放射能汚染の基準値を下回り農作物は少しずつ出荷解除されてきた。内部被曝してしまう放射能基準値を上回る農産物を食べたくないと思うのは皆同じ。
だが、原発事故が起こる以前から放射線を照射した食物を私達が食べていたという事実は知らない人が多いと思う。
放射線の生物学的作用を利用して、農作物の発芽防止、農・畜作物の殺虫、加工食品を含む農・畜・水産物の殺菌などを目的とする処理技術を食品照射という。
日本国内では食品照射の規制は厳しく、1972年に許可された馬鈴薯の照射だけである。発芽防止のために、コバルト60をガンマ線源として馬鈴薯に照射するのだ。
ここで忘れてはいけないのが日本が食糧輸入大国だということ。食品の多岐にわたって照射を許可をしている国は多い。
日本人が経営する中国の骨なし魚生産工場のドキュメンタリー番組をついこの間見た。出稼ぎ労働の若い女性達が流れ作業で魚の骨を一本一本次々とピンセットで抜いていく。
切り身になる魚は骨を抜くだけだが、一匹丸ごとのアジなどの魚は開いて骨を抜いてから安全性が不明のトランスグルタミナーゼという接着剤になる粉末で元の魚の形に戻す。
その後、殺菌のためにX線を照射する。経営者はしきりにこの粉末は「安全だ」と言っていた。この骨なし魚は日本の学校給食や病院食に出されている。
また、意外に知られていないのが香辛料の照射だ。EUでは1999年に害虫駆除や殺菌の目的でスパイス、ハーブ、野菜調味料を含む香辛料の照射実施が合意された。
実は香辛料の照射処理を許可していないのは日本とウルグアイだけ。ということは香辛料は照射食品そのもの。日本では香辛料のほとんどが100%近く輸入され店で普通に売っている。
私はスパイスやハーブを頻繁に料理に使うが、すべて写真のような有機のものを購入している。有機香辛料は食品照射処理をしていない。
ここで既にお気づきだと思うが、日本国内では食品照射はジャガイモだけ許可されているが海外で照射した食品の輸入規制は事実上無いということだ。
もし禁止したら、日本に輸入できる食品はかなり減ってしまうことになる。世界の照射食品はというと。(FAO国連食糧農業機関/IAEA国際原子力機関のデータベースより)
1) 球根及び地下根茎類(発芽防止)
2) 新鮮果物及び野菜(熟度調整、殺虫)
3) 穀類及びその製粉品、ナッツ、油糧種子、豆類、乾燥果物(殺虫)
4) 魚介類及びその製品(殺虫・殺菌、生鮮又は冷凍)
5) 生の家禽肉、畜肉及びその製品(殺虫・殺菌、生鮮及び冷凍)
6) 乾燥野菜、スパイス、調味料、動物飼料、乾燥ハーブ及びハーブ茶(殺虫・殺菌)
7) 動物性乾燥食品(殺虫・殺菌)
8) その他、蜂蜜、宇宙食、病院食、軍用食、卵からの液体増粘剤など様々な食品(殺菌)
また、照射食品を一番多く生産しているのは中国で表にしてみると。
地域 照射処理食品年間量 処理品目
中国 140,000トン 香辛料、ニンニク、穀類など
アメリカ 89,000トン 香辛料、食鳥肉、果実、穀物、ナッツ類など
東南アジア 26,000トン 香辛料、冷凍魚介類、発酵ソーセージなど
欧州 20,000トン 香辛料、食鳥肉など
日本 8,000トン 馬鈴薯
こうしてみると、私達が口にしているほとんどの輸入食品は照射されていると思った方がいいかもしれない。輸入されたタマネギ、冷凍エビ、ニンニク、トロピカルフルーツ、米、小麦などは照射食品の主な例だ。
輸入原材料で加工した食品も照射食品を原材料にしているケースが多いと思った方がいいと思う。国産食品が安全だと言われていたのは、このようなことも理由の一つだったことが分かる。
原発事故の影響で、海外では日本の食品の輸入規制が厳しくなった。でも、海外の食品にも低射量とはいえ放射線を照射している事実をいま日本食品を毛嫌いしている海外の人々は知っているのだろうか。
放射線処理による効果は加熱処理等と同じ化学変化によるものであり、総平均射量10kGy(グレイ・放射線単位)以下の照射食品には毒性や危険性は全く認められないとFAO/IAEA/WHOの合同専門委員会では結論づけている。
でも、いくら低射量とはいえ、いくら国際専門機関が安全だと言っているとはいえ、やはり私は自然なままの農産物が一番だという考えは変わらない。
*照射食品研究成果の報告書によると、照射食品は奇形以外にも体重の減少、卵巣重量の減少、死亡率の増加、などを引き起こす可能性があることが分かっている。
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