狂犬は眠らない // J.グレイディ | みゅうず・すたいる/ とにかく本が好き!
狂犬は眠らない (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 14-1) (ハヤカワ・ミステリ文庫)/ジェイムズ・グレイディ
¥1,050
Amazon.co.jp


 「狂犬は眠らない

  MAD DOGS 」


 ジェイムス・グレイディ、著。 2007年。



 実に面白かった。

良いですねえ、この作品!

文庫版653ページ、ぎっしりと面白さが詰まって

いました。



 スパイとして働きすぎて頭がいかれた5人組・・・

秘密の精神科病院に収容された元CIAのメンバー

は、各々ハンデをかかえていた。

ラッセルは音楽を口ずさまずにいられない、

ゼインは暑さに全く耐えられない、

ヘイリーは常に悲観的、

エリックは誰の命令にも服従してしまう、

ヴィクは時々フリーズする。

そんな彼らが病院で起きた医師殺しの真犯人を

見つけるべく脱走を決行!

薬がきれて暴走する前に真相に辿りつけるのか?

 (裏表紙より引用)


 全員がCIAのトップ・エージェントだった。

それぞれが、任務の最中に壊れた。

あるものは拷問で、あるものは任務の失敗で・・・。


 そして、それぞれが重要な情報を持ち過ぎているが

ゆえに、通常の施設ではなく、機密施設に収容された。

そこで起こった殺人は、彼らを犯人にするべく仕組まれたと

思われる状況だった。


 脱走して、真犯人と真相を明らかにする。

それが、彼らの決断だった。

期限は、推定一週間。

何故なら、薬の効き目が完全に切れて、彼らがクラッシュ

するから・・・・・・。


 この設定がなんともユニークです。

それでいて、これはユーモア小説やおバカ小説など

ではありません。


 れっきとした、ちゃんとした、まともな、超一級のミステリー

です。

それでね、その真相がまた・・・、うう、書きたい!


 5人全員の、過去。 つまり、それぞれが壊れたミッション

が途中で語られます。

これも、実に面白い!


 それぞれが、個性豊かで、人間らしく魅力的です。

ただ、壊れているけどね。

そんな事は、問題では無い!!

こいつら、最高です!!


 まあ、時に訳の解らない行動をとってしまうのが、

悲しいけれど、これくらい仕方ない。


 5人は、まるで家族のように信頼し合い、支え合い、

自分たちだけのミッションを遂行する。

「敵」は、他国の組織か? あるいは、「CIAの裏切り者」か?


 登場人物の個性と魅力。ドラマの面白さ。

アメリカの抱える闇と言うテーマ。

どれもこれも、実によく出来ています。


 付け加えるならば、その上さらに、三川基好さんの訳が

最高です。 残念ながら、この作品が遺作になったそうです。

この作品を推敲し終えて間もなく、病院で亡くなったと

云います。 心から、冥福を祈ります。


 本当に面白い。

そして、ラスト・シーンは感動的でした。

この作家の他の作品も読んで見たいと思っています。