子どもの日に思うこと | 自死遺族の私が感じたこと日々あれこれ~誰ひとり取り残さない社会へ~

子どもの日に思うこと

今日は子どもの日。


私は子どもがいないので、自分の子どもの頃の事を思う。


子どもの頃はまさかこんな人生になるなんて思っていなかった。


父が自死して家族が崩壊してしまうなんて。


ごくごく普通の人生だと思っていた。

よくある田舎の大家族。


でも、私は子どもながらにテレビで見る世界に憧れていて、こんな田舎はいやだなあ、親戚のお姉ちゃん一家みたいに東京に住んでみたい。お姉ちゃんは、デザイナーの勉強するために海外に行くって言ってた。なんかカッコいいな。


うちみたいに、朝早くから、田んぼの水の心配や、台風の心配なんてしなくていいんだ。春は田植えしたりして、ヒルに血を吸われなくいいんだ。稲の消毒液撒いたり、稲刈りも手伝わなくていい。天気なんて関係ない。泥にまみれなくて、いいなあ。羨ましいなあ。


都会でおしゃれでかっこいい生活がしたいなあ。

でも、どうやったら都会にいけるんだろう。お姉ちゃん達はおじちゃんが、東京で働いているから住めるんだ。私はどうやったら、都会に出られるんだろう。お父さんもお母さんも、おじちゃんも、おばちゃんも、おじいちゃんもおばあちゃんもずっーと、この町で生きているし、これからもそうだ。


私は将来何になりたいんだろう?漫画や絵を書くのが好きだ。そうだ、漫画家になろう。毎日必死で漫画を書いた。自分の部屋には自分で書いた絵を沢山飾っていた。でも、家族は誰も褒めてくれないし、絵の事には触れても来ない。なんだか、寂しいなあ。


最近、お父さんがなんかベタベタしてくるのが気持ち悪い。嫌だなあ。前まではそんな事思ったことなかったのに。お父さん、大好きだったんだけどな。


え?お父さんがいなくなったの。何で?でも、普通に帰ってくるでしょ。元気だし。大人だし。


あれ、なんかみんなの雰囲気がおかしい。近所のおじちゃん、おばちゃんも、みんなお父さんの事探してくれてるみたい。大騒ぎになってる。家に親戚も来て、沢山の人がきた。なんか普段とは違ってわくわくする。


え。お父さん死んじゃったの。自殺だって。うそ。信じられない。私があんな事思ったから?楽しいなんて思ったから?お父さんの事、嫌だって思ったから?冷たくしたから?だって、お父さん普通に元気だったじゃん。


なんか、家族の雰囲気が変わった。お父さんって言っちゃいけないみたい。おじちゃんに怒られた。何で?私のお父さんなのに。お父さんの事、話しちゃいけないの?何で?


学校に行ったら、みんなの前で頭下げろって言われた。三者面談では、先生に「あんな高校行くなんて人生終わりですね」って言われた。お母さん悔しそうだった。あれって、お父さんの事と関係してるのかな?あんな酷い事、他の子にも言うのか?それとも、私がダメな子だから?成績がよくないから?何で?何で?こんな事誰にも話せない。


お母さんにも相談出来ない。だってお母さんが一番大変そう。ずっと塞ぎ込んでる。あんなに泣いてるお母さん初めて見た。お母さんまで死んじゃったら私ってどうなるの?おじちゃん、おばちゃんの子どもになるの?どうしたらいい?私、ひとりぼっちになっちゃうよ。


お母さんは死なせられない。絶対に。守らなきゃ。周りも私がお父さんの代わりに守らないとっていうし。でも、私も辛いし、私だって、将来の事考えなきゃだし。でもこの前、辛いって言ったら怒られた。あんただけが大変なんじゃない。もっと大変な人はいっぱいいるんだって。そうだよね。世界にはもっと大変な人いるもんね。私だけじゃない。こんなこと大したことない。お父さんが自殺するなんて、きっと、大したことない。大したことないんだ。


そうやって、誤魔化したり、みないようにしてなら、どんどん自分の感覚が分からなくなってきた。この前、新しい友達に笑いながら「うちのお父さん自殺しちゃってさー」って言ったらびっくりしてた。「そんな大変なことを笑いながら言うあなたにびっくりした」って。え?そうなの?これって大変な事なの?分からないよ、もう。自分の気持ちが感覚が。大変なのか、そうじゃないのか。分からないよ。私がおかしいの?誰か教えてよ。


ごくごく普通だと思っていた人生がある日全て変わる事がある。そうじゃなくても最初から大変な事もある。でも、大変な事を大変だって思うともっともっと辛くなる。


でも、もしね、どんなに辛くとも、そうなっても、どんなに大変でもね、関係なく自分の人生を選択できるようになりたいし、なるんだよ。


あんたは、おかしくない。よくやってる。よく生きのびている。私はあんたの側であんたをずっと見てきた。おかしいのは理不尽だらけの社会なんだ。


そして、全ての子どもがそうなりますように。生まれた環境や親、社会に関係なく、どれだけ、振り回されても、それでも最後には必ず、自分の望む人生を選択できる社会になりますように。


そして、親だって、昔はあなたと同じような子どもだったんだ。






 


      子どもの頃の私と両親