これまで私が過去に受けた翻訳講座、セミナーについてまとめてみました。
複数の翻訳講座、セミナーを受講しましたので、各講座を選んだ理由、各講座の特徴や添削の様子、全体の感想などについて書いてみたいと思います。
4年前までは自分が翻訳(しかも日英)をすることになるなんて考えたこともありませんでしたが、ちょっとしたご縁で日英の翻訳者として働くことになりました。
翻訳会社時代に各国語への翻訳のベースになる英文取説の作成にも関わっていたため、英語のテクニカルライティング的なことはたびたびやっていたのですが、まとまった量の翻訳をするのは初めてのことでした。
翻訳者を目指すとかそういったレベルではなく、いきなり「翻訳者」として会社に入ることになったのです。
周りからは当然「翻訳ができる」と思われているわけですから、「経験ありません」とか、「わからない」、「できない」などとは、とても言えませんでした。
とにかく、翻訳の基礎的な知識が身に付けられるような書籍や参考資料、通信講座など、何を利用してでも、会社に「使えない」と思われないようにしなくてはいけない・・と、ある意味必死でした。
昼間の仕事で英訳をしながら、お昼休みや帰宅してからの時間を使ってとにかく少しでも翻訳に役立つ知識を身に付けようと考え、まずは自分のペースでできることから始めていこうと思いました。
以下、2014年~2018年までにかけて受講した講座やセミナーなどについて順番に書いていこうと思います。
トランスワード 翻訳者養成講座(添削付き)
そんな時、私より少し前に入った翻訳スタッフの方から「マニュアル翻訳について最低限の知識を学ぶならこれがよい」と薦められた書籍があります(4冊)。
テクニカルライティングと技術翻訳の秘訣(増補版)
Amazon |
トランスワードという翻訳会社が発行しているもので、この会社で過去に開講されていた(?)翻訳講座の内容を書籍にしたもののようです
私はこの本をAmazonで購入したのですが、トランスワードのサイトでも購入可能です。(⇒詳細はこちら)
トランスワードのサイトには、各書籍とセットで課題文の添削も購入ができます。
Amazonで購入後、しばらくしてから添削セットがあったことに気づきました。すぐにトランスワードに連絡し、添削だけ追加でやらせてもらえないかとお願いしてみたところ、添削課題のみの購入を快く引き受けていただけました。
さて、このテキストですが、①は本当に本当の入門書としては良かったと思います。
②は、これからマニュアルの翻訳をやろうという人にはよいと思います。マニュアルに特化した翻訳の書籍ってあまりありませんしね。 (必要なかったので、探してないだけかも)
ただ、実際の英文取説やテクニカルライティングのテキストや翻訳講座、実際の取説に書く英文スタイルとはちょっと違うかも?と思ったポイントもありました。
トランスワードの方針とか、クセもあるかもしれないので、訳例の1つとするとよいと思います。
技術翻訳で大切な、用語の使い分け、原文(和文)に引きずられない英文を書くとかいったような技術翻訳の基本理論&知識はしっかり盛り込まれていました。
私はそれまで取説の英文に触れる機会は多かったので、書き方やスタイルについては特に不安はなかったのですが、それが何かの理論に基づいたものではなく、「ずっとそうしてきたから」という経験的な要素が大きかったので、翻訳者が翻訳をするにあたりどういう理論やルールに基づいて翻訳をしているのか、というのが形になったものを初めて確認できたという意味で、とても参考になりました。
さて、追加でやらせてもらえることになった添削ですが、確か社長が直々に添削してくださったのだったと思います。
赤字も解説もキッチリした添削をいただきました。
評価は3つとも一番上のランクに++がついたものをいただきました。
それを見て、「頑張ればもしかしたら翻訳をやっていけるのではないか?」と、少し自信がつきました。
DHC 「日英実務翻訳コース」
さて、添削をしてもらったことで、添削による学習の効果を実感し、きちんと翻訳を勉強してみようと思いました。
また、仕事でマニュアル以外の技術文書の英訳も依頼されることがあったので、論文や報告書のような文にも対応できるようにしたいと考えるようになりました。
土日は家族のために空けておきたいし平日は仕事があるため、通学という選択肢はなく、通信講座しか考えていませんでした。
このとき候補に上がったのは、
サンフレアアカデミー
フェローアカデミー
DHC
DHCに対しては「翻訳」というイメージがそれまで全くなかったのですが、実際に届いた教材を見てみると、通信講座に特化しているだけあり、テキストの内容がとにかく充実していることに驚きました。
分厚いテキストが6冊。
6ヶ月で終わらせるので、月1冊のペースで自分で配分を決めて進めますが、内容が濃いため、それなりに時間が必要でした。
ただし、期限が過ぎても3か月は延長できるので、少し余裕を持って進められました。
たぶん今も同じだと思いますが、私が受講した2年半前には、添削用の課題は指定の解答用紙に手書き(印刷も可能)で書いて指定の封筒に入れて郵送しました。それからさらにDHCの事務局→アメリカへと送られ、ネイティブのスタッフが添削したものが手元に戻って来ました。
郵送と手書きの添削なので、戻ってくるまでに結構時間がかかりました。
添削結果も解説も全て英語、付属の質問カードに書く質問も回答も全て英語でした。
ネイティブに添削してもらう機会はなかなかないので、とても勉強になりました。
結局無料延長期も使ってトータル9ヶ月で修了させました。
DHCの翻訳講座では、優秀な結果をおさめた人は翻訳者として推薦してもらえる制度があるのですが、私は残念ながらそのレベルには届きませんでした。
それでもかなり勉強になりましたので、この講座は受講して本当に良かったと思います。
(⇒この講座の詳細はこちら)
フェローアカデミー 「翻訳入門<ステップ18>」
その後しばらくは、本業の翻訳が忙しくなった上に、別に副業としてチェックの仕事も始めたため、参考書を読むのが精いっぱいでした。
そんな生活に少し慣れて来た時に、和訳の経験が全くないことが気になり始めました。
英文の意味はわかるけど、こなれた読みやすい日本語にはできない。
和訳をするには、必要なテクニックがあるのではないか。
最低限のテクニックを身につければ和訳という方面にも世界が広がるのではないか・・と考え、今度は和訳の講座を探すことにしました。
この時にはもう、将来的に翻訳を仕事にしていくことを考えていたので、最終的には専門分野を選べるところにしようと思いました。
ただ、まだやりたい専門分野が絞れなかったため、初級から専門分野に分かれるサンフレアアカデミーよりも、分野を問わず広く和訳を学べそうなフェローアカデミーの「翻訳入門<ステップ18>」を選ぶことにしました。
「翻訳入門<ステップ18>」は、和訳専門の講座です。
基本的な文法の勉強をおさらいしつつ、英文を文法にのっとって正しく解釈し、読みやすくわかりやすい訳にする方法を学んで行きます。
文法には自信があったのでこれを飛ばしてしまおうかと少しだけ迷いましたが、和訳の基礎が全くなかったので、後から後悔しないようにしっかり基礎を固めることにしました。
フェローアカデミーの添削は、マイページから送信フォームに訳文を入力して課題文を送ります。(実際には別ファイルに訳文を作成しておいて、それをマイページのフォームにコピー&ペーストして送信していました。)
講師がその解答を印刷し、そこに赤字を書き込んだものが2週間ほどで郵送で送られてきます。
添削は手書きなので、修正箇所のポイントが視覚的で分かりやすかったです。
DHCと比べて良かった点が2つあります。
1つは、マイページからの提出なので、講師の手元に届くまでの時間が短縮されたこと。
2つめは、ご挨拶や学習の様子やその単元で苦労した点、疑問など、解答とは別に入力する欄があったこと。
添削が戻ってくる時に、講師からのお返事が書かれていて、通信講座でありながらも、添削してくださる先生の存在を近くに感じることができました。
(⇒この講座の詳細はこちら)
フェローアカデミー 「実務翻訳<ベータ>」
和訳の基礎が少しついたところで、和訳も英訳も同時に学習でき、実務翻訳に対象が絞られたアカデミー「実務翻訳<ベータ>」に進みました。
こちらの添削提出&戻り方法も、<ステップ18>と同様でした。
ベータのテキストは、和訳にとっても英訳にとっても役立つ内容でした。
修了後も役立つ参考書として、すぐに手が届く場所に置いてあります。
(⇒この講座の詳細はこちら)
サンフレアアカデミー 「はじめての特許翻訳(⇒英文和訳)」 (詳細はこちら)
サンフレアアカデミー 「特許明細書A(IT・電気・機械) 中級」 (⇒詳細はこちら)
和訳、英訳の基礎の基礎が身についたところで、今度は分野を絞ってもっと専門的に学びたいと思いました。
どの分野を専門にするかについては最初のころからずっと考えていました。
なぜ特許を選んだのかという詳細はここには書きませんが、今までの経験を生かせて、どんどん知りたいと思えて、興味が尽きないのは機械、電気、IT関連だというのも理由の一つでした。
フェローアカデミーの講座で学ぶという手もあったのですが、フェローアカデミーの講座はテキストの量が薄くて期間も短かったため、順を追って学べそうなサンフレアの初級講座を選びました。初級は和訳のみでしたが、特許の文章自体が初めてだったので、まずは和訳ベースで特許の英文に慣れて行こうと思いました。
一通り基礎を学んだ上で、今度はさらに深く、今度は英訳もやりたかったので中級へ進みました。
中級は、6割和訳、4割英訳という感じでした。
課題の提出の仕方については、初級講座の時は、事前にダウンロードしておいた指定のワードファイルに解答を入力し、メールに添付して事務局に送りました。事務局から講師にファイルが送られ、1週間後くらいに添削されたファイルが事務局経由でメールに添付されて戻ってきました。添削は、編集履歴付きで入力されているので、校正を体験できるという意味では、よいのかもしれませんね。
ただ、講師とのやりとりはほとんどなく、寂しい気もしました。重要度は私の中ではすごく高いものではなかったのですが、スクールによって結構違うものだなぁと思いました。
中級講座では、初級とは課題提出のシステムが変わり、事前に登録したマイページを通じて課題を出すようになりました。課題をマイページでアップロードすると、講師がそれをダウンロードして添削し、1週間くらいで添削結果がマイページへアップロードされます。添削結果と解答例を自分でダウンロードして確認するという感じでした。
サンフレアでも質問が決まった回数できるようになっています。私がちゃんと説明を読んでいなかっただけかもしれませんが、課題提出時の質問は課題ファイルに入れてしまってよいのか、ちょっと分かりづらかったです。本当はいけなかったのかな?
もちろん自分なりの訳をした上ですが、質問箇所には全部コメントをつけさせてもらいました。添削する際に一緒に見ていただけて丁寧な回答もいただけて、とてもよかったです。
規定回数の質問では、課題文以外の文で疑問に思ったことを質問しました
初級も中級も、求めていたもの(特許文体や最低限の知識)を得られたという意味では満足しています。
ただ、テキストや回答にミスがあったり(問い合わせたところ、確かに間違いとのこと)、いろいろな書籍などを読むと、情報としては古いものもあるのかなぁ?と思ったりしたのも確かです。ただ、それは、テキストの問題というより、分野的な要素が強いのかなという気もしました。
(⇒「はじめての特許翻訳」の詳細はこちら)
(⇒「特許明細書A(IT・電気・機械) 中級」の詳細はこちら)
上級のコースのテキストも見てみたのですが、中級の延長というか、あとはいろいろな特許から抜粋した短いテキストを訳すという、演習問題がメインだったように思います。
この講座を良いと思う人もいると思いますが、何を求めてこの講座を受けるかに依るかなと思います。
私の考えとしては、基本を押さえた後は、「どれだけそれを翻訳作業に盛り込んでいくかが重要」だと思うので、上級講座を受けるのはやめることにしました。
テキストでは抜粋した短い文しか訳しませんが、実際の特許文書はテキストとは比べものにならない量の文を訳さなくてはいけないし、用語や表現を統一するなど、いろいろ注意を払わなくてはいけなくなります。
自分に必要なのは、そこなので、慣れる意味でもしばらく特許文書を探して読んでいってみようと思います。
ひとまずは、英語と日本語の対訳を探して、まずは自分で訳してみて、訳を確認する、という方法でやってみてから、それでもだめなら何か講座を取るか、そのとき自分に必要だと思う知識を得られるセミナーを選べばよいと思いました。
さて、講座を修了してからしばらく停滞気味の特許分野の翻訳ですが、忘れたわけでもあきらめたわけでもありません。
ただ、もし特許を専門にしたいのであれば今のままでは絶対無理だと思い、今後の人生について深く考えることになりました。
DHC「英日メディカルコース」
以前講座の受講については書いたことがありますが(以前の記事はこちら)、現在「英日メディカルコース」を受講中です。
特許分野を目指していたのになぜ医療・・?と思われるかと思いますが、自分のこれまでの経験と、今後の事を考えての決断です。
ずっと迷っていたのですが、4月の時点である賭け(?)に出ました。
これがうまくいったら医療分野を今から勉強しよう・・と。
そしてめでたく始めることができたわけですが、実は少しペースが遅れ気味で取り組んでいます。
この「英日メディカルコース」、かなりしっかり取り組まなくてはこなせないと思うので、受講される方はそれなりの時間を確保できることを確認した上での受講をお薦めします。
私はGWくらいから始めたのですが、3ヵ月半たった今でもまだ2冊目半ばくらいで、なかなか進められないのでそろそろ本気で焦り始めました。
でも、なんとか最後まで終わらせるつもりです。
こちらの講座については、今後も紹介していきたいと思います。
(⇒「英日メディカルコース」の詳細はこちら)
単発の講座・セミナー
単発の講座もいくつか受けました。
- 「フリーランス翻訳者の仕事術~商品は自分、切り口は自在~」(⇒過去記事はこちら)
- 「続・読ませる翻訳セミナー
- ~辞書引きの実践と、的確な日本語の選び方~」(⇒過去記事はこちら)
- サンフレアオープンスクール
- 翻訳祭(2016、2017)
- 「特許英語マスターシリーズ パートⅠ」(⇒過去記事はこちら)
- 「特許英語マスターシリーズ パートII」(⇒過去記事はこちら)
- オンライン「特許セミナー」『「PCTルート」と「パリルート」について」』(⇒過去記事はこちら)
- 「特許英語マスターシリーズ パートIII」(⇒過去記事はこちら)
- 「特許英語マスターシリーズ パートIV」(⇒過去記事はこちら)
ここまでで受講した講座は、行き当たりばったりで受けたわけではなくて、どれもその時の目的に見合ったものであったと思います。
スクールで得られる知識は基礎の基礎であって、課題でいくらいい評価を得ても、講座を修了しても、実務で通用する翻訳者になれるわけではありません。
講座で得られるのは最低限の知識、大事なの事は「それをもとにいかにプラスαの部分を増やしていけるのか」だと思っています。
講座で得られるものだけで満足していたら、その先はないなと。
チェックを受ける会社を増やしてみたり、トライアルを受けてみたり、ある程度先を見据えて動いています。
今の講座が終わった後は、DHCの「日英メディカル」を考えていて、あとは単発の講座のみしか考えていません。
お金をかけてきた感がありますが、これまでのかけてきた分はすでに回収済みです。
ここまでの知識が無駄にならないようにしてきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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