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ツタンカーメンのトランペット

 ツタンカーメン王の墓から発見された2本のトランペットは、銀製と青銅または銅製の楽器で、現存する世界最古級の演奏可能なトランペットとされている。古代エジプトのトランペットとして、現在知られている唯一の現存例でもある。

発見と構造

 1922年、考古学者ハワード・カーターによるツタンカーメン王墓の発掘で発見された。青銅製のものは軍事用品などを収めた箱から、銀製のものは埋葬室から見つかった。いずれも精巧な装飾が施され、ラー・ホルアクティ、プタハ、アメンの神々の図像などが刻まれている。

 銀製のトランペットは長さ約57.2cm、青銅・銅製のものは約7.6cm短い。青銅製のトランペットは薄い金属板を巻いて接合するなど、高度な加工技術で製作されている。一方、内部の仕上げなどから、音響性能よりも外観や儀式的な用途が重視された可能性が指摘されている。

約3000年ぶりの演奏

 1939年4月16日、BBCの国際放送を通じて、騎兵連隊の軍楽隊員ジェームズ・タッパーンがトランペットを演奏した。推定1億5000万人が聴いたとされる。

 演奏では現代のマウスピースを取り付ける必要があった。楽器からは3種類の音を出せたものの、低音は遠くまで届かず、高音は楽器に過大な負担をかけた。そのため、軍事的な合図として通常使用されたのは中間の音1つだった可能性がある。

 また、1939年の演奏リハーサル中に銀製のトランペットが破損したという証言も残されている。楽器が非常に壊れやすいため、今後、公式な演奏で再び使用される可能性は低いと考えられている。

戦争を招くという伝説

 2011年、カイロのエジプト博物館で青銅製のトランペットが盗まれたが、数週間後に返還された。

 返還後、博物館の学芸員が、このトランペットには「魔力」があり、吹くと戦争が起こると主張したと報じられた。実際に、博物館職員が記録・撮影作業中に吹いた約1週間後に革命が発生したという。また、1967年の戦争や1991年の湾岸戦争の前にも、トランペットが吹かれたという逸話が紹介されている。

 ただし、これらは伝聞に基づく超常現象の主張であり、トランペットの演奏と戦争の発生に因果関係があることを示す科学的根拠はない。