瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」 | 虹がでたなら

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瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」。
タイトルを見て、陸上部の話?…と思ってしまった…。
私は高校時代、陸上部で、授業中も机の中でバトンをにぎって、バトンパスのイメトレをしていたんです。
このバトンは、家族の絆のこと…。
主人公の優子は、子どもの頃に母親を亡くす。
父親は再婚したけれど海外勤務となり、優子は、日本に残り継母と暮らす。
そしてその継母が父と別れ違う男性と再婚。
また新しい家族となるけれど継母が家を出てしまい、血の繋がらない父と暮らす。
そのうち継母が違う人とまた結婚して優子を引き取る。
が、またまた継母はいなくなってしまう。
結局優子は、また全く血の繋がらない森宮さんと2人で暮らす…。
何度も家族の形が変わり、名字も変わり…。
優子というバトンは次々と渡され、ほとんどの年月を血の繋がらない人と暮らす。
でも、どの家族も本当にいい人たちで、それぞれの形で優子に愛情を注ぐ…。
その優しさ、おおらかさに心を打たれる。
それぞれの家族とのちょっとしたエピソードに心が和む。
優子が愛する人と出会い、結婚式に皆が集まり、渡されてきた優子との家族の絆は、優子の結婚相手・早瀬くんへと繋がれていく…。
物語は優子の視点で語られていくのだけれど、最後の語り手は森宮さんとなり、バトンが早瀬くんへと渡されるシーンが際立って描かれる。
「本当に幸せなのは、だれかと共に喜びを紡いでいる時じゃない。自分の知らない大きな未来へとバトンを渡す時だ。」
…という森宮さんの言葉が優子を育ててきた人たちの温かな愛情を表しています。
人の優しさ、大きな愛にあふれた物語。
最後の方は、号泣に近いほど泣きました…。
幸せな気持ちに満たされました。