銀の犬//光原百合 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
銀の犬 (ハルキ文庫)/光原 百合

¥777
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 「銀の犬」

 光原百合、著。 2006年


 英国・ケルト民族の伝説に題材を取った連作
長編。
声を失った楽人(バルド)・オシアンとその相棒
・ブランの物語。

 オシアンは竪琴の調べで、迷える魂を解き放ち
、境界を越え人に害をなす妖精などを異なる世界
に送り出す祓いの楽人。

 本来は歌と竪琴で祓いを行うのだが、彼は声を
失っている。
外見は美貌の青年に過ぎないのだが、どうやら、
実際には…。

 そのあたりは、たぶん、彼が声を失ったエピソー
ドと関わっているようだが、それは暗示されるに留
まる。

 相棒・ブランは、16歳の少年だが、何故か身も
心も10歳くらいにしか見えない。
10歳の時にオシアンに命を救われて、それ以後彼
と行動を共にしている。

 このブランの見かけも、どうやら、10歳の時の
事件が原因のように推測される。
二人は深く結びついているようで、声を失ったオシ
アンの言いたいことが、ブランにだけは伝わるよう
だ。

 オシアンは人に害をなす迷える魂を、竪琴の調べ
で説得し、魂の向かうべき場所に送り出す。
また、境界を越え災いをなす妖精を、異なる世界に
送り出す。

 彼の力をもってすれば、消滅させる方がたやすい
のだが、それでも彼は困難な道を選ぶ。
迷える魂の、苦しむ妖精の心を知るゆえに…。

          ※

 オシアンには言葉がない。
故に、祓いのシーンには透明感が漂う。

 しんと冷え切った蒼き月の光の元。
漂う透明で清冽な琴の調べ。
そんなシーンが心に浮かびました。

 これも、切なく美しい物語でした。
ぜひとも続編を書いてもらいたい作品。
とても面白かったです♪