配信当日の金曜夜に観たのですが、休日である今日、水曜日もまた観ました。
どちらの日もあたしゃ泣きっぱなしです・・・。
「深い悲しみの表現」
それは様々なドラマの中に出てきます。
この『My Stand-in』EP9で描かれたMingの悲しみについて。演出面でも演じたUpくんの表現も、これは歴史に残る一幕だったのでは、と思っています。
約60分間あるEP9の中で、Mingは最初の30分間、全く言葉を発していません。
例えばMingはなんのアクションも起こさないことで秘書のJimに希望を察してもらってます。
状況は刻々と変わっていきます。
Joeのものと思われる遺体があった。
それを確認する。
DNA判定をしてもらう。
結果を聞く。
New Joeが現れる。
葬式を執り行う。
火葬されるのを見送る。
そして煙が空に立ち上っていくのを見上げている・・・。
それを描く30分の間、言葉を一言も発せず、しかしその中で少しずつ変わっていく心情を、心に思い起こす記憶を、すごく静かな演技で伝えています。
Joeを演じているPoomのさらに複雑な心境、この表現も見事です。
もう決して元の体に戻ることのない絶望感と同時に、「なんてことない」という顔でWutやSolに伝えてみたけれど、いきなり涙が溢れ出してしまったり、Mingに対して感情を爆発させたりと、揺れ動く感情の表現が最高です。
さらにはWutさんの演技ですね。
特にこのEP9でのWutさんは、JoeとSol、そしてMingの3人の間を個人的な愛情と社会的視点で調整する役割を持っていましたが、その端々に見える細かい演技に「よッ!ベスト・バイプレイヤー!!」「芝居上手だねッ!」と心の中で声を上げていたのですが・・・。
Wutさん演じるParadon Vasuraiさんは、俳優として2018年から脇役として出演しているようですが、驚いたことに本業は「Foolhouse Production」という会社で編集の仕事をしているそうなのです。もうびっくりですよ!
その会社が関わった作品は『I Told Sunset About You』や『Manner of Death』などお馴染みの作品も。
これはその会社のFacebookに2021年に投稿した、10年間のその会社が関わった作品の映像です。興味ある方は是非みてください。
・・・話が逸れました。
とにかく前半は圧巻の30分。最初に書いたように泣きっぱなしです。
挿入されるYEWの「Flaw」はここではアコースティックバージョンで。「Just」も使われています。こういう楽曲の使い方の巧さは『KinnPorsche』を思い出させます。『KinnPorsche』でもJeff Saturの「Why Don't You Stay」と Seasin Five 「ย้อนแย้ง」が最高のシーンで使われましたね。
そして後半30分の急展開がこれまた!
Mingは8話でOld JoeとNew Joeの関係性に確信を持ったんではなかったの?それともあの火葬場で確信にとどめを刺したのか。ちょっとここはもう一度8話と9話を繋げて観たいですね。
そしてここでMingはやっと最後に、自分の恋が始まった場所は映画の中のTongの背中ではなく、Joeが演じたその背中だったことを告げ、この3年間、ずっとJoeを愛していたというのですが、Joeの返事は、
「Ming、もう遅いよ」
・・・・・・・・!
ギャーーーーーーッ!!
私が最も泣く台詞、それは「もう遅いよ」なんですーーーーー!!
時計の針は進むばかりで、私たちは何があっても戻ることは出来なくて、そして失われてしまったものは取り返しはつかず、覆水は盆に返らずこぼれたミルクは嘆いても仕方がなく、すべてがIt's too Lateなのです。
私はこの言葉の悲しさを小学校6年の時にテレビで観た『風と共に去りぬ』で刻印されましたよ・・・。
でも大人になるとですね、こぼれた水はまた何度でも注いでみればいいし、ミルクはこぼしたけど今度はコーヒーいれたらいっか、みたいな、どこか「なんとかなる」的思考のほうが勝ってきています。だいたいタイには「マイペンライ」という魔法の言葉がありますしね。
孤独に育ったOld Joeのかつての夢は「家に帰ったら明かりが灯っていて、料理のいい匂いがしていて、誰かがおかえりと言ってくれる」ことでした。その夢を叶えてくれたのはMingでした。
でも、New Joeには今、彼を無条件に受け入れてくれる暖かい「ママ」がいて、彼の夢を実現してくれています。
だからこそ、私はまたJoeに新たな夢が生まれてほしい。そしてそれが叶いますようにと10話を待ちます。