Claude Maulerのオムニトニック・ホルンに関する記事に関する考察 連載12です。

 

今回は、Henri Charussierのオムニトニック・ホルンにいついて考察してみたいと思います。

 

 

まずは、Mauryからの引用です。

 

Henri Chaussier (vers 1887)   
 Henri Chaussier(アンリ・ショシエ:1854–1914)のオムニトニック・ホルンは、そのように説明できる最後の実用的楽器であり、クロマティックであることもありますが、間違いなく最も興味深いものの1つです。 

 装置のデザイン自体は以前のものとはまったく異なり、視覚的には同じ時代のピストンホルンと区別されません 

 1854年、ディジョン(Dijon)の近くのヴィヴィエ(Viviers)で生まれたHenri Chaussierは、パリ音楽院(コンセルヴァトワール:Conservatoire)でジャンモール(Jean Mohr )のクラスで学び、1880年に主席となりました。(パリ音楽院には1864年以降、ピストンホルンのクラスはもうないことに注意してください。)1882年、Chaussierはドイツのベンジャミンビルゼオーケストラ(orchestre de Benjamin Bilse)のホルン奏者でしたが、当時ライン川全域で一般的に使用されているピストンホルンに適応するのに困難を感じました。 

 

 ビルゼ氏のオーケストラに従事していたドイツでの滞在中、ピストンホルンを使用するよう要請されました。 そのため私は苦痛な練習をしなければなりませんでした。そして、F管の楽器ですべての音楽を演奏することからなるドイツの慣習に従わなければならなかったので、私は不合理であると思われる転調に何度も妨げられました 古典音楽でさえベルを手で操作する手法はこの国では完全に放棄されています。 ホルンが本物の音を奏でるというアイデアは私のの頭を何度もよぎりました。(以降省略)                   Chaussier p.14より

 

 Chaussierのオムニトニックホルンのアイデアは、ホルンを作り、それらの楽器を並べ、卓越した非移調楽器にするというアイデアにその源を見出しています。 Chaussierは、C管の楽器に関する説明ノートと題する小冊子で説明しているように、そこから始めて、ブラスファミリーの他の楽器にすぐに適応することを考えている彼のオムニトニック・ホーン・システムを設計します。 

 

 C管として製作された楽器でF管やE管の楽器の為に書かれた曲を演奏しなけならない場合など

略 

 移調の必要性はまだあります。 しかし、これは少なくとも論理的です。なぜなら、演奏者は実際にどの音出すべきかを知っており、F管でその音を奏せねばなりません。 改革が必要であるという気持ちに満ちた私は、この要求に応えることで思いを達成しようと試みました。 

 

 この楽器は1885年にフランソワ・ミレロー(François Millereau)によって生産され、1889年にパリの万国博覧会で発表されました。そこでは、Chaussierは楽器メーカーではないという理由で価格はつけられませんでした。 楽器は、F管です(つまり、ピストンを使用しない場合、楽器はFで鳴ります)。3つのペリネットピストンは、従来のように左手で作動し、回転シリンダーは 同じ手の親指で操作します(Chaussierは4番目のピストンと呼びます)。 これらのピストンのうち2つは下降ピストン(1番目と4番目)で、他の2つは上昇ピストン(2番目と3番目)です。 ピストンの分布は次のとおりです。 

 

  • 1番目のピストン:一音下がります(通常の現代のホルンのように) 

  • 2番目のピストン:半音上昇 

  • 3番目のピストン: tierce majeure (2音)上昇 

  • 4番目のピストン: quarte juste (2半音下降) 

 

 このように構成されたこの楽器は、変化が瞬時に変わるすべての調を一つの楽器で実現しているため、単純なホルンに取って代わります。 

 そして、古いシステムのピストンホルンは、他のすべての楽器と同様にすべての色音を均一に与えるためためのものです。 

 

この楽器をオムニトニック・ホルンと考えるとき

 

  • 開放 F管
  • 1番ピストンを押すとE♭管
  • 2番ピストンを押すとG♭管
  • 3番ピストンを押すとA管
  • 4番ピストンを押すとC管

 以上、4つの音は正確な音程が出ますがこれだけでは、とてもオムニトニックとは言い難いので、ピストンの組み合わせが必要です。しかし、組み合わせには、補正が必要です。しかも、管が長くなればなるほど補正が大きくなります。

 そこで、管が短くなる方の組み合わせは、許容範囲と考えると。(半音下がるのも許容できるとする)

  • 2番と3番を押すと2音半分短くなり(上の)B♭管
  • 1番と3番を押すと1音短くなりG管
  • 1番と2番を押すと半音長くなりE管

オムニトニック・ホルンとして、これで十分かどうかは、何を演奏するかによるでしょうが、Mauryの記事を読み進めると、別のことが判ります。

 このシステムは、オムニトニック・ホルンであると同時に、半音階で演奏することもできます。 

  Chaussierは、1889年版のC管の新しい楽器に関する説明ノートで、楽器の概要図をいくつか示しています。 

  高いBから低いBまでのすべてのトーンがあり、同じ時代の伝統的な天然のホーンとほぼ同じであることがわかります。 Chaussierが提供する運指は次のとおりです。 (運指についてはフランス語の原文です)

  1.  Sib aigu: 2e (ascendant d’½ ton) + 3e piston (ascendant de 2 tons) 

  2.  La: 3e piston (ascendant de 2 tons) 

  3.  Lab: 1er (descendant d’1 ton) + 2e (ascendant d’½ ton) + 3e piston (ascendant de 2 tons) 

  4.  Sol: 1er (descendant d’1 ton) + 3e piston (ascendant de 2 tons) 

  5.  Fa#: 2e piston (ascendant d’½ ton) 

  6.  Fa: à vide 

  7.  Mi: 1er (descendant d’1 ton) + 2e piston (ascendant d’½ ton) 

  8.  Mib: 1er (descendant d’1 ton) 

  9.  Ré: 1er (descendant d’1 ton) + 2e piston (ascendant d’½ ton) + 3e piston(ascendant de 2 tons) + 4e piston (descendant de 2½ tons) 

  10.  Réb: 1er (descendant d’1 ton) + 3e (ascendant de 2 tons) + 4e piston (descendant de 2½ tons) 

  11.  Ut grave: 4e piston (descendant de 2½ tons) 

  12.  Si grave: 1er (descendant d'1 ton) + 2e (ascendant d’½ ton) + 4e piston (descendant de 2½ tons) 

  13.  Sib grave: 1er (descendant d’1 ton) + 4e piston (descendant de 2½ tons) 

半音階を実現するためにD (Ré)とD♭(Réb)が必要でした。ここでは、管を長くするため4番のバルブを使用せざるをえなくなり、補正のため、論理的な管の長さより半音分長く調整しています。

 この調整について、この後Mahillonが、説明しているので、それにまかせるとして今日は、ここまでとしましょう。

つづく