昨日、さいたま市へ行った。
この折、JR東大宮駅前にあるやぶそばで、昼食を済ませた。
12時50分に入店すると、先客は男性4人だけだった。
客の1人のお爺ちゃんは、日本酒を飲みながら、蕎麦が出て来るのを待っていた。
客が少ない。
その上、昼間から呑気に酒を飲んでいる老人がいるから、店内は緩やかに時が流れているように感じられた。
お品書きを見て、850円のカレーうどんを注文した。
数年前、この蕎麦屋でカレーうどんを食べたら、美味かった。
それで、(また食べてみよう)となったのだ。
カレーうどんは、注文から10分ぐらいで出て来た。
食べてみると、うどんは細く、ツルツルしていた。
麺は軟らかいのだが、コシもちゃんと感じられる。手打ちの良い面が出ていた。
汁は香辛料の辛味に、カツオ出汁の甘味がある。それから弱いとろみがある。
数年前食べた時同様、美味しかった。
この店にいる時、気になった事があった。
日本酒を飲んでいたお爺ちゃんが、呆けていたのだ。
お爺ちゃんは帰り際、テーブル席に座りながら、日本酒とざるそばの金を、女将らしい女性店員へ払った。
金をもらった店員は、一旦、調理場へ引き揚げた。
すると、お爺ちゃんは、再び彼女を呼んだのだ。
そして言う。「これでいいんだよね?」
「?」彼女は、お爺ちゃんの言う意味がわからない様子。
「自分が払う金は、幾らだったっけ?」とお爺ちゃん。
彼女は、「1750円です」と答えた。
「それを、今から払えばいいんだ?」
彼女は、困惑した表情を作り、「いいえ。お金はもういただきました」と返した。
お爺ちゃんは、金を払った事を、わずか数十秒で忘れてしまったのだ。
「おつりは、幾らだっけ?」とお爺ちゃん。
「250円です」「おつり、もらったっけ?もらってないような気がするんだけど」
彼女は、キッパリ答えた。「いいえ。もうお渡ししました」
お爺ちゃんは、これでようやく納得し、店を出て行った。
このお爺ちゃんは、重度の認知症なのだろう。
私の母親も晩年は、重度の認知症であった。
私はそれで、ずいぶん苦労させられた。
母親は、同じ話を一日に、30回もした事があった。
聞かされる側は、ストレスががんがん貯まる。
(あのお爺ちゃんの家族も、今苦労してるんだろうな)私は、そんな事を思いながら、金を払い店を後にした。
やぶそば
住所 埼玉県さいたま市見沼区東大宮4-18-8
●アクセス JR宇都宮線東大宮駅西口より、徒歩1分