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今度会えたなら話すつもりさ。それからのこと、これからのこと。

 

 

 

それからさぁ!
もうひとつ!ジェジュンは僕の方を見て言った。

「昴さんにイジワルしちゃダメだよッ
これから続く撮影の全部を担当してくれる事になってるんだから!
仲良くしないとぉ~」
「あぁ!そうっすね~
取りあえず恋のライバルである事は忘れた方がいいっす。
僕らはプロ!『東方神起』!ユノはリーダーだよ?」


「だってさぁ」反論しようとしたら空かさず登場!


「僕だって仲良くしたいよ果南ちゃんと!!
チャンミンも知り合いだったんでしょ!?
ズルイよーーーーッッ」
本気で文句を言ってるジュンス。
そうだったよチャンミン!
知り合った経緯を聞こうとチャンミンへ視線を送るとなんと読書モード。


「・・・・??」
「明日が返却期限なんです」チラッとこちらへ顔を向けあっさりと言う。
そのまま読書態勢へ


・・・のはずが


「だからさっ!!なんで!?
果南ちゃんとさぁーっ何話したの??」
聞かせて聞かせてーーーーーっとしつこいジュンスに捕まってしまい
不機嫌ながら読書は強制終了。


確かに、僕も聞きたい。
「どうやって本を探したらいいか分からなくて、声を掛けたのが偶然果南さんだったんです。
丁寧に色んな事教えてくれて・・・
とても素敵な司書さんだなって、覚えていたんです」


「あんまりさ、賑やかな感じの子じゃないよね?」
「うん確かに~。背が高いから目には付くけど。
一緒に飲みに行っても会話が弾むかって言うと、難しそうっすね」
「でもっ優しいよ~。笑ったら可愛いし!話してると明るいし、楽しいよ!」
「合コンとか苦手そうだったよ?」
「流行とかには流されないタイプみたいだったね」
「僕らのいる周りでは、あまり出逢わないタイプじゃない?」
「あ!そうそう。そうだよ!」

なるほどー。確かにそうかも。納得しながら皆の話を聞いてるとチャンミンが言った。


僕の方を真っ直ぐに見て。


「だから。―――そんな人だから。
ユノヒョンの傍に居るのは、彼女にとっては辛いんじゃないかなって」

今日は、そう思ったんです。

切なそうな、顔をして。僕は・・・・僕は。
そんな彼の表情から何を読み取っていいのか分からなかった。


ただ、思い出したのは


『東方神起』なんですかって聞いた時の、彼女の戸惑った瞳。


その奥には、どんな気持ちが隠れていたんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

早く終わったね~。帰りの車の中、僕たちはみんなホッとして和やか。
うんホント、良かった。
僕もちゃんと、集中できました。よね?みんな!


「でもユノさぁ~」くるっと僕の方を見てジェジュン
ん?
「いつまでその体勢でいるつもり?」
え?
「だからっ!自分のその格好考えてみてよッッ」
ジェジュンは呆れつつもきっちり非難の声を伝えている、みたいだけど。


なんでぇ?


「だーめーですねっ!ユノは自分が可笑しなことをしてるっていう自覚ないですよっ」
「車に乗った途端こうだもんねぇ~」
「いや、スタジオ出た時点で既に怪しかったですね」

えぇ?皆何を言ってるの?
何事か、何を言われているか分からない僕に、ジェジュンはもう一度注意した。


「だから!
いつまでそのパーカー抱き締めてるのッ!?」


あ。
これ?
これのこと??


「だってさぁ~
果南ちゃんの香りがするよ~」うっとりの僕に

「僕も!僕にも触らせて!」前かがみのジュンスに
「え~。どんな匂い??ねえねえ~」興味津津のユチョン
「ダメっ!!これは僕のなんだよ!果南ちゃんの香りは僕のもの!」本気で僕が拒否すると
「だからってね、そのパーカーに頬ずりしたまま動かないのって気持ち悪いよ!」ジェジュンの心配が飛んでくる。


貸してよー
嫌だよ!
『東方神起』なんだからやめてよっ

車の中でぎゃあぎゃあ騒いでたら、一番後部座席に座っていたチャンミンが言った。


「ユノヒョン。
それは完全に変態です。ストーカーになってしまう日も近いです。」


エッッ!? すっ
ストーカー!?
動きの止まった僕らを確認し僕を見て一言


「リーダーなんです。恥ずかしい事はやめてください。」


・・・ごめんなさい。
しゅんとなった僕の手からパーカーを奪って鞄に片付けたジェジュン。


あぁ。
今日の果南ちゃんの香りが・・・僕らのと混ざっちゃうよ?いいの?

そのままロケに持って行こうと思っていたのに。 


・・・・・・でも、


僕は「ヘンタイ」なの??

 

 

 

 

 

 

 

おじいちゃんにそう問われても
何をどう話せばいいか分からないし。

戸惑っているその僅かな時間が、とても長く感じた。


女子と別れた繁華街のざわめき。
夢かと思うほどのこの空間の静けさ。

どちらにも存在している私。
同じようで違って
違うようで同じ


そうだ、聞いてみよう
「コウ兄に、公園で会いました」
少し、眉をひそめるおじいちゃん。あ、反応あり。
「宏一か」
「はい」

もうちょっと
「ユノ君も、一緒に居て」サッカーしていて怒られてました。
そう言うと、
「全く」
怒ってるかな。違うね。

言葉の端に見え隠れする含み笑い
月の明かりを頼りにその表情を探る。
言葉の奥に含まれるその心を手繰る。


何気ないやり取りに隠れている緊張感。


だから、聞いてみよう
「ユノ君の事気に入ってるって。コウ兄が、言ってました」
自分でも声のトーンがおかしかったことは認める。
でも、その真意を聞きたい。


二人の間で揺れる月明かり
届けてくれる今日の三日月
おじいちゃんはそこを視線の先に選んだ

私では、言い難かった?

「あの眼は、嫌いじゃない。相手の視線を逸らす事を許さない。
気に入ってる。筋も悪くないしどちらかと言うと見所もある」

一気に早口で終わらせる。


はい、そうですね。
そう言った私を正面から見据えた

一瞬の緊張


「自分が決めた答えには迷うな。決めるまでにはどんなに悩んでも。
一度その答えを選んだなら」


諦めるな。


全てが、お見通し。やっぱり敵わない。


はい。そう言って一礼する私の頭上で一言。


「あいつは、悩んでも迷ってもないな」ぽつりと呟いた。


・・・・・そこまでも。

 

 

 

 

 

 

 

洋服選びも無事に終了し
女子お気に入りのお蕎麦屋さんでご飯。

ダイエットには最適だと、

やっぱり
合コンへの気合いが違います。


「面白いけど、実際はどうするの?」サクッと海老の天ぷらを頬張りながら、女子。
・・・・・
この時間の天ぷら、ダイエットにはどう?
言えないけど。


「考えて・・・
考えられない」
寧ろ
何をどう答えて良いかも分からない。


う~ん、海老天最高!!日本酒もナイス!!そう呟きながら
「うまくいきそうな恋に見えるけど、当事者の果南の性格がこの場合ネックになってるもんね~」
「そう?そうかなぁ。」

聞き返してみる。
今の私は、どんな風に見えるんだろう。


「『東方神起』でしょ。だからでしょ?」

両肘をテーブルに付いて、身を乗り出す。
面白がってるんじゃない、この眼。


彼女には、私がどう映っているんだろう。


「所謂芸能人です!みたいな人種とはさ、知り合いになる事なんか興味ないでしょ?
ましてやお付き合いなんか言語道断。
それなのに偶然とはいえ、良いかなって思った相手が
良く知らないとはいえ大人気のグループでしょ?」

でしょ?相槌を求められ、勢いで大きく頷いた。


「あり得ないって思っているんじゃない、自分のこの状況。
付き合える訳ない、自分は相手に相応しくないって。
普段の果南なら、そこできっぱり気持ちを切り替える。
自分の常識の枠に収まるのに」


今回は無理なんじゃない?
彼が相手じゃ、果南の常識は通用しないね~。


視線をグラスに移してグイッと飲み干す女子。


しかも
果南も気持ち切り替えられないでしょ?
そんな顔してるもん。

そんな顔・・してるんだ。

しょうがないなって表情で、笑う。もう帰ろうか~、そう言って席を立つ。


じゃねっ
お店の前で別れ際、手を振る寸前に私に言う

「果南はさ、そんな恋の方がいいよ」
良く理解できない私にもう一度

「運命なんだ!!って思える、そんなところから始まる恋が良いよ」


運命。


少し翻弄された方が果南にはちょうどいいね!クスッとそう言った後


私は計算して幸せになるからねって。


付け加えて手を振って背を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

私の元へ届く月明かりは
今日の三日月が照らす光
それは昨日と同じに見えて
でもきっと
確かに違う形。

感情の波に捉われて、自分の気持ちを見失いそうになる

そんな日は
こうやって道場で一人心を落ち着ける。

気持ちを静めなければ
逸る鼓動を、高まる気持ちを
自分自身でも持て余してしまう。


閉じていた瞼をゆっくり開ければ
私の元に降りている月明かり 小窓から覗く三日月
あのね。彼は。
私が手を伸ばして届く距離にその心を置いてくれているようです。

受け止めて
傍にいる事を
私は
選ぶ事を許されるのでしょうか。


静かに其処にある三日月は
ただ、そこにある。
私の心を、その奥深くを月明かりが照らしてゆく。
見えない答え
見付けだすのは自分。

ううん
そうじゃない。
きっと私はもう、
確かな答えをこの心に持っている。


迷っているのは


答えを出している自分を、受け入れられない自分。


彼の笑顔が
心の奥で月明かりに照らし出される。


「そこに居たか」
ゆっくりとその気配を私に届けるのはおじいちゃん。
探してた?

「すみません。ゆっくりしたくて・・・しかもジャージで」しまった
せめて道着を着ろ!と言われた事があった。もう、遅いか。


「ゆっくり、考えられたか?」
私の正面に距離を置いて向かい合って座る。

考える?ぼんやり見返したワタシに
きまり悪そうに問いかける


「・・・・あいつの事じゃないのか」


うわ。
お見通し?


二人に降りる月明かりが

ほんのちょっと


揺れた気がした。