5/2~5/6の5日間、全日本チェス選手権が開催されました。

結果は7.5/9Rで、準優勝でした。

 

選手、運営の皆さん、5日間ありがとうございました!

 

 

自分の試合の中で印象的なポジションをいくつか解説します。

 

4R

 

Okabe,Yuma(JPN,1954)-Aoshima,Mirai(JPN,2380)

 

(60...Ke5)

 

ルークビショップ対ルークポーンで黒が駒得している状況です。しかしルークビショップ対ルークのエンドゲームは理論上ドローです。

 

61. Rh8? Kf4

 

61. Kg3とポーンを見捨てる手が正解で、白はドローに持ち込めます。ただし正確にディフェンスする必要があり、それを嫌ってポーンを残しました。

 

62. Rh7 Bg4 63. Rh8 Re5 64. Rf8+ Bf5 65. Rb8 Re1 66. Rb4+ Be4 67. Rb3 Rh1+ 68. Rh3 Rg1 

 

縦からのチェックはRh3とすることで防げます。しかし、h5のポーンがいることでキングの逃げ道が塞がり、今度はRg4#のスレットができています。

 

69. h6 Rg4+ 0-1

69. Ra3ならまだ粘れましたが、69... Rb1 70. Rc3 Bd5 71. Ra3 Rh1+ 72. Rh3 Ra1 73. Rd3 Bf3 74. Rd4+ Be4で黒勝ちです。

複雑な手順ですが、a3,b3,c4を押さえておけば白のルークは横からチェックできるのはd4のみで、するとBe4のときにRd3と戻れずRh1#が受からないということです。

 

 

7R

 

Aoshima,Mirai(JPN,2380)-Otsuka,Shou(JPN,2223)

 

(40... Qd6)

 

黒の攻撃を耐え、反撃に転じたところです。しかしながらクイーンの守りが強力で攻め切ることはできません。

 

41. Ne7??

 

41. Bc4 h4 42. Bd3で我慢するのが正しく、ドローになっていたと思います。

 

41... Bxe4!

 

Nf5+を防ぐために41... Be7の一手だと勘違いしていました。42. Bxe4 Qd1+はメイトされます。完全な見落としでリザインしようかと思いましたが…

 

42. Nc8 Qxd3?

 

ひねり出した42. Nc8が最善の粘りで、対して当然に見える42. Qxd3が良くなかったのは驚きです。

正着は42. Qd4!!で、Qa1+のメイトスレットを作りつつQxe5を防ぐ手です。しかし普通は本譜で黒勝ちなのであまり考えない手だと思います。

 

43. Qxe5+ Kh7 44. Qe7+ Kh6 45. Qf8+ Kg5 46. Qxf2 Qxh3+ 47. Kg1 Qxc8 48. Qe3+ 

 

白はチェックの連続でf2のビショップを取りますが、c8のナイトが落ちてしまいます。最後のお願いのようなチェックですが…

 

48... Kf5?? 49. Qh3+ 1-0

ビショップを守って何事もないように見えますが、c8のクイーンを素抜かれてしまいます。盲点になりやすい筋です。

私は48... Kf6 49. Qxe4 Qxa6で2ポーンダウンなので負けだと思っていました。しかし50. Qd4+ Ke6 51. Qg7としておき、パペチュアルチェックとg6取りを見せておけば黒のディフェンスが難しくドローのようです。

 

R9

 

Tran,Thanh Tu(JPN,2386)-Aoshima,Mirai(JPN,2380)

 

(71. Ka3)

 

クイーンエンディングで、黒は2ポーンダウンでチェックもこれ以上続きません。負けを覚悟しましたが…

 

71... Kc4!

 

最善の粘りで、簡単には終わりません。72. Qxa772... Qd6+ 73. Ka2 Qd2+でパペチュアルチェックに持ち込めます。

 

72. Qc7+ Kd3 73. Qxa7

 

ここは73. Kb4!が有力でした。キングを上に逃げることでパペチュアルチェックの筋を消します。 73... Kc2 74. Ka5 Qb3 75. Ka6 Qc4とクイーン交換を迫る手がありますが、76. Qxc4 bxc4 77. h4 Kxc3 78. h5 Kd3 79. h6 c3 80. h7 c2 81. h8=Q c1=Q 82. Qd4+ Ke2 83. e4 Qa3+ 84. Kb5 Qxg3 85. e5と進むと白勝ちです。

 

クイーン交換したもののプロモーションで再びクイーンエンディングに戻る面白い変化です。しかし白はこの手順以外ではドローになるため、時間切迫の中では困難です。

 

73... Kc2 74. Qh7+ Kxc3 

 

ポーンをお互い取り合いましたが、Qxb3#のスレットが残っています。

 

75. Qg7+ Kd3

 

76. Qd4+ Qxd4 77. exd4 Kc3 78. Ka2 Kc2 79. Ka3 Kc3はドローです。白はクイーン交換に持ち込めないのが痛く、キングの安全性を確保できません。

 

76. Qe7 Qa8+ 77. Kb2 Qh8+ 78. Kb1 Qxh3

 

h3のポーンを取ればe3,g3にも当たっており、白はポーンアップをキープできなくなります。

 

79. Qd6+ Kxe3 80. Qc5+ Kf3 81. Qxb5 Kxg3 82. Qb3+ Kh2 83. Qxh3+ Kxh3 1/2-1/2

 

 

最後はキングのみとなり、ドローに持ち込みました。


 

四間飛車対穴熊から、終盤の図を迎えました。

 

駒割りは金銀と角桂の交換、玉形は攻め駒から遠い先手の方が堅いです。穴熊の遠さが生きそうな展開で、自信はありませんでした。

 

△4八竜

 

▲2五角のラインから避けつつ金に当てる手でしたが、これは危険でした。ここは△5一金引とするしかありませんでした。

▲2二竜△4二歩▲4三歩でまずいと思いましたが、△2一歩(参考図)が受けの好手です。

 

竜の利きをそらす手筋で、▲2一同竜△4三歩▲4二竜△7一玉と引き、怖い形ですがすぐに潰れることはありませんでした。

 

▲2二竜

 

金取りは逃げてくれません。狙いは▲5二桂成△同金▲7二金です。

 

△3二歩

 

△5一金打としたいのですが、▲1五角△7八竜▲5一角成△同金寄▲5二桂成△同金▲7二金△6三玉▲8二金(参考2図)で負けです。

 

後手玉は▲7二銀△5四玉▲2四竜以下の詰めろで先手玉は▲7九金などと補強すれば寄り付かなくなるので、これは勝てない形です。

 

▲1一竜△5一金打

 

手順に香を補充され、後手は受けているだけなので苦しい形です。

 

▲5二桂成△同金上▲4四歩

 

△7八竜▲4三歩成△同金▲6三香を見せています。後手としては△4一歩で竜を止めるのが楽しみでしたが、それも消され、駒損している形なのではっきり苦しくなりました。以下は粘りましたが押し切られました。

 

 

 

 

 

 

先手中飛車から、中盤の図を迎えました。

先手が桂得で7筋の突破も確実です。しかし玉形は後手が堅くて手厚い形で、先手は3,4筋の歩がいないので薄いです。

攻め合いでは勝てないので、上手く自陣をまとめ切れるかの勝負になります。

 

▲同金

 

拠点を払い、△5五角を防ぎます。

代えて▲7三歩成も有力でした。△5五角として、▲7二となら△3六歩▲同金△4七歩成の筋で勝負される手が嫌でしたが、▲5六銀打△7三飛▲7四歩(参考図)で大駒を取れる形です。

 

△9九角成▲7三歩成△3六香で勝負されるので簡単ではありませんが、駒得が大きく先手が指せます。ただ6五、5六の銀があまり使えない形なので見送りました。

 

△4二飛▲4五歩

 

次に△5四金とされると後手の大駒が働き危険なので、受けておきます。

 

△4七歩

 

△4四歩▲7三歩成△4五歩▲5六金△4六歩▲4八歩でこれ以上の攻めがありません。

△2四角を警戒していました。次の△3六歩が厳しいので▲6八角と受けますが、△4八歩▲同金△4四歩(参考2図)が継続の攻めです。

 

次の△4五歩▲5六金△4六歩のときに▲4八歩と打てないので、どこかで△3三金寄から飛車を使う手があり、先手が少し良さそうながら実戦的には嫌な局面だと思いました。

 

▲5六銀

 

中途半端だった6五銀を引き付け、飛車も5五に利くので絶好の一手です。

 

△5七銀▲4七金引△5八銀不成▲7七角△4七銀不成▲同銀

 

こうなると先手陣は引き締まった形で4筋の嫌味が消えて、桂得の先手が優勢となりました。この後は反撃に転じて寄せ切ることができました。