【2017年8月のコラムから】

 

 ここのところ「AI(人口知能)」に関する話題に事欠きません。

 

 特に最近では、世界でもっとも難しいゲームの一つと云われる囲碁や将棋の世界でのAIの活躍が有名になりました。

 囲碁の世界では「アルファ碁(AlphaGo)」、将棋の世界では「ポナンザ(Ponanza)」が人類最強と云われる打ち手に圧勝しています。

 

 また経済、産業の分野でも活躍が期待され、自動車が本当の意味での「自動」車になるときが目の前に迫り、「勘」が勝負の株式投資の世界でもAIが席巻しようとしています。世界を代表するAI企業では、私達のネット世界での情報を大量に集め「ビッグデータ化」し、それらを利用した経済の実用化が一部では始まっています。

 

 生活のかなりの部分にAIが入ってくるようになるのでしょう。

 

 現在のAIには「ディープ・ラーニング」という機能があるそうです。

 

 これは「深層学習」と呼ばれ、機械が自分自身で学習する手法のようですが、この有利性は一面で人間を圧倒しています。

 人間は記憶したものを「忘れる」という特質を持っています。

 辛い体験などを忘れることによって生命を維持するなどの働きもあるようなので、これが「生命の不思議」の一つでもあり、有効なことでもあると思うのですが、AIは何しろ「忘れる」ということがありません。

 そうするとAIが思考する場合、自身が持つすべてのデータを活用することが可能です。

 

 このように今後、あらゆる分野で活躍が期待されるAIですが、興味深いことにAIの「思考パターン」はそのプログラムを組んだエンジニアも分からないということです。

 これは機械学習機能を組み込んだ「ディープ・ラーニング」のためで、「AIがどのデータをどのように利用したか」がわからないために起こっているようです。

 

 これがさまざまな不安を呼び起こし、AIの暴走などが心配される要因にはなっているようですが、間違いなく近々、さまざまな産業や、私たちの生活にも確実に入ってくることでしょう。

 

 このように「何を考えているかわからない」AIですが、その最たる傾向は前述した囲碁・将棋の対戦に現れているようです。

 

 人が碁や将棋を指すときには「定石」というものがあるそうで、「定石」の意味は「囲碁などで、最善とされる決まった打ち方。転じて、物事を処理する時の、決まった仕方」とあります。

 

 人間は一連の動きの中で、「流れ」「美しさ」などを考え、この「定石」を用いることが多いようですが、先のAIは、この「定石」をまったく無視した「今までの人間では考えられない」手の打ち方をし、関係者を驚かせました。

 

 この「定石」には二つの側面があるように思います。

 一つは、ゲームにおいて「勝ち負けだけを考えるのではなく、流れや美しさという情緒的な満足感を得る」部分。

 反面には「一つの既成概念に支配され、新しい考え方の妨げになる」という側面です。

 

 最初の側面は、「勝負は勝てばいい」ということだけでなく、盤面に芸術を愛でるような感覚を持つ、人間特有の感覚を感じます。

 

 問題となるのはもう一つの側面でしょう。

 

 新しいことには何となく「拒否感」を覚え、「変えてゆくこと」に対して臆病になってしまう感覚。

 これは問題かも知れません。

 

 これに関連して、先日の「NHKスペシャル」で興味深いテーマを取り上げていました。

 NHKで開発したAIに700万のデータを入力し、そのAIに「社会のさまざまな問題を解決する方法を考えさせる」というものでした。

 健康や少子化、女性の活躍等々の社会問題をAIに問いかけます。

 AIが導き出した答えはどれも意外なものでした。

 

 曰く、

 「健康になりたければ病院を減らせ」

 「少子化を食い止めるには結婚よりもクルマを買え」

 「ラブホテルが多いと女性が活躍する」

 「男の人生のカギは女子中学生のポッチャリ度」

 「40代一人暮らしが日本を滅ぼす」

 

 これらの回答に対して、前述と同じようにこのAIが「どのデータをどのように利用し導き出したのか」は分かりません。

 将来は教えてくれるかも知れませんが……。

 

 これは「風が吹けば桶屋が儲かる」式の回答です。

 ご存知のように「おもいがけないところに影響は及ぶ」ということを示す諺で、「風が吹くと砂ぼこりで盲人が増える」→「盲人が三味線を習う」→「三味線の原料となるネコの皮が必要となり猫が減る」→「猫が減るとねずみが増え、桶をかじる」→「桶をかじられるので桶屋が儲かる」という理屈です。

 江戸時代らしい諺です。

 

 AIも独自の論法で社会に対するさまざまな解決策を提案したのでしょう。

 これらの提案を人間が読み解き、理解する必要があります。皆さんはこれらの提案をどう解釈するでしょうか。

 

 ここではこれらの提案に対する解釈をすることが本題ではないので省きますが、考えるべき点はAIの考え方が「人間の思考の定石を逸脱している」という点です。

 ただしNHK・AIの導き出した解答が正しいとは限りません。700万くらいのデータではまだまだ足りないでしょう。

 そしてその理論も解説されませんから、結局、人の「思考」で考えることになります。

 

 しかしながら、私がこれらAIの思考を「面白い」と感じるのは、宇宙的視野に立つチャネリング情報に似通った部分があるからです。

 

 人間は「定石」という、「新しいことには何となく拒否感を覚え、変化に対して臆病になってしまう」感覚を持っています。

 そして「目先の利益によって動いてしまう」傾向もあります。

 

 これからマインド・シフトが始まる「新しい時代」に入って行く中、AIのような「まったく新しい考え方」も大切なのではないでしょうか。

 人間が、既成概念と思い込みに支配されてしまうことが問題なのだと教えられました。

 

 以前から「今の人間には、原子力の利用はまだ早い」とお話しして来ました。

 

 これはチャネリング情報において、進化した人類は「コントロール出来ない技術は、出来るようになるまで使わない」という原則を持っていることを知ったからです。

 他にもさまざまな例がありますが、宇宙的な情報を取り入れることによっても人間にもまったく新しい視点からの思考が出来るようになることがあります。

 

 要はこれからの時代を豊かにするのは「発想の転換ができるかどうか」でしょう。

 

 AIという技術は進化した宇宙においても必然の技術のようです。

 ですから「AIの暴走」のような事態は間違いなく解決されていくと思います。

 

 それよりも大切だと感じることは、人間は「思い込みさえ捨てられれば、もっと自由で新しい発想が出来る」ということです。

 

 AIの最大の欠点は「電気」です。

 記憶を「忘れない」AIも電気がなければ動きません。

 

 現在このAI(アルファー碁の場合)が必要な電力は25万Wくらいと言われています。

 それに比べて、人間が思考するのに必要な電力は20Wくらいと云われますから、その差は歴然です。

 人間はなんとエコで無限の可能性を持っているのでしょうか。これらを使わない手はありません。

 

 これからは「発想の柔軟性」が必要な時代。あなたの発想が社会を変えます!