇うことに。孫ほど年の離れた男との不思議な旅が始まった。 かつて女と暮らした町、リュウと因縁のある男との邂逅、コンテッサの故障……道中のさまざま出来事から、明らかになってゆく二人の昏い過去。あまりにも陰惨な心中事件の真相とは。リュウの身体に隠された秘密とは――? 旅の果て、辿りついた先で二人の前に広がる光景に、心揺さぶられる感動作。2020年直木賞候補となり、いま最も注目を集める作家が贈る、渾身の一冊。 

 

【編集担当からのおすすめ情報】 

『雪の鉄樹』で本の雑誌増刊『おすすめ文庫王国2017』第1位、『冬雷』で「本の雑誌 2017年上半期エンターテインメント・ベスト10」第2位、第1回未来屋小説大賞 、『オブリヴィオン』で「本の雑誌 2017年度ノンジャンルのベスト10」第1位など、近年急速に注目を集める遠田潤子氏。2020年には『銀花の蔵』で直木賞初ノミネートを果たし、いま最も波に乗る作家の一人です。 最新作は、著者にとって初めてのロードノベル。真骨頂ともいえる、過去の翳を抱えた男たちの、時にユーモラスで時に心を切り裂かれる、濃密で熱い物語をぜひお楽しみください。