江國香織×金原瑞人 対談 を聴いて | 英検1級のその先へ

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翻訳の仕事ができるようになったものの、やればやるほど奥が深い英語道。映画を字幕なしで8割以上理解できたり、英語の本を日本語と変わらないレベルで読めるようになることを目指しています。

7月22日(日)世田谷文学館にて、記念対談「江國香織×金原瑞人」を聴きに行きました。


同館で開催中の「宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文展」の関連イベントです。


大学生の頃よりの大ファンの江國さんを初めて目にするということで、胸の高鳴る思いで向かいました。


前列に座れて、江國さん、目の前です!


黒い七分袖のカーディガンに白シャツ、ジーンズはゆるめシルエットでロールアップ、黒いサボっぽいミュールにベージュのワンハンドルの大きめショルダーというスタイル。


手首に、カルティエの時計、リングはシルバーでアートっぽいデザインものを両手にされています。

雰囲気あって、おしゃれです!


開口一番、「お客さんが入って下さっててよかった~ 日曜日なので、、」とおっしゃっていました。


金原さんもご自分のバッグを持ってTシャツジーンズとカジュアル、お二人は10歳違いですが、同年代にみえました、金原さんのほうが年上ですが、青年のような若々しさ。


お話は、金原さんがリードするかたち。

「岩波少年文庫なんて、小学生の時よんだことなかったなー」

「いい子が読むこういう本は敵だと思ってた」とざっくばらん。


お二人は既に何度も対談されているとあって、気心しれた様子。


宮崎さんが選んだ50冊の中で江國さんの好きな本


→「バンビ」「ふくろ小路一番地」「くまのプーさん」「森は生きている」だったと思います。


好きな本を選ぶのに4時間も費やしてしまいました、と笑顔でおっしゃっていました。


金原さんは「西遊記」しかないくらい「西遊記」が好きだったとのこと。


金原さんは、英語を日本語に訳すときの工夫(英文で出てきている順に訳す、後ろから持ってきて訳すと、原文とは見える順番が違ってくるから)など、翻訳家ならではのお話をされていました。


翻訳に関して、江國さんも、原書ではCry, Exclaim, Say, Screamなど違う言葉で何度も「言った」という内容を表しているけれど、日本語でいちいちそれをきちっと訳すと、違いが際立ちすぎてしまうので、あえて「言った」とするときもあるとか、お話されていました。


金原さんもそれについては、英語では繰り返し同じ言葉を使うのを避けるので、違う単語で言い換えてくるけれど、原作者はそこまで、全部違いを意図しているかというと、そうでもないのでは、ということをおっしゃっていました。


お二人とも、子供にとって本がいつでも手に取れる環境にあるのはとてもよいこと、とのご意見。


たとえ読まなくても眺めているだけでも「功徳」がある、背表紙を眺めて読むだけでも価値あるのでは、と江國さん。


電子書籍については、金原さんは肯定派のようでしたが、江國さんは、便利な部分は認めつつも、たとえば背表紙を眺めることも電子版になったら、ちょっと・・・ということをおっしゃっていました。


そのほか江國さんお薦めの本


「植物たちの私生活」(韓国の作家の翻訳本)

「太陽の東・月の西」(北欧の民話集)

「隊商  キャラバン」(ドイツ作家の物語集)(岩波少年文庫)

「時の旅人」(岩波少年文庫)

「チムラビットの冒険」(石井桃子訳)


がでてきました。


最後に聴衆からの質問コーナー。


お客さんは女性が8割、男性は主に付添できたような人が多かったと思います。

20代前半~80歳くらいの女性もいらっしゃいました。

予想より、年配、私の母くらいの年齢のかたが多く、少し意外でした。


質問はたくさん出ました。覚えているものを書きます。



Q今までの読書経験が執筆にどのように影響されているか。

  →自分でも気づいていないけど確実に影響されていると思うし、盗作じゃないかと心配になるときもある。


Q江國さんの小説には亡霊や幽霊が出てくることが多いか、それらを信じますか。

→真顔でじーーっと考えた末に笑顔で「半々です」とのこたえ。


Q映画で「第九軍団のワシ」をみましたが、映画と原作は違いますか。←宮崎さんの50冊にこの本が出ているので、質問されたと思います。

  →金原さん、だいぶ異なるから原作を読んだほうがいいとのこと。


Q児童文学を訳すとき、何にウェイトを置いているか、気を付けていることはあるか。


  →子供向けだからといって、特にそれ用にどうこうということはしていない、むしろしないようにしていると両者お答えに。


Q(江國さんへの質問)「いしいももこさんを意識したのはいつか、どのように影響を受けたか」。


←生まれたときからうさこちゃんシリーズがあった。意識しはじめたのは、子供のころ本を選ぶとき、

「いしいももこ」と書いてある本は面白い、と自分のなかで目安にしはじめたころ、とのこと。


幼いころは、自分イコールうさこちゃん、と思っているくらいだったとのこと。


「今も思ってるの?」と金原さんからの質問。江國さんは、さすがに今は違いますとおっしゃったところ、「そうだよね、たばこ吸って咳き込んでるうさこちゃんいないよね(笑)」との金原さんのご指摘が(笑)。。


Q江國さんの作品の中で「ひひとして」雪がふるという文章があって、それにすごく驚いた、言葉を選ぶときの決め手は?(といったような質問だったと思いますがうろ覚えです。江國さんの回答もよく覚えてません・・)


Q「冷静と情熱の間」に出てくる「ゴリア飴」とはどこで手に入るのか?

← 「え?なに? ・・・・・おぼえてないです・・・(笑)。」

  自分で飴の名前を作るということはしないと思うので、多分、現地で取材していたときにスーパーで買ったものであるとか、だれかが持っていたものだと思います、との回答。

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その他、バラバラですが、対談の中でおっしゃっていたこと、メモがわりに書いておきます。


江國さんの発言


・小説が、韓国で多く翻訳されている、韓国語はわからないけど、たくさん買っていただいたのはきっと、翻訳がとてもいいからだと思うので、訳者さんに感謝している。


・男の子むけの児童書、宝島などは二十歳ごろに初めて読んでみて、「とっておいてよかった」と思った。


・金原さんが、「男の子はそんなに小学生のとき本なんか読まないのでは」と言ったとき、自分の周りの男の子たちは、自分の周りの女の子たちが育てているからか、きちんとしているというか、女の子っぽいというか、読書もするし、わたしに会っても「おばさん」とは言わなくて「おねえさん」と言ってくれる(笑)、あ、それは関係ないですね。


・翻訳するときは、楽しくて夜おそくてもどんどんやりたい。「なに」を書くか、ということが翻訳の際は、すでにそこにあるから。


・小説を書いているときは、「たたかう」気持ちでいる、翻訳のときと違って苦しみながらやっている。



・マドレーヌちゃんのシリーズについて  

 (今はもともとの作家のお孫さんが書いていることや、そのほかマドレーヌちゃんはお好きなようでよく出てきました)


・「ことばが好きなんですね、きっと」とおっしゃっていたのも印象的。



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対談の内容は多岐にわたって、話の流れでいろいろな話題が飛び出し、一言一句が興味深く、一時間半があっという間でした。


小説だけでなく、翻訳、児童文学など好きな分野の話を好きな作家さんから聞けて、至福のひとときでした。


色々インスパイアされることがあり、好奇心が刺激されました。こんなに楽しいとは、自分でも驚きです。


いつかこのような機会がまたあれば、何をおいても駆けつけたいと思います。