その人は多分お金持ち。
「大」とか「超」がつく。
ビルの二部屋に、主に昭和の日本の画家の絵がズラリ。
ちょっとした美術館です。
その中に牛島さんの絵がありました。
川と、岸と、空が印象的な、ほわんとした絵。
体の力が抜けて、顔も優しい表情になれるような。
一目で好きになりました。
それから十数年。
なかなか牛島さんの絵を見る機会がなかったのですが…。
今、渋谷区松濤美術館で、牛島憲之さんの展覧会が開催されているのです!
ワクワクしながら行きました!

そしてこれはもう。
「うわっ」
と
「まいりました」
の繰り返し。
まず…、入館料が300円!?
思わず、
「安いですね!!」
…と言ってしまいましたよ。
絵はもう。そこから動きたくないくらい。
白と水色と紫と緑。
私の好きな色が絶妙に混ざりあって、
優しくやわらかく穏やかな色彩たち。
空も。川も。木々も。

触れてみたくなるような。
溶け込みたくなるような。
線もほんわり。
そこはかとなく漂うユーモア。
きっと温かな人柄をそのままうつしたような…。
沼の絵。
水草やカエルやカッパが、中で遊んでいそうな。

電車も子どもたちもお巡りさんも、ほわわんと幸せに包まれているような。

一方、道を描いた絵には、強い意志を感じます。

絶筆となったこの絵は、すごい存在感です。
自分もこの絵に吸い込まれ、この先に歩いて行くに違いない…、
自分の姿が見えるようです。
牛島さんだけに、牛がいろんな絵に登場します。

牛も優しい。

「ここに牛がいたらいいだろうな」
…という、全くの思いつきで、牛を描き込んだらしいです。
そして、昼の月がたくさん描かれていました。
暗闇を照らしてくれる月。
昼は見えないけどちゃんとあって、
見つけた時には、なんだか得をしたような気持ちにさせてくれる。
そんな、昼の月。
牛島さんはいっとき、はまったらしいです。
わかる気がします。
月への憧れ。
中でもこの絵は、昼の月が川面にも映っていますよ。

川の奥の不思議な紫の世界に、誘い込まれそうな絵でした。
他にも、景色や船が水面に映る、水が印象的な絵がたくさんありました。
水面は景色を映して色彩を微妙に変え、
広がりを見せ、
違う側面を見せ。
揺らいだり、吸い込んだり、輝かせたり。
そんな水は、私にとっての「絵」と同じ。
絵をのぞきこむと、その時の自分に気づけるのです。
素敵な絵たち…。
また会いに行きます。
なんてったって、300円、ですから!!