欧米では、黒猫は不吉の象徴とされている。
「朝、黒猫を見ると悪い事が起きる」「黒猫が行く手をさえぎると不吉」
「黒猫が家に入ってくれば、不幸が起きる」
などの迷信がある。
だが5世紀から14世紀にかけて、黒猫は、むしろ「幸運のシンボル」とされていた。
当時、エジプトの猫崇拝が、ヨーロッパに伝わり、猫は色にかかわらず、大切に扱われていた。
特にイギリスでは、猫を保護する法律まであった。
当時、ペストが流行していて、その元凶になるネズミを退治してくれる猫を大切するのは、実利的な意味もあった。
しかし、猫を大切にし過ぎたため、街中にはノラ猫があふれるようになった。
すると、猫の人気は急激に、下降した。
そこへもってきて、ヨーロッパには「魔女狩り」が広がった。
独り暮らしの老婆たちが、魔女に疑られる事も多かった。
そんな彼女たちは、猫にエサをやったり、飼う事も多かったから、
「黒猫は、魔女が夜、町をうろつく時に、変そうした姿だ」
「黒猫は悪魔の使いだ」
などという俗信が、広がっていった。
この為、20世紀に入る頃まで、黒猫は、「悪魔の使い」と言われ、ひんぱんに命を奪われていた。
今は、動物愛護の心が人間に広がり、黒猫も幸せになったものである。
こういった話を考えるに、世の中で最も怖いのは、「人の心」だとわかる。
自分たちが都合よく使う時は、黒猫を大切にするくせに、いらなくなると、こんな風に迫害するのだ。