道尾秀介「鏡の花」
第1章「やさしい風の道」
かつて姉を失った、章也という少年の立場から描かれた物語。
第2章「つめたい夏の針」
弟を亡くした姉、翔子の立場から描かれた物語。
第3章「きえない花の声」
事故によって夫を亡くした栄恵の立場から描かれた物語。
第4章「たゆたう海の月」
息子を亡くした瀬下栄恵と夫の立場から描かれた物語。
第5章「かそけき星の影」
瀬下家の嫁となる葎と、翔子・章也姉弟との出会いの物語。
第6章「鏡の花」
ここまでの登場人物が、ある民宿で出会う物語。
大切な人を亡くした悲しい物語が描かれ…、すると次の章では、逆の立場の人が亡くなったという設定で描かれる。
独特な構成の物語。
親しい人を亡くした喪失感が辛いのだけれど、
最後の章ではそれぞれの登場人物、家族がつながりあい、光に包まれる。
最後はファンタジーのように美しい描写で終わる。
どこまでが本当でなにが真実なのか。
「いまが夢でも、夢じゃなくてもいい。
こんなに綺麗なのだから、もうどちらでもいい。」
「こんなに綺麗な場所は、ここにしかない。
こんなに眩しい場所は、ここにしかない。」
ままならない人生のなかの一筋の光に導かれるように物語が終わる、なんとも不思議な読後感。