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今度会えたなら話すつもりさ。それからのこと、これからのこと。

年が明けてから一層の冷え込み
何だかそんな気がした

仕事始めから10日は経ったろうか
吐く息が舞う空気に釣られ
見上げた空は薄い空色

「一応、晴れなんだろうけれどね」
苦々しく顎を上げたまま呟いてしまう
次の瞬間慌てて腕時計を確認
と同時に目の前の信号が青に変わるから
今度は自転車のペダルを踏み込んだ

何とも気忙しい瞬間
頬を切ってゆく冷風にふと過る
午後からは雪になるかも
出掛け時計代わりに付けていた朝の情報番組の
不自然ににこやかな気象キャスター女子が
そんな事をお知らせしてくれていた

帰りは早くは出られない
滑り易くなっていたら帰路は難儀だ

研修室へ行くようになってから
ふた月は経つの言うのに
自転車通勤のわりに
一向に運転が儘ならないのだ


「天は二物を与えずとは・・・」

私の通勤風景を見かけた教授は
たったひと駅の距離でありながら
バスを薦める程だった

常識で考えれば
この年ならそこは自転車なのだ

「君の頭脳は、欠かせないのですよ」
何度も説得されたが何としてもお断りだ
だってせめて
若者としては乗りこなしたい

普通の自転車くらい

今日は空き時間には図書館へも行くんだ
ゼミの生徒に話す前に
確認しておきたい言葉もあるし
あの人が居ると良いな
今度いつが休みか聞いておけば良かった

イヤイヤ
それじゃストーカーじゃないか
友達と言うにはまだ日も浅い気がするし
向こうが私を覚えているかどうかだって
私が情熱をもって接しているだけで
彼女にとっては
私は沢山いる利用者の一人だし

「切ないな・・・」
また独りでに呟いて我に返った

違うよ


この焦がれ方はまるで恋の様じゃないかっ

「咲季ちゃーーーん!ストップ!」
「はっ!?」
考え事が過ぎて
大学の駐輪場を素通りだった

まただねって
警備員の田之上さんが笑っている
「お・・・おおおっ」
「はいおはよ~」
私の動揺には触れもせず手を差し出された
IDを確認されて笑われて一日が始まる

余計な事に思い巡らせる事を
取り敢えず止める事を脳に司令

見降ろす腕時計が
指し示す残り時間は3分

気合いの深呼吸

「よしっ」
点呼までの時間と
目の前の建物までの距離

この年の女子の運動能力なら余裕の筈が

やっぱり
余裕で遅刻をしてしまうのは

残念な頭脳女子ならではなのか

羽織る白衣にすら
腕がきちんと通せない

東方神起【等身大のラブソング】*CHANGMIN*season1
written by 奏

・・・・・

本気で人を好きになった時は
頭ひねるより 腹くくるしかない
始まりはいつも 抱きしめたいっていう気持ち
それを行動にうつすこと

百万回の愛してるよりも 
ずっとずっと大切にするものがある

俺は何も言わずに抱きしめるから 
おまえは俺の腕の中で幸せな女になれ

【等身大のラブソング:AquaTimez】
 

 

 

 

「『東方神起』の僕の傍に居るのは、辛い?」
数時間前一緒に過ごしていた時とは
その雰囲気がまるで違って、何が起こったか分からなかった。


今、何て言ったの?
自信無さ気な話し方に心配になる。


「何があったの?」横から覗きこんでゆっくりそう問いかけると
ユノ君は少し、黙りこんで、でも
何かを決心したように


私の肩を掴む。

!?


「よいしょっ」

並んで座っていたソファーに私はユノ君の方を向いて正座させられる。
自分は片足をソファーに乗せ、やっぱり私の方を向く。

正面で、向かい合う。

うん、これがいい。そう言って笑って私の膝の上で

二人の手を重ねる。
・・・・・気に入ったの?これ。


それから
伝えようとする気持ちを表現する言葉を
慎重に選んでいるように見えた。

大丈夫だよ、あなたの気持ちはちゃんと私に届くから。


・・・あのね。
僕は、僕たちは『東方神起』で。
そのことをとても誇りに思っていて、とても幸せであるとも思っているんだ。
家族や、たくさんのファンにも支えられて
今の僕たちは、僕たちだけのものじゃないかもしれない。
僕たちは『東方神起』である事以外は考えられないんだよ。


一つ、深呼吸した。


その事が
傍にいて欲しいと思っている人が望む事じゃないかもしれないって。
・・・・・考えた事がなくて。
でも、
果南ちゃんは僕が『東方神起』だって知った時
驚いてて
少なくとも、嬉しそうでは無かった気がしたから。


ぽつぽつと話すユノ君の声は、とても切なそうで時々消えそうに小さくなる


「僕の傍に・・・・居たら辛い。
そう思う事も、あるんだ
そう気が付いたら」

会いたくなって
聞きたくなって
そう言ってユノ君は私をもう一度しっかり見つめて、その手を私の頬へ運んだ。


・・・・・おじいちゃん。ユノ君、悩んでるよ?


ユノ君のまだ少し冷たい手が、


上がっていた私の体温をちょうど良く下げる。

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん。美味しいっ!」
グレープフルーツフレーバーの入った緑茶。
寝る前に、好きな音楽を聞きながら。好きな本を読みながら。

ささやかなんだけど、意外と至福の感覚が得られる。

道場から廊下で繋がっているカフェ。
お母さんが主婦の暇つぶしにやっているので、こうやって夜は私が占領。
懐かしい石油ストーブの匂いが、鼻先に届く。

キッチンで自由にお茶を入れられるし、
何と言っても
我が家で一番音の良いスピーカーがココにある。音楽を聞くのには最適。


あ。そうだった。ふと浮かぶ笑顔。
反射的に身体の体温が上がる、自覚してる。
探さなくちゃ、聴かなくちゃ。


『東方神起』。


そんな事を想いながらカフェの窓を開けると
三日月と一緒に煌めく星空。
「明日もいい天気だね」今は、そんな事が嬉しい。


見上げていた視線を庭先へ。・・・・すると。


人影?

と認識すると同時に声がした。
「果南ちゃん?」


なんで、今?
「ユノ君?」
ゆっくりと近づく人影はさっき思い出した記憶の中の笑顔より
もっと
もっと
私の体温を上げた。

ストーブ。
消しちゃってもいいかも。


「不思議なお茶」
ゆっくりと飲むその彼の、綺麗な指先に見惚れる。ソファに並んで座ってる。


夜のランニングの途中!!そう言って笑ったけど。
笑顔がぎこちない、そんな気がするのは
私の思い過ごし?


あったかいね。私を見て笑う。
だから私も、あなたを見て笑う。
そんな事が出来るこの瞬間が、とても幸せであると思う自分。

今はもう素直に受け止められる。


だから大丈夫。傍に居たい。


そう自分の気持ちを確認していると、
ユノ君は、私の正面に向き直って「あのね」って切り出した。


逸らす事を許さない、真っ直ぐな眼差し。

私もちゃんと、受け止める。

 

 

 

 

 

 

 

果南ちゃんがどうして、僕の傍に居ると辛いの?
チャンミンはどうして、そう思ったの?

「どうして?」
驚きすぎて聞けない僕の代わりに、ジェジュンが尋ねた。いつもの、穏やかな声で。
こういう時のジェジュンの声は、ホントに相手を安心させる事が出来て・・・

魔法みたい。
またこの声の持ち主と今まで通りに一緒に居られる事は、やっぱり、嬉しい。


かなり驚いた顔をした皆に注目されてちょっと引き気味だったチャンミンが
ジェジュンの声で落ち着いた様子。


ゆっくりと
話を始める。


「だから・・・・」


チャンミンの言葉は、とても丁寧。
誰の事も傷付けないように優しい表現で、でも核心を逃さない。


そんなこと思ってもみなかったから。
でもそうかもしれないんだね。
僕が当たり前に『東方神起』のユノでいる事が
その事を誇りに思っている事が、
傍にいる誰かの負担になってしまう事もあるんだ。


「大丈夫?」ジュンスが覗き込んで頼りなげに僕の様子を窺う
「・・・・すみません」チャンミンは、話を聞きながら次第に俯いてしまった僕を、
もう僕の方を見る事も出来ずに、今にも泣きそうな声で謝る。
「そっか」
「・・・そうだね」
何も、みんな何も言えなくて。


でもだって僕らは『東方神起』である事が全てで


それ以外は考えられないから。


そうやって、暫くの沈黙の中
手のひらを見つめる僕。


数時間前、彼女と重ねた手のひら
「心配しないで」と言ったその表情。少なくとも、あの瞬間はきっと。


そうだ。

「確かめればいいんだ」声に出た。


えっ??
俯きがちになってたみんなの視線が僕へ


「果南ちゃんに、確かめるんだよ!」

そうだよ。彼女の気持ちは、彼女にしか分からない!


「ちょっ!ユノっ明日からロケで出発も早いよ!?」みんな慌てて一斉にご意見、

ん?諫めてる??


「大丈夫!!帰ってから走って行ってくるよ!!」まだ日付は変わってない!


あの信号曲がったらもう宿舎だ!!盛り上がる僕を僕以外の皆は泣きそうな顔で見てた


・・・・・どうして?