誉田哲也「あの夏、二人のルカ」 | 虹がでたなら

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誉田哲也「あの夏、二人のルカ」
離婚して名古屋から東京・谷中に戻ってきた沢口遥。
その谷中で「ルーカス・ギタークラフト」というギターの修理店を営む乾滉一。
そして、女子高生でバンドを組んでいるクミ。
三人の視点から物語が描かれていく。
この三人が徐々につながっていく…。

遥と滉一が、少しずつ信頼を深めていく様子も微笑ましくて素敵だけれど、ドラムを愛するクミが仲間を見つけてバンドを作っていく過程がとてもワクワクする。
ギター、ベースを担当することになった友人たちの頑張り、バンドを応援してマネージャーのような役割を果たすルカの健気さ…、応援したくなる。
そしてそこに加わるミステリアスなボーカルのヨウ。
演奏も歌も、そして曲作りにも天才的な力を発揮するヨウ。
ヨウやバンドが周りを魅了していく様子に引き込まれる。
かすかに漂う終わりの予感があるからこそ、引き立つ煌めき。
それぞれの思い、夢、願い。
自分も相手も大切にしたいと思うからこそすれ違ってしまうこともある。
そんな青春真っ只中の、ちょっと切ない別れと、その後の出会いの温かさ。
昔の友だちのことを思い浮かべ、また会うことはあるのかな…?と、考えてみたりして。