シャッターを開けて
冷蔵庫を洗う
しばらくすると
「すいませ~ん」と
すぐに
お客さんが来た
70歳を越えた感じのおばあちゃん
3歳位の子供が2人
一緒に来た
「ガスコンロあるけど 買ってくれへんか?」
「ええで 持って来て~」
値段がわからないので 電話で聞きながら答えた
「1000円らしいわ」
「それでいいよ」
しばらくすると
また来た~
「リモコンのテレビあるし買って~」
電話で聞くと
8000円らしい
「8000円らしいわ」
すると
「8000円もいらん」
「何言うの こっちが8000円 払うにゃで~」
「わかってるわ」
「ほな5000円でどう?」
「5000円もいらん」
???
「なんでや おばぁちゃん」
「あのテレビは 娘の元旦那に買ってもらったんや 生活が苦しくて 売りたいけど 8000円も5000円も貰ったら
あの元旦那に助けてもらってるみたいで
いやや~」
「そうか ほな2000円でいいか?」
ようやく納得したらしく
家にテレビを貰いに行く~
ボロボロの平屋
4畳半あるかないか
部屋の真ん中に
テーブルがあり
部屋の奥に
テレビが置いてある
「ほな 持っていくで~」
子供達の目が
スッゴくさみしそう
「ホンマにええの?」
「ええし はよ持っていって~」
心を鬼にして
テレビを運び上げた
私の目に入ったのが
テーブルに置いてあった3人の晩御飯
なんと
なんと
なんと
なんと3人で
み み み
みかんの缶詰1個~
ショックで
テレビを落としかけた
「おばぁちゃん これ
晩御飯?」
「そうやで」
世の中には
いろんなひとがいるんやな~
それ以上の言葉は出ず
テレビを持ち帰った
衝撃の日から
数日後 またまた
おばあちゃんが来た
何かを毛布で巻いて
コロコロと転がして来た
それは
ボロボロの電気ストーブでした
錆びていて
再生不可能な状態
さすがに買えない
「おばぁちゃん これは無理やわ」
と言った私
ふと気がつくと
いつも2人いる子供が今日は1人
「おばぁちゃん もう一人の子は?」
「あの子が盲腸で入院した バス代が欲しい 500円でもいいし買って~」
たまらん話や~
「おばぁちゃん ストーブは持って帰って でも何時も来てくれるから1000円
あげるから これで
病院へ行ったげて」
そう言うと
おばぁちゃんは
ワンワンと泣き出した
「ありがとう 意地でもやり直すから
その時は この店で
全部 買わしてもらうし 御恩は絶対に忘れません」
そう言って病院へ
もうアカン
私には無理や~
やる時に
言われていた
この商売は
心を鬼にして
安く仕入れて
高く売る
それができな
あかんで~
また おばぁちゃんみたいな人来たら
昔 鬼だった私も
無理ですわ~
70歳を過ぎて
子供達を引き取って
缶詰で乗り越えて
恥もさらけ出し
感謝を忘れない
この
おばぁちゃんとの出会い
一生
忘れる事はないでしょう
リサイクルショップを辞めて
レンタルビデオも不振でやり繰りできなくなってきて
再び弁当屋へ
戻る事になった~