文楽に情熱を傾ける若手大夫の奮闘を描く青春小説。健は大夫の人間国宝・銀大夫を師匠にもつ。ある日師匠から、技芸員から「変わり者」と噂される三味線、兎一郎と組むように言われる。不安と戸惑いを覚えながら稽古に臨むが、案の定、兎一郎は全く違う演目をひき始める……。
今度は文楽です。
適当に生きていた高校時代。
主人公の健は修学旅行に行った大阪で、文楽の大夫の語りに心をぶん殴られる。
一発で文楽の世界に魅せられた健は、進学よりも弟子入りを選ぶ。
そして10年。
健の熱は冷めるどころか、全てを賭けて文楽に恋し続けている・・・・・・。
才能はあるのに特定の相方を持とうとしない三味線と組み、文楽を教えている小学生の母親と恋に落ち。
師匠の無茶ぶりに振り回され。
それでも全てを賭けて文楽の道を歩み続ける健。
住み家は友人の経営するラブホテルの一室を格安で借りている。
大声で稽古してクレームがつかないから・・・・・・まさに文楽馬鹿である。
で、まあ、文楽馬鹿にもいろいろと人生のあれやこれやはあるもので、芸一筋といえども逃れられぬ日常の心騒ぎとも無縁ではいられない。
なにせ生きているのだから、いろいろ・・・・・・ある。
あるが、そのいろいろが芸と無縁・・・・・・ということでもない。
芸能はヒトの心が紡ぐもの。
ゆえにヒトの心を打ち捨てては語れない。
文楽馬鹿も悩むのだ。
尋常でなく打ち込める馬鹿であるから、元々その業は深い。
芸に身を削り。
人との関わりに心を削る。
この道は修羅の道。
故に仏果を得ず。
ただ、どこまでも歩み続けるのみ。
と、まあ、そういう話ではあるのだが、これはなんと爽やかな求道であろうか。
そういう話を生き生きと、なと軽やかに語るのであろうか。
堅苦しくなく、実に楽し気に、面白可笑しく。
それが三浦しをん。
わかっちゃいるのだ。
なにせ、三浦しをんさんは小説に愛されているのだから。
やはり三浦しをんさんは、天才だと思う。
本当に面白かったです♪♪♪