佐藤正午「月の満ち欠け」 | 虹がでたなら

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佐藤正午「月の満ち欠け」

一ノ関への往復で読んだ本。
最後のシーン…、電車の中で危うく泣きそうになってしまった。
温かい気持ちで終わる、素敵な小説だったな。
直木賞を受賞した小説だったとは知らなかった。

(小説の中でのシーンはここから始まるのではないのだけれど)
レンタルビデオ店でバイトする三角は、ある日、店先で雨宿りをしていた年上の女性、瑠璃と出会う。
また会いたくて、探す。
映画館に通う。
そして再会する。
別れがたくてどこまでも一緒に歩く。
瑠璃は人妻だったけれど、2人はひかれ合う。
「誰かのことを考えて電車を乗り過ごしてしまうほど、それほど恋しい気持を抱いている人がいるとしたら、その人は幸せだと思う。その誰かに選ばれたあたしも幸せだと思う。……今後、たとえふたりが、会えば会うだけ不幸になっていくのだとしても、会っている時間は、生きている人なら誰もが経験できるとは限らない、ざらにはない、貴重な人生の時間だと思う。」
そんな2人が切ない…。
そんな思いを抱きながら、瑠璃さんは突然亡くなってしまうのだから…。
そして、「月の満ち欠けのように、生と死を繰り返す」…と、宣言していた通り、瑠璃さんは違う女の子の姿になって現れる。
何度も。
三角と会うために…。

小説の中では、時代が行ったり来たりしながら話が進んでいって、瑠璃が生まれるいくつかの家庭も描かれ、こことここがつながる!?…と思いながら、どんどん引き込まれて行きました。

そしてこの物語が映画化されるそうなのです。
有村架純さんと目黒蓮さん!?
ちょっと小説のイメージより美しすぎるのでは?…と思わなくもないけれど…。
「自分がやるべきだ」と運命を感じた…という目黒さん。
三角が目黒さんみたいな人だったら、何度でも生まれ変わって会いたいと思うかも!?

本の帯のところに、「生まれ変わっても、あなたに逢いたいー」…と書いてあるけれど、これは小説とはニュアンスが違うと思う。
「生まれ変わってでも、あなたと逢いたい」
「生まれ変わりたい、あなたと逢うためにー」
…くらいの思いではないでしょうか?