重力ピエロ //  伊坂幸太郎 | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
重力ピエロ (新潮文庫)/伊坂 幸太郎
¥660
Amazon.co.jp


 「重力ピエロ」


 伊坂幸太郎、著。 平成十五年。



 最近、読む本の二冊に一冊が伊坂作品のような

気がします。 ・・・・・・伊坂祭り継続中です。

まあ、ハマっている訳ですが、どうも登場人物の

価値観への共感でしょうか・・・・・・。


 かなり、エキセントリックな人物であったり、それぞれ

歪であったりする訳ですが、それでも伊坂作品の主人公

たちは、周りからどのように見えようとも、「真直ぐ立って

いる」ような気がします。


 

 兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。

家族には、過去に辛い出来事があった。 その記憶を

抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。

連続放火と、家事を予見するような謎のグラフィティアート

の出現。 そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルール

の奇妙なリンク。 謎解きに乗り出した兄が遂に直面する

圧倒的な真実とは・・・・・・。 溢れくる未知の感動、小説の

奇跡が今ここに。

 (文庫裏表紙より引用)



 春が二階から落ちてきた。


 実に印象的な文章で物語は始まる。


 「俺たちは、最強の家族だ。」

と、父親は叫ぶ。


 「俺たちは、最強の兄弟だ」

と、弟は叫ぶ。


 家族が揃っていれば、俺たちは誰にも負けない。

彼らは、そう確信する。


 弟は、母が強姦された結果出来た子供だ。

その事実を知って、父は母にきっぱりと言う。


 「よし、産もう」


 「産むべきだ」では無い。

「産もう」と自分の事として宣言する。


 それぞれに苦悩はあるにしろ、この家族に迷いは

無い。


 「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

弟の言葉。

これは、伊坂作品の姿勢でもある。


 力に満ち溢れた物語です。

優しさに満ちた作品です。


 この家族は、誰かが罪を犯して、世界中が敵に

なっても、自分はその家族の味方だと大声で断言する。


 「おまえは許されないことをやった。 ただ、俺たちは

許すんだよ」

 と、兄は言う。


 一番大切な人を護るためなら、世界を敵にしても戦う。

せめて、心はそうありたいと私も思います。


 私にとっては、思うところの多い作品でした。

まあ、・・・・・・人生いろいろありますからねえ。

他人に自慢出来るよう人生でもなし・・・。


 この作品のセリフは染みます。

伊坂作品の中でも、私は本作と「死神の精度」が特に

好きです。


 作中に、デビュー作「オーデゥボンの祈り」のあの人が

サービスで少しだけ登場します。

きっと、伊坂幸太郎さんにとっても、それだけ思い入れの

ある作品なのでしょうね。


 やはり、まだまだ私の伊坂祭りは続くようです。