山崎ナオコーラ「可愛い世の中」 | 虹がでたなら

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本はいつも持ち歩くので、基本的に文庫本で買います。
それも、お風呂で読むので、濡れても気にならないように(うとうとしてよく落とす)、古本で安くなるまで待って買っています。
それでも話題になっている本は単行本で買うこともあるのですが、それが面白くなかったりするとかなりがっかり…。
今読んでいる本がまさにそうで、読むのが辛くなってきたけれど、でも、もったいないから読まないと…。
がっかりする本というのは、文章が美しくない…。
その点、山崎ナオコーラさんの小説は言葉が美しくて好きです。

そしてこの「可愛い世の中」は、古本で買ったもので、何度かお風呂で沈みかけました…。
フニャフニャになってしまった。
4人姉妹の次女、豆子は、見た目も性格も地味なOL。
とても個性的。
社会に生きていること、社会に貢献することを大切に考えている。
社会貢献するために結婚し、社会を存続させるために子供を産みたいと考える。
そして、鯛造というほんわかした男性と出会い結婚を決める。
貯金もなく結婚式も考えない鯛造に対して、豆子は全部を自分が出すからと結婚式を決める。
しっかりお金を稼いできた豆子だったが、結婚式の準備でどんどんお金がなくなっていくことに愕然とする。
全ての費用を出した結婚式だったのに、豆子はその式を台無しにしてしまう。

きつい…。
独自の価値観をもち、真っ直ぐにそれを貫くために失敗もしてしまう豆子。
それでも、大学時代の友人と香りのビジネスを起こす決断をする。
男性の友だちを、男女ではなく人間としての信頼関係に基づいて、人生を切り開くパートナーとする…。

不器用な豆子は決して一般的な可愛げのある女性ではないけれど、可愛くなれる人がうまく生きていく中で、つまずきながらも自らの価値観を大切にひたむきに生きる姿は、ある意味とても可愛いのでは。