こんにちは!

俳句のみろく堂オッドアイ猫家登みろくです。

前回の更新から時間が経ってしまいましたアセアセ

なんだか長らく暗い沼の底におりまして…バイキンくん

 

まずはいつもの近況報告など。

 

 

↑この中の、藤埜まさ志さんの句、

正しくは「寒禽や仏彫り出すチェンソーでした。

大変失礼いたしました。

 

 

ちょいちょい誤字っててお恥ずかしい…

Twitterは投稿した内容の修正ができないので、

後から気づいて「あっ…ああ~」となります…。気を付けねば…宇宙人くん

 

 

前回に引き続き、

藤埜まさ志さんの第三句集「木霊」を鑑賞いたします。

今回は第二章「爆心地」からご紹介いたします。

 

 

実は(でもないけど)、ワタクシ、昨年は長らく俳句スランプで、

だるだると伸び切った句を多く作っていました。

それで、最近その蛇行した道の出口がやっと見えてきた気がしたのですが

そのきっかけは奈良比佐子さん・藤埜まさ志さんの

「萬緑・森の座」同人の作品にたくさん触れた、ということだったかなと思うのです。

 

ある一つの発見に対して、それをただ五七五にまとめるのではなく、

そこにもっとディテールを描いていこう、

もうひと要素入れたようという貪欲さ。

その過程で徹底的に省かれた無駄。

 

あっ、そうだ、私が作りたいのって、こういう俳句だ。

一年間、あちこちをぶらぶらとしているうちに忘れていたことを

思い出したような気がしました。

 

 

オムライスに立つる艦旗や呉は春

 

オムライスに旗が立っていると聞けば、

少し古いイメージかもしれませんが

子どもがレストランで喜んで食べているイメージ。

卵のあたたかな黄色と、ケチャップの赤が織りなす

鮮やかさに、幸せな家族のワンシーンが思い描かれます。

 

その黄色いお山の頂にそびえる旗は、艦旗です。

呉市と言えば戦艦大和ですね。

呉の海軍工廠で起工された大和は最大最強の戦艦と言われ

日本海軍の象徴的存在でした。

 

彼らの旗は、いまは「幸せの象徴」のオムライスにあります。

呉の造船場に、春がまたやって来ました。

あたたかな日差しが、オムライスのお山を照らします。

戦争の犠牲となった大和の乗組員たち。

彼らが望んだ平和の光が、今は呉の街を包んでいます。

 

 

まるで月面廃寺にあまた蟻地獄

 

「まるで月面」と欲もなく言いきったところに、

まさ志さんの凄味を感じます。

廃寺に蟻”地獄”と言われると

格好のモチーフ!とついつい詠みたくなるのが俳人のようですが

その俳句はだいたい類句…(と、「こもろ日盛俳句祭」で誰かが言っていたな~。)

 

しかし!蟻地獄がクレーターのようだなんて、思いもしませんでした。

極楽や地獄を描くよりも、ずっと夢がある発想かもしれませんね。

たくさんの蟻地獄を見て、こころが宇宙に飛んでいくなんて

すごい!というか、羨ましい!私もこんな楽しい発見がしたい!

ちなみに、月面は大気がほとんどないため、赤道付近で昼は110℃、夜は-170℃と

まさに地獄のような世界だそうです。

わーお。

 

 

日盛りや生垣粗く街の老ゆ

 

少子高齢化に、大都市への一極集中による人口減少、過疎化…。

地方に元気がなくなっていることを、

地方在住の身として私も痛感しています。

その様子を「街が老いる」とは言い得て妙。

どうなってしまうのだろうという不安と

どうすることもできない諦めと、

それでもどうにかならないものかという願いが入り混じった複雑な気持ち。

ぐっと老いてしまった親類に会った時の気持ちに似ています。

 

日盛りの太陽も、容赦なく照り付けます。

生垣が「粗く」なるという表現も、あまりにも言い得ていますね。

伸び放題の生垣の葉は雨に汚れ、

ムラのある茂り方に、生垣の隙間がやたら目立って

重ね重ね、寂しい。

日本人の美意識とは「絶対的な原理原則による美」ではなく

「状況の美」に働くと言いますが

この句の状況、まさしくという感じですね。

素晴らしすぎて、ため息…。

 

 

南天の眼残して兎消ゆ

 

私のような凡人は「雪兎お目目残して解けていく」とか、やりそうなわけです。

これですと、景は浮かぶけど「だからなんだ」という

『ただごと』止まりなんですよね。(自戒)

 

雪兎は、目を残して、いなくなってしまったよ、

あっという間のことだったよ…

雪兎にも命があったかのように、

消えてしまったことを惜しんでいる。

太陽が雲間から出てきたせいで、天に昇ってしまった白い兎。

まさ志さんの句には、童謡を聴いているような、

物悲しさが溢れています。

 

 

その他、もう本当に名句ばかり…。

 

柳絮激し地に転々と毬なせる

調教の人馬恋して若葉風

萬緑や木霊言霊跳び交ひて

大小のなき万国旗青嵐

青林檎剥くメビウスの環の表裏

真上より秋気降りくる杉襖

文の束足して枯菊燃え立たす

枯木立付け火するかの大落暉

石舞台寝釈迦とも見て鳥渡る

柿切れば種に真白き祈りの掌

いのち継ぎ襤褸の鮭の流れ行く

 

 

一語一語がかっこよすぎて…

読んでいて、胸が苦しいです。

この域に達したい…

句が素晴らしすぎて

私のコメントが完全に蛇足ですが(いつものこと)

次回は「木霊」第三章「青葉騒」を鑑賞します。

 

みろくでした!猫