こんにちは。

俳句のみろく堂オッドアイ猫家登みろくです。

花粉が、花粉がやってきましたよ…ずびずび。

 

まずはお知らせとか近況とか。

 

オシャレな猫生活マガジン「猫モフー」さんに

ねうねうの活動を取り上げていただきました!

あなたの俳句も紹介されているかも???乙女のトキメキ

猫しっぽ記事はこちらをクリック↓猫あたま

 

千住博のさんの「芸術とは何か―千住博が答える147の質問」より。

 

林望さんの「『芸術力の磨き方』 鑑賞、そして自己表現へ」より。

 

 

 

 

 

さて、今日も藤埜まさ志さんの第三句集「木霊」から、

第三章「青葉騒」を鑑賞します。

なお、まさ志さんは「俳句」3月号にも7句発表されてますキラキラ大活躍中!

 

 

姥捨や残雪雨に叩かれて

 

これは「楢山節考」の作者深沢七郎が、姥捨伝説を聞いたという

山梨県笛吹市境川町大黒坂を

「森の座」のメンバーで吟行したときの句だと思います。

 

あの日は弱くない雨の中を、野梅がひっそりと咲いていました。

解けそうで解けきらずに残っている雪へ、

追い打ちをかけるように降りそそぐ冷たい雨。

雨と雪の関係が、

老い先短い父母を口減らしのために冬の山へ置いてきたという

非情な行為に重なって見えます。

しかし、雨が降らねば春は来ないという葛藤も含まれています。

 

「姥捨」が強烈な言葉であり、

実際何を取り合わせても物悲しさが漂う作品にはなるでしょう。

しかし、まさ志さんは写生を通して、姥捨て伝説の無念さ・やるせなさを

しっかりと表現されています。吟行句でこのクオリティ。すごい。

 

 

 

雛壇の後の不思議男の子

 

分かる、この面白さ!

雛段のあの緋の敷物の下では

武骨でいかめしい材木や鉄ががっちり組んであるんですよね。

「雛祭りは女の子のお祭りなのよ」と言われ

ちょっと隅っこに追いやられ

手持無沙汰になった男の子は

キレイで可愛いお人形よりも

その舞台裏にあるちょっと暗くて不思議に興味がわいたようです。

お孫さんを見てつくられた句でしょうか。

それとも「まさ志さんご自身の経験?

いずれにせよ、雛祭りを正面からではない視点から描かれていて、

とてもグッときました。

 

 

 

朴落葉は銀の短冊千空忌

 

初冬、大きな朴の葉が落ち始めると、

いよいよ冬がやってくるなあという気持ちになります。

師の俳句が書いてある短冊をいただけるのは

俳人にとって最高のご褒美ですから、

朴落葉の中に立つと、短冊が降ってくるかのように

千空さんの俳句が頭の中にどんどんと浮かんできて

まだ千空さんがお側にいらっしゃるような…そんな気持ちになられたのだと思います。

4代目「萬緑」選者の成田千空さんが亡くなったのは2007年11月17日。

1953年に第1回萬緑賞受賞し、2004年、五所川原市名誉市民になられました。

青森高校時代の寺山修司の俳句指導を行なっていたことでも知られています。

 

 

 

一家並めて定点観測初写真

 

毎年正月に家族写真を撮影してるということを

「定点観測」と表現しました。

まさ志さんは、こういった「詩では見ない言葉」を

俳句に巧みに取り込んでしまうのが上手い方です。

昨今では写真は印刷物からデータに切り替わってしまい

我々はすでに「撮りだめて保管して、見る」という一連の行為から

やや距離を置いてしまっています。

撮るだけでなく、それをまた折々に見返すときに、

初写真はまさしく「定点観測」となるのですね。

この句で、初写真という季語の本意を再確認することができました。

 

 


人間期の地層は瓦礫月冴ゆる

 

はるか未来に人類が滅び、

後に人間でない誰かが地層の中に

人類が生きていた時代の形跡を発見したとすれば

それはまさしく「瓦礫」だろうということですね。

人間はとかく物を作り、捨てながら生きています。

そういった人間の経済活動を、冬の冴え冴えとした月の下に思い出すとき

人間の罪深さを思うのです。

ひとつの種がこれほどまでに地球を好き勝手いじくった時代は

長い長い地球の歴史の中で初めてのことです。

遠い未来に、この瓦礫の地層を見た者は、何を思うでしょう。

 

 

春雪の富士が正客能舞台

春しぐれ山盧の軒の竹箒

(※山盧は飯田蛇笏・龍太の暮らした自宅とその敷地)

春泥に来て老犬を羽交ひ抱き

 この羽交い絞めならぬ「羽交い抱き」もステキ!

脳の襞このごろ平らの蜷(にな)の道

裸馬へ少女ひらりと夏の雲

月と星あぢさゐ真青に染め上げて

網目断ちメロンの香気解き放つ

秋の声所作を揃へて射手四人

捧腹絶倒するかの茸群れ出でて

一揆のごと案山子集まる棚田かな

 

 

まさ志さんの俳句はいつも私のお手本です。

十七音を言訳にしない、ことばとこころの集約された作品群にいつも圧倒されています。

 

次回も「木霊」より

4章「十一月の雪」を鑑賞します。