債務整理のお話(自己破産する?民事再生する?)
破産手続をちょっと詳しめに説明してみる(破産と免責,免責不許可事由と裁量免責について)
破産手続をちょっと詳しめに説明してみる(破産と免責,免責不許可事由と裁量免責について)その2
(破産手続の流れ(管財事件の場合))
①破産申立書提出
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②破産手続開始決定
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③破産管財人選任
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④債権者への配当
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⑤破産手続終結決定
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⑥免責決定
では,再生手続の場合はどういう流れなのでしょう?
(再生手続の流れ)
①再生手続開始申立書提出
申立人(債務者)の債務の全ての記録(債権者一覧表)と財産の全ての記録(財産目録)を添えて,支払い不能になるおそれがある旨を申立てます。
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②再生手続開始決定
裁判所が申立書と添付資料を確認し,支払い不能のおそれがあると認めると再生手続が開始されます。
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③再生委員の選任
裁判所が実際の再生手続の補佐をする再生委員(通常は弁護士が選任されます。)を選任します。再生委員は債務者の財産状況や収入状況の調査などをします。また再生計画案の作成にあたって債務者に助言をし,裁判所に対して再生計画の履行可能性について意見を出します。
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④債権者からの債権届
債権者から裁判所所定の書式による債権届をします。
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⑤再生計画案提出
④の債権届の債権額(または申立時の債権者一覧表に記載の債権額)と財産額をもとに,民事再生法所定の計算方法により減額された債権の支払い計画(再生計画案)を裁判所に提出します。
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⑥書面決議に付する決定(付議決定)
⑤の再生計画案について,債権者に賛否を問います。
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⑦再生計画認可決定
⑥の決議で否決(総債権額の過半数の債権者の不同意,または債権者総数の半数の不同意)されない場合は裁判所は再生計画を認可します。
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⑧再生計画に基づく弁済開始
再生債権者に対し,再生計画に基づく弁済を行います。無事に支払いを終えた場合には,残りの債務の支払い義務が免除されることにになります。
①~④までの流れは破産と再生でほぼ一緒です。①と②は破産手続では,支払い不能の場合であるのに対し,再生手続では支払い不能のおそれとなります。支払いが全くできないのでは,再生計画に基づく弁済はできませんからこういう文言になるのですね。
⑤以降も破産と再生ではよく似た手続になっています。
③の再生委員は破産手続における破産管財人に似ていますが,破産管財人のように債務者の財産の管理や処分をする権限はありません。あくまでも債務者に対する助言や勧告,裁判所の補佐に留まります。とは言え,再生委員の助言や勧告に従わない場合は,当然再生委員は再生計画案の履行可能性について裁判所に否定的な報告をしますし,裁判所は再生委員の報告どおりに再生計画案を不認可としますので,現実的には従うしかありません。
さて,破産手続において,債務者に財産が無い場合は破産管財人は選任されることなく同時廃止事件となることは破産手続の解説で述べました。では,再生手続における再生委員はどうなんでしょう?実は,破産手続においては破産管財人が選任される所謂管財事件が原則で,破産管財人が選任されない同時廃止事件は例外であるのに対し,再生手続では民事再生法上の原則では再生委員が選任されません。以下が再生委員の選任について定めた民事再生法第223条1項の条文です。
裁判所は、第二百二十一条第二項の申述があった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、一人又は数人の個人再生委員を選任することができる。
そう,あくまでも「必要があると認めるときは個人再生委員を選任することができる。」のであって,必須のものではないのですね。
ちなみに京都地裁の運用では,司法書士が書面作成者としてかかわる再生手続には,原則として再生委員は選任されません。当事務所で取り扱った事例で再生委員が選任された事例はごくわずかにありますが,それらの事例は「ホントにその再生計画に基づく弁済ができるの?」と裁判所が疑念をもってもおかしくないという事例ですね。
④の再生債権の届出は,債権者が再生手続開始決定までの利息損害金を付した債権額を裁判所に届出します。これは,債権者への配当のある破産管財事件と同様です。
再生計画に基づく弁済と破産管財人による配当は,ともに債権額に応じて案分されますので,多くの債権者は少しでも自身の債権額を増やすために利息・損害金を計算した債権額を届出します。
⑤の再生計画案は民事再生法の定めに従って減額した債権の各債権者への支払い方法を提示するものです。これは破産手続における破産管財人による配当計算に相当します。ただ,再生手続が破産手続と大きく違うのは,再生計画案は債務者自身が作成することができ,かなり柔軟な計画にすることができる点です。
住宅ローン特則を利用すれば,住宅ローン債権のみを約定通りに支払い,その他の債権は減額することができます。これはよく知られているので,当ブログの読者も多くの方がご存知でしょう。他にも,個人事業主で,事業の継続に必要な資産が一部の債権者の別除権の対象となっている場合には,その債権者へは債務の全額を支払い,他の債権者に対しては,一部債権者への支払額全額を清算価値に計上することで衡平を図ることができます。繁忙期と閑散期で収入が大きく違う場合は,繁忙期に多く支払い,閑散期には少額の支払いにするような再生計画も可能です。
⑥の書面決議に付する決定(付議決定)では,⑤で作成した再生計画案への賛否を債権者に問います。再生計画案への反対が再生債権者の総数の2分の1未満で再生債権の総額の2分の1を超えないときは,再生計画案は承認されます。
この賛否を問う手続きは,破産事件のように債権者集会を行うのではなく,裁判所への書面の郵送によってされますので「書面による決議」なんですね。
⑦の認可決定は⑥の書面決議で債権者の承認を得た再生計画案を,裁判所が再生計画として認可する決定です。ここで再生計画案から「案」が取れて再生計画となるわけです。
再生計画認可決定が官報公告されてから2週間の異議申述期間が経過すると再生計画の認可決定は確定します。ここで,事実上この手続きは裁判所の手を離れます。尚,認可決定は決定正本が裁判所から送られますが,官報公告がされたことも認可決定が確定したことも裁判所からは連絡ありません。債務者側で官報を確認し,認可決定確定した時期を見計らって裁判所に問合せして確定の事実を確認します。
⑧の再生計画に基づく弁済に先立って,再生計画認可決定確定の事実を各債権者へ知らせるとともに,支払先口座の問合せをします。先に述べたとおり,再生計画認可決定確定をもって裁判所の手を離れていますから,ここからは債務書(書面作成者である司法書士)と債権者が直接やりとりすることになります。支払いについても裁判所は関与しません。債務者が債権者指定の口座に振込をすることになります。
ちなみに支払いが終わったかどうかも債務者が自身で確認しなくてはいけません。完済証明書や原契約書を送ってくれる債権者もいますが,何にも言わないし送らない債権者も結構います。逆に,本当はとっくに支払いを終えているのに習慣で支払い続けちゃう債務者も居ますね
。
今回はここまで,次は再生手続と破産法上の免責不許可事由の関係や,実際に債務者と再生委員がどのように関わっていくのかについてを書きたいんですが,いつになるやら…
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