先日、アカデミー賞の授賞式があった。
2023年度のアカデミー賞では下馬評通り「オッペンハイマー」が圧勝した。
作品賞、監督賞、主演男優賞など7部門を制したのだ。
これは、「戦場にかける橋」や「アラビアのロレンス」「シンドラーのリスト」と同じ数。
アカデミー賞で、多くオスカーを獲得した映画は、名作扱いされるのが普通だ。
「オッペンハイマー」も、名作として讃えられ続けるのだろう。
これは、アメリカの理論物理学者ロバート・オッペンハイマーの栄光、葛藤、苦悩、没落を描いた伝記映画である。
オッペンハイマーは、「原爆の父」と言われた人。
つまり、彼は原子爆弾を作ってしまった人である。
映画「オッペンハイマー」は、2023年7月にアメリカで公開された。
3時間を超える上映時間、しかも難解なシーンもあるのに、ヒットした。
しかし日本での公開は、しばらく決められなかった。
そりゃそうよなあ。
日本人からすると、原爆が誕生するまでの過程を描いた映画を見たって、気持ち良いもんじゃないもの。
この映画を真剣に見れば見るほど、複雑な思いにとらわれるのではないか?
日本の配給会社は、公開していいのものか、迷ったのでは?
アメリカで、「オッペンハイマー」を鑑賞したある日本人は、やはり違和感を感じまくった、という。
「オッペンハイマー」は、長崎、広島へ原爆を投下するシーンが出てこないそう。
また長崎、広島の惨禍や、苦しむ被爆者は、描かれない。
もっぱらオッペンハイマーの内面を見つめた映画らしいのだ、これは。
それゆえ、アメリカで鑑賞した彼は、こう批判する。
「被爆者の苦しみより、原爆を作ったオッペンハイマーの苦悩の方が、大きいように見えてしまう。違和感を覚える」と。
映画「オッペンハイマー」は、今月29日から遂に日本でも、上映される。
アカデミー作品賞を獲得した為、映画館へ足を運ぶ日本の映画ファン、映画関係者も、多くなりそうだ。
題材が、オッペンハイマー博士でも。
もし、見て違和感を感じたのなら、日本こそ「オッペンハイマー」を超える原爆がテーマの映画を製作し、世界中の人に見てもらうよう、努力するべきである。
唯一の被爆国として、原爆の惨禍を伝えるのは、日本の使命であろう。
アメリカの映画人が描きにくいところも、日本の映画人なら描けるわけで。