遺産承継業務(相続財産管理業務)のお話(保険金の請求のお話) | みらい日記―宇治の司法書士のBLOG―

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遺産承継業務(任意相続財産管理業務)のお話(相続した預金の名義変更や払戻ってどうやるの?)

 

が結構アクセスあります。関心ある方が多いんですね。多分半分くらいは同業の方でしょうが…。

 

今回は保険のお話。

まずは大前提として,

死亡保険金は民法上は相続財産ではありません。

通常,死亡保険金は契約時に受取人を指定しています。多くの場合受取人は配偶者や子です。その場合は確かに亡くなった方の相続人ではありますが,死亡保険金の受取人は相続人でなくてはいけないわけではありません。死亡保険金を受け取る権利は,民法上の相続によって発生するものではなく,保険契約時の契約内容によって保険会社と受取人の間で直接発生する権利なんですね。

ということで,死亡保険金は相続財産じゃないから関係ない…,とはいきません。

 

当事務所の場合,遺産承継業務の委任契約の内容として死亡保険金の請求・受領の条項を入れています。というのは,死亡保険金は相続財産ではなくとも,他に相続財産として請求すべき保険金がある場合が多く,一体的に請求した方が当事者全員(ご依頼人,保険会社,当事務所)にとってやりやすいからです。また,亡くなった方が遺産分割協議の際の代償金の原資として利用することを期待していたと思しきものもあり,民法上相続ではないから…,と無視はできません。税法上は相続財産ですしね。

では,相続財産として請求すべき保険金とはなんでしょうか?それは,被相続人が存命中に発生した請求権です。よくあるのは手術給付金や入院給付金ですね。手術給付金や入院給付金は通常は手術を受けたり入院した本人が退院したら請求し,本人が受け取るものです。しかし,入院中に亡くなり,死亡により退院した場合には手術給付金や入院給付金の請求はできませんから,「手術給付金や入院給付金の請求権」という相続財産が残るわけです。更にややこしいことに死亡解約返戻金なんてのもあります。死亡保険金のように死亡時に発生する一時金なんですが,これは相続財産扱いだったりそうでなかったりします。約款を読まないと判断できないのですが,あの細かい字でびっしり書かれた約款を読むのはなかなか大変です。当事務所はお仕事ですから読みますけどね。

 

ということで,保険金の請求も遺産承継業務の一部としてすることが多いです。

 

1.戸籍調査

これは

遺産承継業務(任意相続財産管理業務)のお話(相続した預金の名義変更や払戻ってどうやるの?)

のとおりですので,そちらを参照のこと,記事を書いた当時はまだなかった法定相続情報一覧図の作成と写しの交付もやってます。

 

2.保険会社へ通知

戸籍調査が済んだら,依頼者からもらった委任状を添えて保険会社に通知を送ります。同時に亡くなるまでの間の未請求の保険金の有無についても照会します。

保険会社からは,照会への回答とともに保険請求に使用する書類を送ってもらいます。

 

3.死亡診断書,手術・入院証明書の取得

保険金の請求には死亡診断書,手術・入院証明書が必要ですので,これらを入院していた病院に行って請求します。委任状があれば代理人でもOKです。亡くなった方が遠隔地の病院に入院していた場合は,電話と郵送のやり取りで何とかします。

証明書は↓のような書式です。

 

証明書の発行には通常2週間ほどの時間がかかります。担当の医師が非常勤だった場合は,タイミングが悪いと1か月以上かかることもあります。発行の手数料は概ね1通3000円~4000円ですね。

ちなみに保険会社によっては「当社所定の書式による証明書~」みたいなことが書かれていることがありますが,実際には記載内容はほぼ同じですので,他社の書式による証明書でもOKです。病院によっては,病院側の書式による証明書なら手数料がちょっと安かったりします。もちろんこれでも問題なく使えます。

 

4.死亡保険金,手術・入院給付金の請求

各保険会社所定の書類に必要事項を記入し,添付書類を揃えて提出します。外資系や新興のWEB系の保険会社は大抵電話と郵送で済ますことができますし,請求から支払いまでが結構すぐです。外資系は相手方に書類が届くと即日支払いが多いですね。

一方,昔からある大手保険会社は担当職員が当事務所に何度も来ます。スケジュール調整して来てもらって…,というのを何度も繰り返すので,結構時間がかかります。そのかわり,細かな疑問についてはその場で聞けますし,その場で柔軟な対応をしてもらえますから,不慣れな方には安心で便利なんだろうな,と思います。

 

5.かんぽ生命

かんぽ生命は他の保険会社とはかなり異質です。かんぽ生命の簡易保険(かんぽ)は契約時期によって細々と書式が違っています。郵政民営化の前後と移行期間で別物ということで,なかなか面倒です。そしてかんぽの請求は郵便局の窓口に行くことが必須となります。

稀に一度で済むことがありますが,基本的に2~3回は窓口にいかなきゃいけません。他の保険会社に比べて,ごく簡単に済む場合と,めちゃくちゃ面倒な場合の落差が激しいですね。そして,受付する職員さんによる知識の差も激しく,なかなか話が通じないことも…

かんぽの場合は保険契約者と被保険者が違う契約が他の保険に比べて多いようです(保険契約者は旦那さんで被保険者は奥さんといった事例)。保険契約者が被相続人で被保険者が相続人の場合は,死亡保険金等の請求は必要ありませんが,契約者の変更が必要になります。

遺産分割協議書にその旨盛り込まなくてはいkませんから,「権利評価額証明書」を取得してその評価額を特定します。

 

6.保険金の受領・支払いの証明書の取得・保管

死亡保険金や入院給付金の支払いを受けると,その証明書が各保険会社から送られてきます。これは,確定申告が必要な場合に添付書類となります。支払われた保険金は,預貯金同様に相続財産管理用の口座に分別管理し,後日遺産分割協議の内容にしたがって各相続人に払戻します。

 

↓はアフラックの支払い明細

 

 

↓はかんぽの支払い明細

尚,先述のとおり死亡保険金は相続財産ではなく,遺産分割協議の対象ではありませんから,通常はこの分は別途受取人に払戻します。

 

まとめ

保険金の請求は,本来はそれほど難しいものではありません。実際,ご自身が加入している医療保険や自動車保険で保険金の支払い請求をしたことがある方は多いと思います。

相続に伴う保険金の請求の場合も,ひとつひとつは難しいものではないのですが,一度に複数の保険会社に請求しなくてはいけないこと,請求する立場が保険契約で定めておいた指定代理請求人としてなのか?亡くなった方の相続人としてなのか?死亡保険金と入院給付金のどちらの請求か?で必要書類が違ったりするので,混乱しがちです。

 

遺産分割の対象が不動産などの分割に適さないもので多くが占められていた場合は,保険金を原資に代償金を支払う形で解決することができたりしますから,単純に「死亡保険金は相続とは関係ないから…」と考慮の外にしてしまうのは早計です。逆に,本来相続財産ではない死亡保険金を「「分割する」との内容の遺産分割協議書を作ってしまうと,その部分は贈与契約とみなされる可能性があります。相続の場合は大きな金額の基礎控除がありますので,ほとんどの方は相続税を支払う必要はありません。しかし,贈与扱いとなると基礎控除はわずかですので後日税務署から贈与税の支払いを求められたり,一時所得があったとされて社会保険料の支払額が増えてしまったりすることがあります。

 

ということで,遺産承継業務を検討しているかたは,保険金の請求も含めてご相談いただくと良いと思います。

 

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