明るい若い女性の正体は・・・ | 話のコレクション

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食べ歩き、旅行、散歩を中心に記事にします。が、それらに行けぬ時は、古今東西の興味深い話を記事にします。

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 私が若い頃、日本テレビ系列では、「あなたの知らない世界」を放送していた。これは超常現象を特集した番組。この番組では、再現ドラマがことに好評だった。
 
 再現ドラマは、視聴者から寄せられた体験談を基に制作していたから、怪奇話でもリアリティーが感じられた。
 再現ドラマは、恨みを晴すため霊が出て来る、旅行者が偶然宿泊した旅館、ホテルに霊が出て来るといった、おどろおどろしい話が多かった。
 
 しかし、ごく一部は、ハートウォーミングな話だった。
 
 ●確か、こんな話もあった、と記憶している。
 
 東京に、あるサラリーマンがいる。
 この男は、何をやっても上手くいかない。
 会社が休みの日、とうとう自分の命を絶とうと、自宅を出た。
 
 あてどもなく、彷徨っているうちに、着いた先は、首都圏にある河原だった。
 そこは、神奈川か?千葉か?埼玉か?
 具体的な場所は、ドラマでは明らかにされなかったが、東京から近い割りに、自然がまだたくさん残っていた。
 
 この男は、河原にあった岩に座り込んだ。
 そして、目の前にある川を眺めつつ、睡眠薬を飲んだ。
 男の意識は、どんどん薄らいだ。
 (これで、この世とオサラバ出来る・・・)
 
 
 
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男がふと気がつくと、彼の顔を覗き込んでいる若い女性がいた。
(これは、どうした事だ?!俺は、睡眠薬を飲んだのに、死にきれなかったのか)
 
若い女性は、「ふふふふ・・」と笑いながら、男に話しかけてきた。
「おじさん、こんな所で、何やっているのよ?」
 
男は、ドギマギしながら、「い、いや、ここで休んでいただけだよ」と返した。
「おじさん、本当?」
「本当だよ」
 
若い女性は、クスクス笑って、「本当に、そうかしら?」
「いや、本当だってば」
 
男は、「ここで命を絶つつもりだった」とは、さすがに言えなかった。
 
ずっと屈託なく、笑っていた若い女性だったが、急にしんみりとした表情を作った。
そして言う。「おじさん、世の中には色々つらい事があるけど、死んだらだめよ。約束してくれる?」
「ああ、わかったよ」
「じゃ、指切りげんまんしましょう!」
 
2人は、指切りげんまんした。
 
 
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・・・と、ここで、男は目が覚めた。
さっきの若い女性は、側にいなかった。
 
しかも、睡眠薬を飲んだのは、午前中だったが既に夕方になり、河原の周辺は暗い。
若い女性と会話した時は、真っ昼間だったが、これはどうした事か?
 
(ああ、そうか。睡眠薬を飲んだが、致死量に達せず、俺は死ねなかったんだ。寝ている間、若い女性が出て来る夢を見ていたんだ)と、男は悟った。
 
男は、ふと自分が腰掛けていた岩の脇を見た。
すると、花瓶が置いてあり、それに花が差してある。
 
ここで、亡くなった人がいるらしい。
 
男は、こう思った。
(女の子は、きっと、ここで亡くなったんだ。そして、自分みたいに死んではだめよ、と幽霊になって現れ、俺を励ましてくれたんだっ!)
 
そう思うと、男には生きる勇気が、ふつふつと沸いてきた。
(励ましてくれた女の子の為にも、俺は生きないと!)
 
男は、(今後も生きよう!)と決心し、自宅へ引き返した。
 
この再現ドラマは、大筋こんな話だったと、覚えている。
男と若い女性との会話は、一語一句合ってはいないだろう。
が、だいだいあんな感じであった。
 
幽霊が、生きた人間の命を救う。
怪奇ドラマにしては珍しく、心温まる話だったので、私の脳裏に焼き付いた。
これは、実話だという。
「あなたの知らない世界」に、体験談を送った男性は、今も健在だろうか?
この再現ドラマを見たのは、40年~50年前。
当時、男性が中年だったら、今も生きていて不思議でない。