初・シアターミラノ座。

「おどる夫婦」を観てきました。

ロビーにあるスクリーンに動画が流れていて、
開場前、たくさんの人が写真を撮っていましたが⋯

一人一人出演者が映し出され⋯






何と言っても松島聡さんが映し出された瞬間のシャッター音がすごかった!



大学の演劇サークルで出会った、不器用な二人⋯ヒロヒコとキヌが夫婦になり、少しずつすれ違っていく⋯10年の物語。
そもそも最初から、強く惹かれ合っていたわけではなく、それでもお互いが理解し合えると思って結婚を決める。
実家が震災に遭って母を亡くしたヒロヒコ。
何もかもなくして生活も上手くいかないヒロヒコの父。
両親は離婚し、支配的な母の存在に悩むキヌ。
脳炎の後遺症で短期記憶に障害をもつキヌの弟ミツヤ。
それぞれがうまくいかず、仕事も思うようにいかず、徐々に溝が深まっていく。
開演の10分前くらいに、おもむろに森山未來さんが舞台上に現れ、ソファに座ってノートに何かを書き留めたり眠ったり⋯、いつの間にか物語が始まっている?
私はバルコニー席だったので結構よく見えて、びっくりしたのだけれど、客席の人たちは気付かない人が多く、ざわざわしているのが面白い。
そして次々と登場人物がステージに現れる。
ストレッチとかしていて、舞台稽古を始める⋯という雰囲気。
最後に聡くん登場。爽やか。
長澤まさみさんと森山未來さんが台本を持ってセリフを読み始め⋯、そしていつの間にか実際の芝居に入っていく⋯。
それぞれのズレを描き、シリアスなストーリー展開で、言い争うシーンも多いのだけれど、皆川猿時さんが演じるいくつかの役がとてもユーモラスで笑いを誘う。
猿時さんの存在感、すごい。
長澤まさみさんはスラッとしていて美しい!
森山未來さんはひねくれた雰囲気の役がはまっている。
そして、記憶に障害があるため毎日の出来事を常にメモする聡くん演じる弟が、真っすぐで癒しの存在。
でも、自分のその状態に苦悩して号泣するシーンが何度かあったのですが、聡くん、本当にボロボロと大量の涙をこぼし、ポタポタと床に落ち⋯、迫力⋯。
そして鼻水が5センチくらいたれてきて、大変!⋯と思ったらズズッとすすって戻る⋯というのが何度かあって⋯。
迫真の演技のシーンなのに鼻水が心配になってしまい⋯、そしてよく戻った⋯と驚いて⋯、いや、気が気ではなかった!?
それにしても、聡くんは、立派に役者さんでした⋯。
あんなに感情を出し切った演技をして、クタクタボロボロになるのでは⋯と、心配になってしまいました。
舞台のセットはシンプルで、回転する床が場面の変化を感じさせていました。
そして登場人物9人分の椅子がとても重要な役割を果たしていました。
森山未來さん演じる役の母親が津波で亡くなってしまった原因としても、椅子、というのがポイントになっていたし。
最後は一人一人が自分の椅子を持って舞台から去っていく⋯という演出。
夫婦の10年が描かれているのですが、2人は震災をきっかけに結婚し、その後の1年1年を表現するのに、その年の自然災害と被災者の数が後ろのスクリーンに映し出され⋯御嶽山噴火も登場してちょっと切なかった。
最後はコロナ⋯。
そんな自然のどうにもならなさと、人間関係や仕事上のどうにもならなさも重なって、切ない結末に向かう雰囲気の2人⋯。
別れの気配しかない⋯と言うキヌ。
先手を打ったつもりで結婚したはずが、踊らされていた⋯と最後に話す2人。
そして、踊ろう⋯と、踊りだす2人。
幸せ、というものが分からないと言いながらも、だいたい舞台のカーテンコールというのは幸せで終わるものだ⋯というようなやりとりが前半であったのですが、最後に踊ったあとに、これがカーテンコールならいいと思った⋯とキヌが言い、伏線を回収するような終わり方で、最後は希望を感じさせてくれました。
森山未來さんの主演で、「踊る夫婦」というタイトルだから、てっきり森山さんのダンスが見られると思っていたら、全くダンスの要素はなく、ちょっとがっかりしていたら、最後に2人のダンスが見られて良かった。
一つ一つのシーン、セリフが強く印象を残す舞台でした。