
「もうひとつの美術館」という名前のこの美術館は、障がいのある人たちの作品が展示されています。
なかがわまちアートフォレスタの中心となっている美術館です。

今、開催されているのは、「線と点がつなぐもの もじ・コトノハ」という展覧会です。

文字で遊び、文字にこだわり、文字にたくし、文字でしるす…。
そんな、力や楽しさや、そして不思議にあふれる作品が並びます。
作品が展示されているのは教室なので、学校に参観日にやって来て、子どもたちのはり出された作品を見ているような、ほのぼのした気持ちになります。
記録として描きとどめたいことを、溢れるように描いたという「メモ絵」。

絵の間に、日付や人の名前、出来事が記されています。
何をして過ごしたのかな?…と、想像しながら見ると楽しいです。
筆で自由に空間を埋めていく人。

のびやかに。緩やかに。
リズムを感じる作品です。
あとは、絵はがきや図録がなかったので、チラシからの画像なので、展覧会のタイトルの文字が入ってしまいますが…。
記憶したい情景の中の文字を貼り絵で表したという作品。

鮮やかでダイナミック。
壁一面、この人の作品で埋め尽くされているのですが、どの作品の中にも「らくせきのおそれあり」という言葉が。
よっぽど印象に残っている言葉なのでしょうか。
ボールペンで刻むように漢字を並べた作品。

とても複雑な漢字は、オリジナルだそうです。
細かく難しい字がビッチリ並びます。
その字はしかも、ただ書かれただけではなく、白抜きにデザインされているのです。スゴイ。
細かい物は5ミリくらい!
この美術館では、50円でルーペを貸し出しています。
私は目はいい方なので、いらないかと思ったのですが、美術館の方が、「違う世界が広がる」とおっしゃるので借りてみたら…。
ホントだ!
ミラクル!!
自分の名前を繰り返し繰り返し書き続けた作品。

名前が書けるように、と練習をしたことがきっかけで、それからずっと名前を書き続けているそうです。
自分の名前が書けるようになった喜び。
これが自分の名前、自分の存在を示すものであるという嬉しさ。
自分が自分であることの確認。
…想像ですが。
そしてなんとも楽しい作品発見。
「地球防衛団」の隊長を務める青年。
平和を守るメッセージを記しています。

横に、縦に何本も何本も線を引き。
その間に言葉を埋めていきます。
「神信じる」「愛メッセージ」「生きる命」「新たなる夜空」「出会った君こそが誇り」…などなど。
そして最後の部分には、「松田隊長」とのサインが。今日も、地球の平和を守るべく、メッセージを記していることでしょう。
強く印象に残ったのは、赤で書かれたこの作品。

この方は、「書はアートたるか、己はアーティストたるか」という命題に挑戦しているそうです。
この作品は、「いきていきていきて…」と、繰り返し書かれているのです。
生きて。
生きたい。
生きていたい。
願いのようであり、決意のようであり、祈りのようであり。
強い思いが溢れています。
ほとばしる感情。
描かずにはいられない衝動。
確かな自分を線で、点で、ことばでつなぎ、存在を記し、伝え、伝わる。
たくさんのパワーにあふれる美術館でした。