肉食屋敷 // 小林泰三 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
肉食屋敷 (角川ホラー文庫)/小林 泰三

¥500
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 「肉食屋敷」

 小林泰三、著。 1999年


 暑いからホラー…、まあ、私は年中ホラーか…。
この、本は読友さんの記事で、総じて「いまいち」の声が

高いのですが、まあ、持ってるからとりあえず読んでおこ
うと…。

 しかし、そこは、読書は個人的体験。
読んでみると、面白かった。
まあ、怖くはないし、新鮮味も薄い。
けれど、ちょっとしたヒネリと作家の個性を楽しむ短編集
として、結構好きです。

 う~ん、読む人間によって、やはり感じ方の違いがある。
だから、読書って楽しいのですよね♪



 ジュラシック・パークに刺激された研究者が、6500万年
前の地層の中にあるDNAから地球外生命体を復元してしまう
「肉食屋敷」、西部劇をモチーフにゾンビの世界を描いた
「ジャンク」、人間の一途な愛が恐怖を生みだす「妻への三通
の告白」、自分の中にあるもう一つの人格が犯した殺人に怯え
る「獣の記憶」を収録した小林泰三傑作短編集。
 (帯より引用)



 「肉食屋敷」は、ちょっとクトルゥっぽいB級モンスター・
ホラー。 研究者もその研究所の屋敷も、実に胡散臭い上に、
チープ。 この、いかにも、って言う部分がそそります♪
 グロテスクで、小汚い感じが良い。
結末は、お約束通り。
一昔前の「トワイライト・ゾーン」っぽいのが楽しい。

 「ジャンク」は、世界観がこれまたB級っぽいけれど、この
設定には新味がある。 「ウエスタン・ワールド」って言う映画
があって、これはロボットなのだが、こちらは登場人物全てが
ゾンビ。
 ここにも、チープなグロテスク趣味満載。
オチは、秀逸だと思います。
作中の「ソイレントグリーン」なる食品も、映画「サイレント・
グリーン」から引用しているあたりがソソリます。
ちなみに、この食品、どちらも材料は人間。

 「妻への三通の告白」は、この妻が自分の妻なのか、友人の
妻なのか、精神に異常をきたしているのはどちらなのか…。

物語が不条理性を増してゆく。

 「獣の記憶」、これまた主人公が不潔です。臭そう…。
この主人公「二重人格」に悩んでいます。
「敵対者」と呼ばれる「人格」が彼を脅かす。
カウンセリングを受けたりしているのですが…。
 ついには、殺人事件にまで巻き込まれる。
さて、彼は「二重人格」なのか、何かの策謀に巻き込まれている
のか、サイコ・スリラーっぽい作品でした。

 私は、結構楽しめた短編集です。
先例を前提に、小林泰三味を楽しむ短編集と言えるかも知れない。
面白かったです。